第27話正体

爆発が収まってきたので、クアの様子を確認しに行く。

フェンスは跡形もなくふきとんでいる。土は大きくえぐれており、爆発の威力を物語っていた。

「これほどの爆発だ。警察が来てもおかしくないと思うのだが。」

先輩の言うとおり、警察の1人や2人すぐに駆けつけてきそうな爆発ではあった。


「それはねぇ。記憶の変化によって、常識という一般論すらも変わってしまっているからなんだよぉ。つまり非常識が常識になっちゃってるんだぁ。面白いよねぇ。」

この声は!

声のする方に目を向けると、倒れたクアの姿がそこにはあった。

右腕と左足がもげている。

もうさすがに動けなさそうだ。

「レーザーボムをまともに食らっておいて、まだ生きているとはな。おどろいたぞ。—だがここで終わりだ。今度こそくたばっとけ。」

先輩が最強レーザー砲の引き金を引こうとする。

「待ってください!コイツにいくつか聞かないといけないことが!」

「聞かないといけない事だと?.....いいだろう。早く済ませろ。」

一瞬思案した後に、かまえていた銃を下ろす。

「ボクに聞きたい事ってなにかなぁ?今ならなんでも教えてあげるよぉ。」

ニタニタしながら俺を見てきた。

今すぐにでも、消し飛ばしてやりたいという衝動をぐっとこらえる。

「まず一つ目の質問をする。なぜお前は先輩を殺そうとしたんだ?」

「単なる気まぐれかなぁ。」

「冗談言うな。......もう一度嘘をついたら殺すぞ。」

気まぐれであんなことをやる奴なんていない。それにコイツが本当に気まぐれで人を殺す奴なら、今頃街は死人で溢れかえっているはずだ。

「怖いこと言うねぇ。まぁもうちょっと生きときたいし、応えてあげるよぉ。――”憎しみ、復讐、怨念、殺意その他諸々”それがボクの生きる糧でもあり、レンちゃんを狙う理由でもあるんだぁ。」

「私は、お前に恨まれるようなことをした覚えはないのだが。」

そう言う先輩の声は震えていた。

「フフフッ。そりゃそうさぁ。レンちゃんは実際なあんにもしてないからねぇ。でもねぇ。君のお父さんからはいろいろなことをされたんだよぉ?あの殺人鬼がねぇ!」

さっきまで穏やかだったクアの口調が、一気に強まる。

「ねぇ!レンちゃん!君のお父さんからどういう風にして、殺されたと思う!?家族を殺され、擬似的な記憶を植え付けられて、何度も何度も痛めつけられて、挙げ句の果てには捨てられた。アアアアアアッ。思い出すだけで、狂いそうになる。人格を保てなくなる。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いニクイィィィィ!........というわけだよぉ。」

「..........。」


あんな風に先輩を弄んだ奴を許せるわけがない。

死んでも償えるわけがない。

でも。

可哀想だと思ってしまった。

同情をしてしまった。

湧き上がる感情を抑えながら、話しをすすめる。

「もう一つ質問する。――お前を殺しただけで本当に、全ての問題は解決されるのか?」

「どういう意味かなぁ?」

「原因となる霊体は2体いると言っていただろ?....それが本当のことなら、お前を殺しただけでは不十分だ。」

別の1体。名前は確か....。

「トリカブトのことだねぇ。彼はボクと同じように教授の手で、直接生み出されたんだぁ。いわば兄弟って感じだねぇ。」

「そいつはどこにいる?」

「さすがに薄々気づいているんでしょお?」

全く心あたりがない

という言葉ではもうごまかしきれない。

明らかに異常なモノ。

だが、受け入れられない。

「まさか、俺が霊体だとかでも言うのか?」

「自覚症状ないみたいだねぇ。アハハハハッ。滑稽だぁ~。君の正体は――」

その瞬間クアの体が光で包まれる。

先輩が引き金をひいたのか.....。

そして破裂するように、消えてなくなった。









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