11話 続・ヒキニートでも年末年始は大忙し!?

「歩くん、歩くん!新年明けましておめでとうございます」

 いつの間にか起きていた綾香は、景気良く元気に挨拶をする。

「お雑煮食べたら、初詣行こっか」

「おっ、綾香が作ってくれたの?」

「うん、ど、どうかな?」

 どこか実家の味を彷彿とさせる、安心感のあるお雑煮だった。

「おいしいよ!何だか懐かしの味で大好きだわ」

「ホント!実はね、レシピ、楓ちゃんに教えてもらったんだ」

「へぇ~そうだったんだ、いつの間に」

「裏では歩くん談義で盛り上がってるんだよ」

「何その女子会!?」

 女子にはこういうところがあるからマジで驚かされる……


「それじゃあ、そろそろ行くか」

「行きましょう」

 分厚いコートにニット帽、手袋というもふもふ具合、新年早々かわいいな。不思議そうに上目遣いしてる。


 新年の電車は窮屈を極めるが、幸いにして俺たちは歩いて行ける距離に神社がある。「初もうデート」を堪能するべく、信者の如く、神の鎮座する社へと向かう。「てくてく」と効果音が聞こえそうな引きこもりちゃんは、久々に歩いて遠出?するので、少しばかりバテ始めている。


「やっとついた~人多い~」

 鳴き声を度々漏らしながらも、到着した時にみせた綾香の微笑みで、俺の疲れはどこへやら。我ながら至極単純な男だ。

「私ね、初詣とかで『これからも〇〇君と一緒にいられますように』ってお願いするのが夢だったんだ」

「俺もだわ」

「じゃあ叶った訳だし、今からは別の事をお願いしよっか」

 別の事か……ホワイト企業に勤め、彼女と幸せに暮らせている俺が他に祈る事なんてあるのだろうか。適当な事を願っては、この幸運を没収されかねない。いや、彼氏としても、今の俺としてもこれ以外に最適解はないはず。

(綾香の願いが叶いますように)

「歩くん、何お願いしたの?」

「それって言って良かったっけ?」

「えへへ、ダメかも」

「じゃあ秘密だろ」

 普段から、かわいいばっかり言ってる俺も、流石に恥ずかしいから、はぐらかした。

「な、なに」

「えへへ、別に」

 そう言って笑った綾香は今年一、かわいかった。気が早すぎるが……

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