第38話 とりあえずオッケー

 「ごめんね~回りくどいことしちゃって。でもやらなきゃいけないから~。」


 「いえ、俺も受けるつもりで来ましたから。」


 「そう~?じゃあとりあえずまた明日来てもらっても~?」


 「分かりました。本日はありがとうございました。」


 「そんなにかしこまらなくてもいいのよ~。うちも人手が欲しかったところだから~。」


 「そ、そうですか?じゃあ明日からよろしくお願いします。」


 「は~い。」


 挨拶をして外へ出る。

 ここはどこかって?そりゃ俺のバイト先に決まってるでしょう。

 早速面接に行ったんだけどなかなか良いところだった。

 店長さんもふわふわしていて話しかけやすそうだし、少ないけど先輩も優しそうな人ばっかりだったし。

 1つだけ難があるとすれば距離だな...。

 学校から歩いて行ける距離ではあるのだが電車を使うのはもったいなすぎるといったところにある。

 残念ながら交通費の支給はないのでそこは運動だと思って我慢するしかないが。

 駅からもそんなに近くないという距離のせいか、あまり学生バイトも寄ってくれず、時給を上げたのも最近らしい。

 そのくせといっては失礼かもしれないが客足はそこそこある。車持ちの人とかは楽に来られるんだろう。


 「即採用だったのは運が良かったのかどうなのか。」


 採用されたのは良いのだがここからどうしようかという問題に帰る。

 ちなみに今日は用事があるからといって早足で駆けてきたが毎回そんなことも言っていられない。

 シフト次第だがほとんど毎日有希乃と帰っているので急に帰れなくなったとかいっても心配されるだろうし...。

 先に帰っておいてと言っても律儀に待ってくれるだろうし...。


 「ん?待てよ?俺確か有希乃にバイトすること言ったような気がするな...。」


 そうだ。あの謎の男のことが強烈すぎて言ったことすっかり忘れていたぜ。

 じゃあ別に隠す必要ないじゃん。あっさり解決。


 「あー何かめっちゃすっきりしたなー。」


 俺一人しかいないと分かっていても口に出したくなってしまう。

 俺は背中に翼が生えたような爽快感で家に帰っていくのであった。

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