第37話 作戦開始

 翌日、俺は有希乃たちと悶々とした気分で昼飯をとっていた。


 「おいどうした優一?今日はいつもより口数が少ないな。」


 「大丈夫?体調悪いの?」


 周りから見ても分かるレベルで悩んでんのか俺。

 しかし昨日のあの男の言葉がフラッシュバックする。


(「――あとこのことはくれぐれも口外しないようにしてくれ。」)


 あの不思議な雰囲気の男から発せられたこの言葉。

 正直大変なことにはならないと思うが今はこの二人に余計な心配をかけさせたくなかったので言う気にもなれなかった。


 「いや、少し考え事をしていただけだ。大丈夫だって。」


 「なら良いんだが。困りごとがあるなら俺たちに迷いなく相談しろよな。」


 「私も力になるから。」


 「ああ。分かってるって。」


 こういう所の気遣いはピカイチだよな。心が洗われていくぜ。

 ...やっぱり秘密にしておこう。


 「それじゃ、そろそろ戻るか。」


 「そうだな。」


 「そうだね。」


 ――場所は変わって柳沢家にて。


 「――というわけでどこか良いバイト先とかないか?」


 「うーんそうだねー。近さならそこのコンビニとかでも良いんだろうけど有希乃さんに出くわさない場所かー。」


 例のプレゼント作戦についてすみれに相談していた。

 意外と都合の良い短期バイトなんて存在しないんだなー。


 「あ!こんな場所なんてどう?」


 「お!いいな!」


 すみれに見せてもらったところは小さなカフェだったが場所も学校とは学校の向こう側で帰りに十分寄ることができる。時給も決して低くはない。


 「よし!そこに決めるか!」


 「りょーかーい。じゃ私はこの辺で。」


 「ありがとな。」


 すみれはそのまま自分の部屋へと戻っていった。

 とりあえず目処は立った。後はどう行動するかだ。

 学校の帰りに寄るということは下校時に有希乃に上手い言い訳をしてから行かなければならない。

 一応プレゼントを渡すその時まで秘密にしておきたい。


 「うーん。どうしたもんかなー。」


 嘘をつくか?ばれそうだ...。

 終わった瞬間ダッシュで行くか?嫌われてると誤解されそう...。

 まぁ先に面接が待ってるな。そこで落ちたら意味ないし。後のことはそれから考えよう。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る