第5話 運命の人、紫ちゃん

皆さんお久しぶりっ!


僕の名はは藤原惟光、お肌すべっすべの18才。


世界的にも有名な好色一代男、光源氏の従者だよ。


前回までのあらすじ、


おこり(マラリア)に罹った我が主、光る君は北山に住む高僧の祈祷で何とか散歩できるまで回復したものの…叡山電鉄15分(当時は無かったけどね)の寺と坊さんしかいない北山でスキル「垣間見(覗き見)」を発揮し、

尼君のお孫さんと思われるまだ10才前後の可愛らしい姫君を…なんと見初めてしまったんです!


どーする?惟光。


聖域北山でも主の色好みは健在だ。


「彼女たちは私の妹とその孫娘なんですよ」


翌日、その家の主である北山の僧都(位のある坊さん)が光る君を訪ねに来て私の僧坊の中に女の集団がいるのはこうこうこういう訳なんですよ!


別に囲ってる訳じゃねーし、家族だから一緒に住んでるだけだし。


光る君に覗き見られた家族の事情を自分からすらすら話してくれました。


あの尼君の娘さんは実は兵部卿の宮(藤壺女御の兄)の側室だったけれど正妻さんがはげしく嫉妬深い人で事あるごとにいびっていたせいで姫君を産むと間もなく病で亡くなってしまったこと。


遺された姫君を母方の祖母であるあの尼君が引き取って10年間養育してきたこと。


尼君も最近病気がちで養生のために北山にこもっていていること。


などなど…


話を聞いているとなんだか、光る君の境遇に似ているではありませんか。神妙な面持ちで僧都の話に聞き入っておられた光る君は、


「それは姫君の将来が心配でしょう。よければ後見人として姫の面倒を見させてもらいたいのですが」


と予想もしなかったソッコーのプロポーズを姫の大伯父である坊さんに申し出たのです。


この時代、後見に立つ。ってイコール将来嫁にするからって事なんです。


坊さんなれど僧都は男ですからそれは光栄、と帝の息子でガチセレブの光源氏の申し出を妹に伝えましたが当の尼君はというと…


まだ10才の孫に18才の男がプロポーズですって?キモッ!


とドン引きして

「な、何かの間違いじゃないかしら?四年後にまた求婚なさってくださいね」


と丁寧にお断りされたのです。


仕方ないよねー、平安中期でも10才の幼子を嫁にするのは早すぎだよ。


という、


コンプライアンスを尼君はわきまえていたようです。


「そっかあ…」と断られて肩を落とす光る君に「あれはさすがに性急過ぎて引かれますってば。ここは一旦諦めましょ、ね?」と説得する僕。


「だけどあの姫との出会いは運命なんだよ」


と目をギラつかせる光る君のやってる事は坊さん達の修行道場である聖域北山に来て幼い姫を嫁に貰いたいと尼さんにせがむという、


不道徳の極みのワガママです。


あーもー、こいつに一服盛って眠らせて都に強制送還させたい…とイラつきMAXだったその時、


「なんだなんだー?随分侘しいところに天下の光源氏がいるじゃないか!」


と押し掛けて来た一団。


左大臣の息子で光る君の従兄弟で、ご正妻の葵の上の兄君でもある頭の中将はじめとする源氏取り巻きの貴公子たち。


別名

ライジング・ハベリーズ


と僕が勝手に呼んでいる貴族のボンボンたちが「都に君が居ないから寂しくってさーあ、あーそぼ」と光る君を追ってきて普段静かな北山で管弦の宴というロックフェスを開いて坊さんたちから感謝感激雨あられ。


無理矢理フェスに参加させられた光る君も(病人なのに)それで気が紛れたのかライジング・ハベリーズと共に都に戻って行ったとさ。

いつもはなんだかウザいなと思っていたこの人たちには感謝しました。


めでたしめでたし。


…と言いたい所なんですけど二条院に戻っていた僕の所に、


北山の尼君、亡くなる。


という訃報が届いたのは8ヶ月後の11月。これは伝えなきゃだよねえ…と我が主に報告するとこの数ヵ月間何か思い詰めてらした


(おめでたいことに惟光は源氏の藤壺の女御への執心には気付いていません)


光る君は、


「惟光、今ここで君は何をするべきか分かってるよね?」


とドスを利かせたお声で呟かれました。


姫君のお父上の兵部卿の宮より先に姫君を連れ出せ。


って夕顔の君の時よりもリスクの高い無茶振りをされたのです。


殿上人の中では一番下の、従五位下侍従藤原惟光。


やれ、と言われたらやるしかないんです…とほほ。


次回、「光源氏計画」に続く























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