04










 蚤の市での情報収集を終えて、メンバー一同はアジトへと戻って来ていた。交換した品々はテーブルへと置かれている。ソファに座ったライが、一つずつ見ていた。

 今回交換用に持ち出した余りは、元の場所へと収納する。持ち出したものも手に入れた物も多くはない。だがエネルギー系統は良い品と交換が出来た。主に量の多い食べ物や、飲み物である。

 テーブルに転がっている物をチェックしているライが、飲食物がほとんどを占める中で異質な物を見付けて手にした。それは機械のようでもあるが、動力のいらない道具のようにも見える。



「おい、誰だよ。このガラクタもらったの」

「わたしは食べ物しか交換してないわ。銀木犀の花をモチーフにした指輪とかには惹かれたけど……買っていないし」

「あ、オレっす!」



 元気よくアルフォンスが名乗り、ライの手からもらった。自身の手へと移ったそれを、アルフォンスは見ている。今にも拳を振り下ろさん様子で、ライは睨み付けていた。睥睨など目に入っていない彼は、まじまじと手の中の品を見ている。



「良いらしいんスよね、これ! 料理の時に便利で」

「そんなもん、キッチンとかに備え付けられてるモンで解決するだろ」

「いや、どこに備え付けられてるんすか」

「一応、簡単なのならあるんだよ」

「え。そうなの?」



 何度も通っているシンシアだが、初耳らしい。奥のチェアに座っているゼロに尋ねた。

 だが、訪れたのは沈黙だった。名前で呼び掛ければ、短く反応する。席から立ち上がり、ソファの方へと赴いた。



「ほとんどこの部屋で完結しているが、他の部屋の説明もしておこう」



 うらで何か考え事でもしていたのかも知れないが、話は聞いてはいたらしい。遅れはしたが、三人の会話に混じった。

 全員で一室から出る。廊下から続いている他の部屋は二部屋ある。階段側から見て手前にある部屋へと入った。中はそこまでの広さはないが、ゆとりは十分にある。壁に沿うように棚や開けそうな場所。シンプルな機器があった。タンクのような形の物が複数あり、それが一つの機械に繋がっている。コーヒー等飲み物を入れてくれる装置だろう。破損しており、動く気配もない。

 開けられそうな場所を開けば、冷却装置が備わっている。こちらも静かな物である。他にも、充実したものではないが、埋め込まれる形で調理設備が備わっていた。料理の手間を減らして簡単に作ってくれる設備だが、やはり稼働している気配はない。



「リフレッシュルームね。って言っても、使えそうな物はなさそうだわ」



 大雑把に見回したシンシアが呟く。

 基本的な設備はあるが、動いていない。棚としての活用なら出来そうだが、それだけの物量が無いので収納にも使っていないのが現状だ。台として使うことを想定されていたのだろうテーブルも置いてあるが、テーブルの上にも何も置かれていない。何かの破片だけが散らばっている。



「絶対に動かないんスか?」

「供給のラインが物理的に断たれている。繋がっていたとしても、そんな余裕があれば町はもっと明るいだろう」



 アルフォンスが器具達を覗き込んでは、腕を組んで唸る。



「料理なんて誰もしねえんだから、別に放置でいいだろ」

「オレあったかい物食いたいし、したいんですけど……」

「あら、作れるの?」

「弟と妹の面倒をずっと見てきてたんで、まあまあ作れるっすよ」



 質問に対し、アルフォンスはにこやかに答える。

 簡略化された事や、機械に任せれば出来上がるお陰で、調理と呼べるような作業を行う必要性が大幅に減った。今は甚大な被害のせいで、便利なアイテム達がまともに使えないため時代程ではないが。

 それでも、今の時代を生きる者でそこそこ料理が出来るというのは珍しい部類だ。物珍しげな感心の目がアルフォンスに向いていた。


 唸っていたが解決策は思い付かないようで、次に向かう。

 普段過ごしている部屋のほぼ正面に位置する部屋が開けられた。扉はその部屋だけ重さが違い、率先して――力を見せつけるように――ライがスライドして開ける。

 物。その部屋には物が詰め込まれていた。使えそうにない家具や場所を取る家具なんかも雑多に置かれている。何かの機械の残骸らしき物もあった。

 この部屋だけ明らかに多い物量具合に、アルフォンスが顔を引きつらせた。



「……なんスか、ここ」

「元々は倉庫だったらしく、来た時には既に物だらけだった。安全装置の外れた守衛ロボも中で倒れていた」



 中には入れそうではあるが、この部屋で何かをするには難しい。それだけがわかったところで、元の部屋へと戻った。


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