Sideユキ イケてるダメージジーンズ

 アタシとかすみは女子高時代からの同級生で、実家も結構近かったりする。だから登下校の時はユキと一緒になることが多かった。だからという訳じゃないけど、気づいたらお互いにとって一番の親友になってた。


 でも考えてみたら、アタシはキャピキャピしたグループにいて、かすみは真面目な女の子のグループにいた。そんな2人が一緒に居ることが多いってことは、結構周りからは不思議に思われることが多かった。


 かすみは高校時代は生徒会に入ってたし、成績だっていつも上位に入ってる。周囲からは真面目だとか、生徒会より風紀委員に入った方が良かったんじゃって言われてた。大学に入ってからもそう。1年の時の成績はオール秀で、2年の成績も多分そうなると思う。欠点と言えば運動音痴なことと、意外と抜けてるところがあるってとこ。


 私はと言えば、オシャレに恋愛に夢中だった。まぁ、結局高校時代は通ってたのが女子校だったってことと、合コンでことごとく玉砕してばっかりだったけど。それはそうと、この大学の入れたのはかすみと一緒に勉強してきたからだ。まぁ、理由はかすみともう少し長くいたいからなんだけど。


 そんなかすみだけど、以前からアタシに対しては結構甘えん坊な部分を見せている。高校時代からアタシの前だけではそうだったけど、最近また甘え始めてからそれが加速してる感がある。この日もそうなんだ。


「ユキ……」

「なぁに?」

「膝枕して~」

「いいぞ~」


 弱々しい声でアタシに甘えてきたかすみ。


「今日のかすみはラッキーだね~」

「ラッキーって?」

「今日のアタシのジーンズはダメージジーンズ。それもただのダメージジーンズじゃないんだぞ~」

 

 ちょっと自慢げに立ち上がってかすみに見せた。今日アタシが履いてるダメージジーンズは、太ももから膝まで大胆な穴が開いたハードダメージジーンズ。座れば何も履いてないように思われちゃうくらいセクシーなジーンズなのだ。


「膝枕すればぁ、アタシの生脚に生太ももを堪能できるぞ~❤」

「確かにラッキーだねぇ~」


 どうしたんだろう? 今日のかすみはいつもよりもだるそうな感じがする。でもまぁ、とりあえず膝枕で癒してあげるか。という訳で、アタシはカーペットの上に正座して、穴から思いっきり太ももを出した。


「さぁさぁ、かすみ、カモ~ン❤」

「ありがとう~」


 かすみはまるで吸い込まれるようにアタシの太ももにしがみつき、そのまま顔を太ももに埋めてうつぶせになった。


「ユキの太もも気持ちいい~❤」

「そうでしょそうでしょ?」


 本当に幸せそうなかすみ。まぁ、こんなかすみの姿を見れるのがアタシだけってのも、案外特別感があっていい感じかも❤


 アタシの私服はジーンズなりホットパンツなりが多いし、夏場ならちびTでへそ出しがフツーだ。それはアタシがそう言う服が好きってのがあるんだけど、同時にかすみがアタシの身体の露出してるところに甘えてくることが多いからってのがある。


 それ以外の服も着てることが多かったんだけど、考えてみたら、かすみがまた甘え始めてからは、こういう服ばっかり着てるなぁ~。それはそれでアタシとしては幸せだから別にいいんだけどっ❤


「ユキって本当に、いい匂いがするぅ~」

「最近使ってるシャンプーもいい香りの奴だしぃ、香水もちょっと変えてみたんだぁ」

「そっかぁ~」


 そう言いながらかすみは、ジーンズの穴に両手を入れて太ももを揉み始めた。お疲れだからアタシに目一杯甘えたいんだろうし、とりあえず話を聞いてみるか。


「ねぇかすみ、今日何かあったの?」

「何がって?」

「いつにも増してすっごいお疲れモードだから気になっちゃって」

「分かる?」

「そりゃ親友だもの、聞かせて」

「……コンビニの応対で失敗しちゃったの」

「失敗?」


 おやおや? これは、いつも何事においても正解ばかりはじき出すかすみにしては珍しい。


「お客さんがたばこを買おうとしてて、指定された番号を間違えちゃったの」

「あらら」

「指摘されてすぐに取り換えたんだけど、もうお会計が済んじゃってて、どうしようどうしようってなっちゃって~」

「それははそれは……」

「どうしてこうなっちゃったんだろ~」


 これは、本当に参っちゃってるなぁ。


「かすみって、最近大学のオープンキャンパスのスタッフとか、文化祭でやるゼミの出し物の準備とか、色々と大変だったからねぇ~。リラックスが足りなかったのかもしれないねぇ~」

「ううっ、私としたことが本当に情けないわ~。先輩が何とかしてくれたし、お客さんも気にしないでって言ってくれたけど、凄いショックで~」

「人間失敗はつきものだよ~。そんなに考え過ぎず考え過ぎず、肩の力を抜いたらいいんだよ~」

「どうやって?」

「どうやってって、そりゃ……」

「どうやって肩の力を抜いたらいいのかなんて、私には分かんないよ~」


 一層アタシの太ももに顔を埋めるかすみ。そう言えばかすみって、どんなことにも全力投球でのめり込む上に抱え込みがちだったなぁ。それで自分ではどうやったら息抜きできるのか分からないって感じで、要するにパンクするまで頑張っちゃう健気で危ない女の子なのだ。


「これは……アタシの目一杯の癒しをしないといけないな~」

「目一杯の癒しって?」

「今日はアタシのベッドで一緒に寝る?」

「えっ//////」


 アタシの提案に赤面するかすみ。なにを照れてるんだろ? 一緒に寝るなんて高校時代は何度もやったのに。


「イヤ?」

「うんうん、そんなことないよっ‼」


 首を左右にブンブン思いっきり振るかすみ、そんなに降ったら首が痛くなっちゃうよ。


「かすみと一緒に寝れるなんて願ってもないこと‼ 是非とも、是非とも‼」

「そ、そう」

「それに、ユキの身体に包まれるのは久しぶりだし……」

「なんか言った?」

「ううん、何でもない何でもない」


 かすみったら、鼻息荒くなっちゃってる。そんなに嬉しいのかなぁ? 







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私の同居人が無防備すぎる‼  路地裏の本棚 @gonsuke2001

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