絶対強者(お姉ちゃん)
どの世界においても、弱肉強食という自然の摂理には抗うことができないのだ。
そんな階級制度的に、自分たちよりも上位の存在が現れた。今回もただそれだけの事だった。
「オーズーくーん!」
オズさんの後ろの方から女性の声がする。
声の主はファルシア・ヴァン・アインシュタット。見た目の年齢はそこまで
彼女は今まで、私の新しいギルド証の手続きをしていたので、この騒ぎには遅れてやってきたというわけだ。
「はい、ロゼッタちゃん、これがうちのギルド証」
「……あ、ありがとうございます」
オズさんから、解放された私は息を整えなんとか返事をした。
「それと……、オ~ズ~く~ん~!」
「うぇ!?ファ、ファルシア
笑顔ではあるが明らかに怒っている様子のファルシアさんに気付くと、オズさんはこれまでとはうって変わって小動物のように小刻みに震えだす。
何かを察したウォルフさんが、無言で身振り手振りして、野次馬たちに解散を促していた。
「“どうしたんだ?”じゃありません。私、オズ君には、薬草採取の依頼をお願いしていたはずです!もう出発していると思ったら、こんなところでロゼッタちゃんをイジメているじゃありませんか……。いつからそんな姉不幸者になっちゃったんですか!お姉ちゃん悲しいです!!シクシク……」
涙目になるファルシアさん。
「い、イジメてなんていないさ。――なぁ?ただ俺は、依頼の同行者を探していただけで……。それで、この新人を案内ついでに誘っていただけさ。な、なあ!?」
「……本当ですかぁ?何やらさっきまで皆さんで騒いでましたが」
「うっ……」
オズさんは、私に目配せをする。
それは凄まじい目力で、俺に話を合わせろと言っているようだった。
「えぇ……、まぁ、そのような感じです……」
力なく、目を伏せながら答える。
最早今の私に、この方々に逆らう気力といったものは残されていないのだ。
「広場に人がこんなに集まってですかぁ?」
「これは、新人が珍しくて集まってきたというか……」
完全に目は泳いでいた。
「……じゃあ、“ファルシアお姉ちゃんごめんなさい”って言ってくれたらそうゆうことにして許します」
「う?うん!?……い、いや、ファルシアさん!?それは流石に……。人目があるというか、俺も良い大人だし……」
「うわぁぁぁん!
あぁ……、またか、と。
残っていた野次馬たちの冷めた目がこちらに向けられてくる。
「わわわわわ、分かった。分かったから!言うから!!――。もう大声で泣かないでくれ……。――……、ファ、ファルシアお姉ちゃんごめんなさい……」
恥ずかしさで顔はどんどん下がっていき、言葉尻に声は小さくなっていく。
そこには、もう先ほどの悪魔のようなの青年の面影は無かった。
子犬のようだった。
「じゃあ……、ロゼッタちゃんも……、」
「――、何故ぇ!?」
どうしてかその流れは私の方にも向かってきたのだ。
拒否権は無いようだった。
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