第19話 デートにアクシデントは付きもの

 「えーと服装よし、財布よし。時間はまだあるな。えーと後は...。」


 今日は有希乃との初水族館デートだ。

 もう楽しみすぎて今日なんか5時起きしちゃってソワソワのソワソワでもう語彙力ごいりょくって感じだ。

 そんなことをしているうちに気付けばもう出発の時間だった。


 「それじゃ、行ってきます。」


 「行ってらっしゃ~い。」


 すみれに見送られて出発する。待ち合わせ場所は通学の時と同じコンビニの前。

 すると何やら不穏な空気。

 ――あぁ...迂闊うかつだった。もっと早く出ておけば良かった。

 そこには有希乃の周りを囲う男が2人。あれは絶対友達じゃないよな。

 でも考えている時間も惜しい。ここはどうにでもなれ!


 「お待たせ有希乃。」


 「ユウ君...!」


 すると彼女は嬉しそうにこっちに素早く駆け寄ってくる。

 すると男たちは、


 「何?兄ちゃん。この子は俺たちが先に見つけたわけ。急に出てきた兄ちゃんが横から出てきてとるのはちょっと違うと思うんだわ。」


 「そうだぞ。ここはおとなしく俺たちの言うことを聞いといた方が身のためだと思うがなぁ?」


 有希乃が恐怖から縮こまって俺の後ろに身を隠す。

 俺は有希乃を守ろうと男たちに言い返す。

 よし。ここはいい感じの挑発で...、


 「お兄さんたちもいい歳してナンパですか?そんなんだからいつまでたっても女の人が寄ってこないんですよ。」


 「ちっ!このガキ!言わせておけば!」


 「調子に乗ってんじゃねーぞ!」


 男たちが大声を出す。

 ――ふっ...かかったな。

 ここは都会とまでは行かずとも近くにはそこそこの規模の住宅街、商店街もある。

 そして今日は休日。人通りはどうなってると思う?


 「なんだ?あれ?」


 「喧嘩か?誰か止めないと。」


 いつの間にか俺たちの周りには小さな人だかりができていた。

 策と呼ぶにはあまりにも拙く、周りを知っていれば誰もが考えつくようなものだ。

 俺にはこのくらいしか思いつかなかったが意外と効果は覿面てきめんだったようで、


 「くそっ!おい!ずらかるぞ!」


 「てめぇ覚えてろよ!」


 男たちはすぐに退散していった。

 それと同時に人だかりも消えていく。


 「ふぅ...。なんとかなったな。」


 「ユウ君...。ありがとう...。」


 有希乃が震えた様子で抱きついてきた。街中で抱きつかれるのは少し恥ずかしかったがのける気にもならず、しばらく二人で抱き合っていた。

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