第5話 ルールごとに文章を変える ネコチャンと下手な文章

※第1話から、ネコチャンが賢そうなことを言ったり言わなかったりしていますが、実は特に賢くないということが今回でよくおわかりになると思います。


===1 普通に書く===


「下僕よ、まだ読みやすい文章について考えているのですか?」

 ふて寝から目覚めたネコチャンが、ドライフードを食べながら私に話しかけてきた。

「はい、まだ考えています」

「なんというおバカさんでしょう」

 ネコチャンはご飯をカリカリと咀嚼しながら、ちらりと私を見た。

「まだわからないのですね。私には読みやすい文章というものが、もうわかりましたよ」

「えっ」

私は驚いて尋ねた。

「どうすれば読みやすくなるのですか?」

「読みやすい文章にする、のではなく、読みにくい文章にしない、ということを考えるのです」

「ほほう……して、読みにくい文章とは?」

 ネコチャンはご飯を食べ終えて、顔を洗いながら言った。

「それは下手な文章です。下僕よ、お前は文章を作るのが下手なのです。だから読みにくいと感じるのです。行空けのルールなど何でもいい、お前が読みにくい文章にならないようにすればいいのです」

「な、なんと……いや、別に私の文章がうまいわけではありませんが、しかし産まれてから一度も文章を書いたこともなければ、本を読んだこともないネコチャンに貶されるとは……というか、上手い文章と言っても具体的にどんな文章を書けばいいのですか? それがわからないことには……」

「それは本を読み、文章を書いたことのある下僕自身が考えることです。私の知ったことではありません」

「さすがネコチャン、言うことがむちゃくちゃです」

 感心のあまり思わずそう言うと、ネコチャンは私の足の甲を噛んだ。私はスリッパが苦手なので、特別厚手の靴下でも履かない限り、噛まれると痛い。

「いたたた!」

「下僕よ、黙りなさい」

「いやしかし」

「口答えはおよしなさい。私はネコチャン、神の創造物にして、グッドデザイン賞を戴くに値いするものです」

「え? ネコチャンはクリスチャンだったのですか?」

「さっきのは私がかわいいということを表すための形容です。私はクリスチャンではありません」

「ええ……やっぱりめちゃくちゃだなぁ。さすがはネコチャンです」

「とにかくルールが何であれ、文字の固まりが大き過ぎたり、小さ過ぎたりすると見づらいというのでしょう? だったらそうならないようにしてみたらいかがですか。あと私のご飯はまだですか?」

「さっき召し上がったばかりですよ、ネコチャン」

 ご飯がもらえないことを理解したネコチャンは、プリプリしながらトイレのある部屋に姿を消した。



===2 一行空ける===


「下僕よ、まだ読みやすい文章について考えているのですか?」


 ふて寝から目覚めたネコチャンが、ドライフードを食べながら私に話しかけてきた。


「はい、まだ考えています」


 ネコチャンはご飯をカリカリと咀嚼しながら、ちらりと私を見た。


「なんというおバカさんでしょう。まだわからないのですね。私には読みやすい文章というものが、もうわかりましたよ」


「えっ、どうすれば読みやすくなるのですか?」


私は驚いて尋ねた。


「読みやすい文章にする、のではなく、読みにくい文章にしない、ということを考えるのです」


「ほほう……して、読みにくい文章とは?」


 ネコチャンはご飯を食べ終えて、顔を洗いながら言った。


「それは下手な文章です。下僕よ、お前は文章を作るのが下手なのです。だから読みにくいと感じるのです。行空けのルールなど何でもいい、お前が読みにくい文章にならないようにすればいいのです」


「な、なんと……いや、別に私の文章がうまいわけではありませんが、しかし産まれてから一度も文章を書いたこともなければ、本を読んだこともないネコチャンに貶されるとは……というか、上手い文章と言っても具体的にどんな文章を書けばいいのですか? それがわからないことには……」


「それは本を読み、文章を書いたことのある下僕自身が考えることです。私の知ったことではありません」


「さすがネコチャン、言うことがむちゃくちゃです」


 感心のあまり思わずそう言うと、ネコチャンは私の足の甲を噛んだ。私はスリッパが苦手なので、特別厚手の靴下でも履かない限りは、噛まれると痛い。


「いたたた!」


「下僕よ、口答えはおよしなさい。私はネコチャン、神の創造物にして、グッドデザイン賞を戴くに値いするものです」


「え? ネコチャンはクリスチャンだったのですか?」


「さっきのは私がかわいいということを表すための形容です。私はクリスチャンではありません」


「ええ……やっぱりめちゃくちゃだなぁ。さすがはネコチャンです」


「とにかくルールが何であれ、文字の固まりが大き過ぎたり、小さ過ぎたりすると見づらいというのでしょう? だったらそうならないようにしてみたらいかがですか。あと私のご飯はまだですか?」


「さっき召し上がったばかりですよ、ネコチャン」


 ご飯がもらえないことを理解したネコチャンは、プリプリしながらトイレのある部屋に姿を消した。



===3 会話文をまとめる===


「下僕よ、まだ読みやすい文章について考えているのですか?」


 ふて寝から目覚めたネコチャンが、ドライフードを食べながら私に話しかけてきた。


「はい、まだ考えています」

「なんというおバカさんでしょう」


 ネコチャンはご飯をカリカリと咀嚼しながら、ちらりと私を見た。


「まだわからないのですね。私には読みやすい文章というものが、もうわかりましたよ」

「えっ」


 私は驚いて尋ねた。


「どうすれば読みやすくなるのですか?」

「読みやすい文章にする、のではなく、読みにくい文章にしない、ということを考えるのです」

「ほほう……して、読みにくい文章とは?」


 ネコチャンはご飯を食べ終えて、顔を洗いながら言った。


「それは下手な文章です。下僕よ、お前は文章を作るのが下手なのです。だから読みにくいと感じるのです。行空けのルールなど何でもいい、お前が読みにくい文章にならないようにすればいいのです」


 私はショックのあまり仰け反った。


「な、なんと……いや、別に私の文章がうまいわけではありませんが、しかし産まれてから一度も文章を書いたこともなければ、本を読んだこともないネコチャンに貶されるとは……というか、上手い文章と言っても具体的にどんな文章を書けばいいのですか? それがわからないことには……」


 仰け反ったままの私に、ネコチャンは言った。


「それは本を読み、文章を書いたことのある下僕自身が考えることです。私の知ったことではありません」

「さすがネコチャン、言うことがむちゃくちゃです」


 感心のあまり思わずそう言うと、ネコチャンは私の足の甲を噛んだ。私はスリッパが苦手なので、特別厚手の靴下でも履かない限りは、噛まれると痛い。


「いたたた!」

「下僕よ、黙りなさい」

「いやしかし」

「口答えはおよしなさい」


 ネコチャンはそう言って見栄を切った。


「私はネコチャン、神の創造物にして、グッドデザイン賞を戴くに値いするものです」

「え? ネコチャンはクリスチャンだったのですか?」


 思わずつっこむと、ネコチャンは不愉快そうに鼻をプスプス鳴らした。


「さっきのは私がかわいいということを表すための形容です。私はクリスチャンではありません」

「ええ……やっぱりめちゃくちゃだなぁ。さすがはネコチャンです」


 ネコチャンは私の文句などどうでもいい様子で、ゴージャスな尻尾を左右に振った。


「とにかくルールが何であれ、文字の固まりが大き過ぎたり、小さ過ぎたりすると見づらいというのでしょう? だったらそうならないようにしてみたらいかがですか。あと私のご飯はまだですか?」

「さっき召し上がったばかりですよ、ネコチャン」


 ご飯がもらえないことを理解したネコチャンは、プリプリしながらトイレのある部屋に姿を消した。



========


 という感じで、今回はルールに合わせて文章を変えてみました。もうコンセプトが崩壊しています。


 2の場合は会話文が続いても読みやすいですが、3の場合は適当に地の文を入れる必要がありそうです。

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