9話 恋人がヒキニート

「ねぇ、歩くん?」

 心なしか不安げに綾香は俺に問いかける。そして俺はこの質問が何なのかを知っている。

「今日帰り、遅い……?」

「出来るだけ早く帰ってくるから!」

「うん!!」

 如何なる人物であろうと、少なからず心動かされる日が、もうすぐそこへと迫っている。初めての二人だけのクリスマス。これを喜ばない恋人は、既に恋人として破綻している!


 いつも以上に効率とスピードを求める俺、そして相変わらず、綾香といい勝負の真っ白なわが社の営業スタイル。いつもより2本早い電車で帰れた。雪も降りはじめ、ホワイト企業からホワイトクリスマス、そしてそれらにも勝るとも劣らない色白彼女という、純白の3連発。残るはウェディングドレス……


「ただいm」

「おかえり!」

「うわっ、玄関で待ってたの!?」

「さすがにずっと居た訳じゃないけど、もうすぐかなと思ったらつい♪」

 正直、兄妹ではないけれど、あやうくヨスガるところ、玄姦となりかねないところだった。これがクリスマスの魔力。非モテからの爆破予告が絶えない訳だ。


「綾香、これ、クリスマスプレゼント」

「なになに♪」

 プレゼントセンスへの評価は、人によって違う。ただ俺は、もこもこのニーソを綾香に履かせたかった!

「どうかな?」

「最高……!」

「ありがと♪私からは、手作りクリスマスケーキを進呈します!」

「おお!美味しそうだなぁ」

 お店で出せそう云々よりも、数ヶ月前まではまともに料理出来なかったあの綾香が……といった感動が、よりプレゼントのありがたみと生クリームの甘さを引き立てた。

「メリークリスマス♪」

 綾香はもこもこニーソを着用し、美味しそうにケーキを頬張った。

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