探心音

下記詩を受けて作った詩になています。

私に想う心と表現をもたらしてくれたこの詩は、現在アルファポリスに移されました。

ご興味を持たれた方は、是非訪れて見て下さい。



素の詩 僕の詩 作者 小鷹 りく

    第36話 人魚



漆黒しっこくの海。

光沢こうたくもたらしているのは、きらめく星々と、白く明明あかあかと光る月。

波はそれをかき乱し、銀粉ぎんぷんき散らす。


それを浴びてただよう小さな影があり、きっとそうだろう、いやそうに違いない。

うたが聞こえて来る。


愛おし人がいます。

恋しい。


温もりに触れたい人がいます。

恋しい。


抱きしめたい人がいます。

恋しい。


声が聞きたい人がいます。

恋しい。


嗚呼、嗚呼、嗚呼、と掻き毟り。

そううたうのです。


呵責かしゃくを薄め、楽になりたい。

呵責かしゃくを緩め、深く眠りたい。

嗚呼、これは罪。

そううたうのです。


愛したい、そうがれた。

愛されたい、そうがれた。

嗚呼、これは罪。

そううたうのです。


そうして沈んできました。

私にはこのうたを聞く事しか出来ない。

だから大きく息を吸い、鼻と口を手でふさぎ、海に沈んだ。


苦しい。

幾度いくども幾度も衝動しょうどうられる。

鼻から口から、思いっきり吸い込みたい。


手に出来ないものをさぐる様に、心音しんおんが届く。

どくん。


届かないものをさがす様に、心音しんおんが届く。

どくん。


求め続ける心音しんおんが届く。

どくん、どくん。


きっとこの音は、恋しい人に届いている。

君のあたたかさも、この音が届けている。

海の隅々すみずみに、空のてにも、その先にも。


だから私の頼みを聞いて欲しい。

反響音はんきょうおんで、私に気付いているなら、

そこから上がって来て、おぼれている私を助けて欲しい。

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