第10話 驚きの事実!僕の妻は腐ってる!!Överraskande fakta! Min fru är rutten!!

日本ではちょっと危ない嗜好が流行ってるんだなって思ったのは、妻のアキが衝撃的な告白をしてきた時のことだ。

君が腐ってるだって?こんなにフレッシュで元気で可愛くて優しい僕の妻が?

しかも、その告白のタイミングが、ストックホルムの夏の定番イベント、プライドパレード(訳者注:LGBTの人達が自分たちの誇りや主張、権利を表現するパレード。日本でも開催)の最中だったから、ますます僕は意味が分からなくて混乱したよ。


余談だけど、同性で結婚することができるスウェーデンを僕は誇らしく思うよ。届出をしたら、同性でもきちんと配偶者の権利も保障され、法的にちゃんと効力もある。同性だって、浮気なんかしたら本当に修羅場だからね!


このプライドパレードはゲイやレズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーのグループだけではなく、自分の子供がLGBTということを誇りに思っている両親や、LGBTの人々を受け入れる企業などもパレードに参加してる。でも、最近は楽しくて面白い格好の人たちが見られるただのお祭りみたいになっている気もしてるかな。存在と権利をアピールすると言う本来の目的から離れつつある気がして危機感も感じてるけど…それはまた別の話。


アキと僕は毎年このパレードを観に行ってるけど、前回のパレードで、僕は参加者の男性に突然キスされたんだ。アキの目の前で。僕はとてもびっくりしたよ。半分生のお尻が出てるセクシーな警官コスチュームで、バッチリお化粧している若い男の子だった。

多分、お酒を飲んでて陽気な気分だったんだね。僕の顔を見るなり駆け寄って来るから、あれ?知り合いかな?と考えている内に、避ける暇もなく頬と唇に熱い口づけを食らってしまった。

〝ありがとうハンサムマン♡〟とわざわざハートまで付け加えて、あっという間に逃げていってしまったその男の子。そりゃ、隣にいる女性が口を開けたまま固まっていたら、流石にまずいと思ったんだろうな。そうです。この人僕の妻ですから。


僕は慌てて弁解したよ。全く知らない人だよ、僕もびっくりしたんだよと。でも、アキの様子が何だかおかしかったんだ。最初は自分の夫と男の子が目の前でキスするなんて!ってショックを受けているのかと思ったら、そうじゃなかった。


アキは、すごく喜んでいたんだ!〝私の夫は、ゲイにもモテるんだ!〟って嬉しくなったんだって。…わお。僕はまたすごく驚いたね。僕は最近アキの言動に驚かなくなりつつあるって思ってたけど、全く見通しは甘かったよ。まさかそんなところに喜ぶなんて!僕はまだアキのことを全然わかってなかった。ちょっと頭がクラクラしたよ。多分暑さのせいだって思いたかった。うん、大丈夫。きっとそうに違いない。


で、その時にアキが言ったんだ。〝実は私、腐ってるの〟って。

何そのカミングアウト?全然わからない。腐ってるってどう言う意味?


アキは、興奮しながら僕に教えてくれた。

日本では今、同性の恋愛ストーリーが流行ってるらしい。特に男性同士の恋愛が漫画や小説やドラマになっていて、しかもそれが女性に人気なんだって。

ストレートの女性なら、女性と男性の恋愛ストーリーがいいんじゃないの?ハーレークイーンみたいな。(訳者注:カナダ発祥の女性向け大衆恋愛小説、エロ描写含)って僕が尋ねると、強い口調で〝妄想の中に女はいらない〟って、アキは断言したんだよ。この時のアキの目は、ちょっと怖かった。

男性同士が話しているのを見るだけで、カップルかもしれないと想像する心はもう腐っている、というわけらしい。同性愛フェチなのかな??


僕はそのムーブメントがそのまま、LGBTに偏見のない社会や日本での同性婚の実現に結びついたらいいなと思うけど、同時にちょっと複雑だった。

自分の夫と知らない男の子のキスを見て興奮するなんて、本当にアキは変わってる。


しかも、真っ赤なキスマークを頬と唇に残したまま(家に着くまでアキは教えてくれなかった!)の放置プレイにはまいった。どうりで帰り道、色んな人と目が合う訳だよ。もちろんその後、僕もアキにたっぷり甘ーいお仕置きをさせてもらったけどね。

というか、いつかアキを喜ばすために男性と濃密なスキンシップを要求されるんじゃないかと思うと、僕は今から怯えてしまうよ。いくらアキの希望でもこれはちょっと難しいかと思うんだけど。


皆も、腐っている女の子には十分注意してね。どうやらスウェーデンにもいっぱい生息しているらしいから。かわいい女の子ほど、本当に獰猛な目をしているから!

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