0512 SFにおける恋愛ストーリーの構造①

 壁が高いほど燃え上がる……なんて話がありますが、確かに「ラブストーリー」には、色々な「壁」が存在します。

「恋愛を邪魔する壁」という構造には、具体的にどんなものがあるか、ちょっと考えてみたいと思います。


①ロミジュリ型

 敵対関係にある集団、または個人同士にあるものの恋愛関係。私が好きな「ウィンダリア」の一組がそうでしたが、SFというと……やはりガンダムのヒロインを挙げざるを得ないでしょうか。

 ララァ、フォウ、ロザミア、プル、プルツー、クェス……一作品に何人もヒロインが出てきますが、やはり際立つといえます。ただ、富野作品にあるあるの「とりあえず死んどけ」的な扱いが、狙いすぎている感もあるんですよね。

 でも、「最期」に注目すると、ちょっとバリエーションが増えるでしょうか。

 主人公に殺されたのは、ララァ、ロザミア……クェスは微妙ですが、ハサウェイが「壊れ」ですんでね(笑)

 マチルダさんも含め、主人公を庇って死ぬタイプの方が、直接殺されるより多くなってますね。


 ここでもう一つ挙げたいのが、「ポケットの中の戦争」です。クリスとバーニィはお互いに最後まで「相手」を知らなかった、そして唯一主人公であり傍観者であったアルだけがその事実を知っていた……これが、この話を「ガンダム最大の悲劇」にしていると思います。

 救いようのないストーリーにして、いまだ語り草になるのは、そういう理由なのでしょう。私も、ポケ戦が一番好きです。

 当事者が真実を知らない、という構造としては、ポケ戦が一番ロミジュリにちかいのではないでしょうか。


②椿姫型

 フランス文学者デュマ・フィスの『椿姫』に見られる、「恋愛の相手が、もうすでに権力者のものになっている」という構図です。この場合、「奪う」か「諦める」かとなるのですが、『椿姫』は、ヒロインのマルグリットが「身を引く=諦めさせる」という形で終わっていて、いわば「諦める」の変形と言えますでしょうか。

 このモチーフを使い、「奪い、そして破滅に至る」という結末を描いたのが、竹宮恵子氏の『風と木の詩』で、主人公の両親の恋愛を「奪い、そして添い遂げる」ストーリーとして描いている分、その息子(主人公)との対比が、読後さらなる涙を誘うようになっています。風と木の詩がさらにえぐいのは、二重の壁を用意しているところでしょうか。“ヒロイン”が権力者のものであるだけでなく、「男」である。つまり「ゲイ」という壁も設定しているところです。読み進めるほど、着地地点が「破滅」しかないと思えてくるのですが、結末がその通りになってもなお、得も言われぬ感傷が残るという名作です。BLはさすがに無理……という方にはお勧めできませんが、でも嗜好に関係なく読むべき「文学」に仕上がっているのは、さすがと言えますね。ヒロインのジルベール君がこれまたツンデレをこじらせた厄介者だという、まあ面白い要素がてんこ盛りの作品です。

 ただ、SFではないんですよね、これ(笑) 竹宮作品にはファンタジーやSFもあるので、他のも読みましたが、ここまで壁がある作品は無かったように記憶しています。イズァローン伝説もとても面白かったですし、『地球へ』も面白かったですよ。


 ちょっと竹宮作品から離れて、他のものを探してみましょうか……そういえば、ララァはシャアのところにいましたから、それに近いかもしれませんね。ガンダムで語るときりがないので、ここからも離れましょうか。


 そこで気が付いた! 神林作品には恋愛要素がほとんどない! だめだ、アニメかコミックで探そう……なんか、無いような気がしてきました。

 心当たりのある方、そういう要素のある作品をご紹介ください。


 長くなったので、今日はここまでということで。

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