第9話 東三条(ひがしさんじょう) ~道隆の機転~
そのような道隆様のお心の広さは、私が知るところだけではなく周知のことなのでした。
私の宮仕え前のことですが、
道隆様の父君、
ご兄弟といえども道隆様の弟君道兼様は、兼家様と結託して花山天皇を強引に出家させておしまいになったお方、当然ながら昇任を狙っておいでのはず。道長様は、私の勘とでも申しましょうか、不思議な存在感を漂わすお方で、道隆様が太刀だとすると、道長様は槍のようなお方。多方にすばやく切れるのが太刀だとすると、狙いを定めて深く刺せるのが槍でございます。私の道長様への印象は、後々のご出世に関してみれば的を得ていたといえるかも知れません。それぞれの思惑を内に秘めてのご同席なのです。
やがて笛の演奏が始まり、
夫則光は花山院に仕えておりましたので、道兼様にとっては体裁の悪いこの出来事を、何やら嬉々として語っておりました。
道隆様は当時三十代半ば。男盛りの美しい叔父君のおどけた仕草と、なされるがままのやんちゃ
道隆様のこのようなお心のやさしさや洒脱さは、そのまま御家風でもあったのです。
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