第9話 …共同的な告白

 ■作者より

 また先に作者です、2話だけコメディ感を出してみましたが自分に合っていないようなので、コメディ抑えます。


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 目の前には、何故か顔が赤い幼馴染と男のの後輩。

 そして、坐禅ざぜんを組んだお嬢様育ちの同級生。

 さらに、後ろにいる血塗ちまみれの校長の親族。


 カ……、カオス。

 今までこんなにも殺伐さつばつとした、曖昧あいまい混沌こんとんさいなんだ事なんて無かった。


ゆい。後ろにいる道祖神どうそじんはお前が連れてきたのか?」

 人を災いから守る道祖神どうそじんがなぜこんな所に?


「私は道祖神どうそじんなんかじゃありませんよ。」

 そう答えたのはゆいではなく、更に奥に居た道祖神……もとい、同級生の音海おとみ よる本人だった。


「それに、ここに来たのは私個人の意思。勿論もちろん貴方あなたに会うために。」

「お、俺に?」

 "勿論もちろん"とまで言いきられても、全く自覚はない。

 何か関わりを持ったことも、ましてや持とうとしたことすらない。

 部屋の中に吹く風に優しくなびく髪は、俺の視線を惑わすように揺れていた。


「えぇ、貴方あなたの様な腰抜けに会いにね。」


 その腰抜けという安っぽく在り来りな表現は"ビビり"という意味では間違っていない。

 が、しかし。

 彼女の真剣な目はそんな事を諭そうとしているのではないと分かる程に澄んでいた。


ゆい……。お前まさかあの・・・をしたのか?」

 あの話……俺が雑魚ヤンキーだった頃の話。

 一人称が"俺"になったのもその時だ。


「いやしてないけど、実は……。」

 ゆいは、今までの経緯けいい事細ことこまかに話し始めた。


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 女子2人きりの中庭。

「今日は急に呼び出してごめんね?」

「いえ、わたしは一向に構いません。それで、御用ごようというのは何でしょうか?」

 丁寧ていねいかつしたたかな台詞せりふは、少ない言葉数でもその生い立ちを彷彿ほうふつとさせる。


「実はさ、ことが綯ちゃんの事を、その……、好きだって言ってたの。」

「……成程なるほど。それで何故貴女あなたがそれを私に伝えたの?」

 彼女は私の思っていた反応のどれとも違う反応を見せた。

 赤面、拒否に加えて、逃走や激怒まで考えうる限りのほとんどを考慮していたはず。


 それでも諦めずに私は切り返す。

「"代わりに言ってきて欲しい"って言われたから。」

「……その方は相当な"腰抜け"なのですね。」

「"腰抜け"……?」

 腰抜け……、確かに琹はビビりで自己保身じこほしんが過ぎる所もある。

 でもそれは"気まずい空間が嫌い"だからで、琹は嫌われたくない訳じゃない。


「何も知らないのに、そんな事決めつけないでよ。」

 自分でも、何言ってるのか分からないくらいについ熱くなってしまった。

 俯いている私は、目の前に居る彼女に何を言われるかが怖くなってしまった。


「私も同じです。その方の事を何も知らない。だから……その……。」

「……何?」

「だから……そ、その方に是非……。」

 顔を上げるとそこに居たのは言葉たくみに人をけなす女子ではなく、頬を染めて自らの顔を手で仰ぐ同級生だった。


「私の事を『好き』だと言ってくれた方の事を是非教えて欲しい、と思いまして…あの…えっと……。」

 よるちゃんの事は全然知らなかったけど、わかりやすいリアクションを取ってくれたおかげで理解出来た。


「会いたいの……?」

「あのっ、変な意味はなくて……あのですね……あの……、はい。」

 よるちゃんは、コクッと意気いき消沈しょうちん気味ぎみに頷いた。

 それと同時に顔を手でおおった彼女を見て思ってしまった。

 この子は多分……生娘きむすめなんだろうな、と。


「分かった、連れて行ってあげるよ。着いてきて。」

「は、はい、お願いします。」

 彼女は赤面した顔のままでたどたどしく答えて、歩き始めた私を追ってきた。

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 と、いう事らしい。

 ただ、色々ツッコミを入れたい所も沢山あるけど……。


「まだ陽性反応チェックしてたのか……」

「まぁ、よるちゃんも一応後輩だしね。」

 あぁ確か、この高校に転入してきたんだっけ……。

 転入……転校じゃなく転入。

 つまりは、1度高校を退学したということ。

 何か問題を起こした、とかいう話は聞いた事無いという所が少し気になる。

 大体、転入したとなれば噂に聞くことくらいあるはずだけど……。

 まぁ、ストーカーのことを直接聞かなかっただけで今回は良かった。


「何の話ですか?後輩?」

 いくは、NノンPプレイヤーCキャラとの激闘を終えて話に入ってきた。

 実は郁との初対面の日に、MINEマイン虚偽きょぎの告白だったを含めて、一連の流れを明かしている。

 それは、いつかバレるし、そもそも隠し通せるような性格をしていないからだった。


「そう、お前の時と同じ感じかな。」

「じゃあ、あの人もストーカーかも、って疑ってるんですね。」

 いく後輩は、満面の笑みで「仲間だー、やった。」とほざいていた。


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 ■作者より


 1500(と少し)PV達成です。

 ありがとうございます。

 記念に次回はヤンデレを増やし、不評だったコメディー感を減らします。

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