第6話 絆

 バスに揺られながら二人は友情を再確認した。そして、瑠衣るいはその日からラリーについて勉強を始めた。


 次の日学校では瑠衣るい英玲奈えれなは疲れた果てていた。真希音まきねは昼休みに尋ねた。


「朝から2人とも元気ないけど、どうしたの?」


 瑠衣るいが先に反応した。


「昨日ラリーについて勉強してたから、寝るのが遅くなっちゃって・・・」


 英玲奈えれなも続けて言った。


「私も車を整備してたから寝るのが遅くなっちゃった~」


 二人の本気に圧倒されたが真希音まきねは笑いながら言った。


「練習走行会なんだから、気楽に行こうよ」


 放課後になると、英玲奈えれなは急いで帰る準備をしていた。その姿を見た真希音まきね英玲奈えれなに尋ねた。


英玲奈えれなどうした?そんなに急いで?」

「車のパーツが手に入ったみたいだから失礼します~」


 いつもゆっくりな英玲奈えれなが急いでいる姿は少し新鮮であった。あっという間にクラスからいなくなり、真希音まきねも帰ろうとするときに瑠衣るいが話かけてきた。


「あのさ!今から駅前のカフェに行かない?」


 真希音まきね瑠衣るいは駅前のカフェでお茶をすることになった。瑠衣るいはカバンから手作りのノートを真希音まきねに見せた。そこにはたくさんの文字が書いてあり、勉強をしたのが伺えた。瑠衣るいはドヤ顔で勉強したことを真希音まきねに見せつけた。真希音まきね瑠衣るいに尋ねた。


?」


 その質問に瑠衣るいは自身満々で答えた。


「ナビゲーターだね!簡単に言うとカーナビ見たい役割だね!」


 真希音まきねはその答えを聞いて瑠衣るいに尋ねた。


「じゃあ、カーナビじゃダメなの?人間よりも軽いし、音声で喋ってくれるし」


予想外の返しに瑠衣るいは戸惑いながら言った。


「えっ!?そっ、それは、その~・・・」


 しかし、瑠衣るいは説明することが出来なかった。その姿を見た真希音まきねは笑顔で言った。


「コドラはする人でドライバーはする人」


 瑠衣るいは意味が理解出来なかった。真希音まきねは冷静に説明してくれた。


「コドラの指示でドライバーが車を動かすんだ。悪く言えば操り人形、良く言えば絆がそれだけあるって事。だから、コ・ドライバーは車を操作する人でドライバーは運転する人」


 真希音まきねは話を続けた。


「プロのコドラは自分が運転している感じになる。ラリーはコドラとドライバーの絆がどれだけ強いかの勝負。機械じゃ絶対に真似が出来ない」


 真希音まきねの言葉に瑠衣るいは興奮しながら言った。


「うわぁ~かっこいい!さすが優勝しただけあって言う事が違うよ~!」

「全部、オヤジの言葉だけどね・・・」

「私も真希音まきねを操れるように頑張るね!」

「じゃ!今日は瑠衣るいのおごりな!」

「うっ、今月お金が・・・」

「冗談だよ」


 真希音まきね瑠衣るいも大笑いした。そして、二人はさらに絆を深めたのであった。

 

練習走行会当日

 早朝に英玲奈えれなの工場の前に集合だった。一番最初に来たのは瑠衣るいで集合時間ちょうどに真希音まきねが来た。真希音まきね瑠衣るいを見かけて早々に言った。


「あれ?英玲奈えれなは?」

「まだ来てないみたいだね・・・」


 シャッターが動き出した。シャッターの中には積載車に乗る英玲奈えれなの姿があった。


「いや~時間通りだね~!さてさて~乗りたまえ~」


 初めてトラックに乗る瑠衣るいはとても新鮮な気持ちだった。そして、運転する英玲奈えれなはとてもカッコよく見えた。真希音まきね英玲奈えれなに尋ねた。


「てか、トラックの運転大丈夫なのかよ?」

「そうだね~、教習所から乗ってないから不安だね~」

「おい!大丈夫か?」

「う~ん、狭い道とバックする時はマッキーお願い~」


 幸先が不安な出発になった。

 しばらくして、真希音まきねは思い出したようでカバンの中の物を瑠衣るいに渡した。


「そういや、オヤジが使ってたペースノートあげる!」

「うわぁ~良いの!?ありがとう!凄く助かるよ」


 瑠衣るいはペースノートをめくりながら過去のレースを見たり、書き方を参考にするためしばらくノートを見ていた。真希音まきね瑠衣るいの真剣な表情を横で見ながら、邪魔しないように小声で英玲奈えれなに質問した。


英玲奈えれな!ヤリスはどこを整備したんだ?」

「秘密だよ~」

「なんでだよ」

「乗ってみてどこを整備しているか当てて~」


 英玲奈えれなに試されていることに少し腹が立つが、絶対に当ててやる気持ちが強くなった真希音まきねであった。


「ふ~ん!良いだろう!プロのドライバーの実力を見せるよ」


 トラックが練習会場に入ると多くのラリーカーが並んでいた。瑠衣るいは一人でトラックの中から何枚もスマホで写真を撮っていた。瑠衣るいの姿に少し呆れながら真希音まきねは言った。


「車から降りたら好きなだけ写真撮れるから、落ち着けって狭いんだから」

「ごめん・・・」


 車から降りて真希音まきね瑠衣るいは受付で手続きをしに行き、英玲奈えれなはヤリスの最終整備と点検をした。そして、瑠衣るいは初めてのレースに参加することになった。緊張している瑠衣るいを見た真希音まきねは笑いながら言った。


「何で緊張してんだよ!今日は練習だから落ち着けって」

「分かってるけど、覚えることが多くて」

「大丈夫だってレッキ(下見)は2回もあるし、私が教えるから」

「ありがとう。」


少し落ち着いた瑠衣るいを見て真希音まきねは声を張って言った。


「じゃ、一回目のレッキ行きますか!」

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