2020年5月16日

 雨が降っていたので、朝の気分が良かった。こういう地雨の日は緑の勢力が増すのだ。石畳の隙間から生える雑草類も瞬く間に成長して道々は背の高い植物が生い茂り、人々はそれを掻き分けながら歩くことになる。藪の草花も腰くらいまでの高さまで伸びて、風景が一変する。


 車のタイヤに草が絡まって走行することもままならず、人々は傘を差して歩くことになる。植物の香りの間を人々が歩く姿、体は草に埋もれ、傘だけがひょっこりと見える。高いベランダから下を見下ろすと、緑を泳ぐ傘の群れが美しく、雨の日も良いものだと感じる。


 翌日には近所の住人が手分けをして伸び放題になった草花を刈る。手が緑になってしまうほどの量を刈り終えると、炊き出しが行われる。そこで食べる味噌汁とじゃがバターがとてもうまいのだ。


 梅雨どきの雨のちょっとしたイベントのようになっている。

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