変態上司と奴隷上司

まいてい

第一話 変態上司と奴隷上司


ーーー登場人物ーーー




北川きたがわ アリル:憧れのゲーム会社に入社したてのロリッ娘イラストレーター




変態へんたい 奴隷どれい:キモデブ上司。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私の名前はアリル。北川アリルと言います。


「新入社員おめでとー! かんぱーい」


就職活動も順調に終わり、憧れの会社にこの春から勤めることになりました。


こうして、私の楽しい社会人一年目が始まるはずだった、のですが。


「今日から君の上司になった、変態 奴隷(へんたい どれい)だ。しっかり働くように」


ブフッ


私は思わず吹き出します。やっちまった。


「……」


上司は黙ります。怒ったように黙ります。


私は笑ってごまかします。


困ったことになりました。どうしよう。


沈黙が、気まずい空気をつくります。


上司は私をにらみつけます。蛇のようににらみます。


「北川くん? だったかね。帰る前に、私の部屋に寄りなさい。来なかったら……わかっているな?」


「……はい」


私は答えます。消え入りそうな声で答えます。


初めての私の仕事はとっても楽しかったです。それはもう楽しすぎて、上司が言ったことを危うく忘れるところでした。危なかったぁ。


わたしはなんと、憧れのゲームのイラストのアシスタントになったのです。



楽しい時間もつかの間、私は上司の部屋へと向かいます。


コンコン


「入ってもよろしいですか?」


私は尋ねます。入っていいか尋ねます。


「……入りなさい」


ドアよ!壊れろ


ガチャ


……ですよね。開きますよね。


私はドアをゆっくり押します。


上司はいました。座っていました。


「座りなさい」


上司はそういい、ソファを指さします。


すると、上司の胸ポケットに吊るされたネームプレートが目に入ります。


へんたい どれい


ブフッ


私は思わず吹き出します。


またやってしまった。


「……」


上司は黙り込みます。怒るように黙ります。


それもつかの間、上司は気味の悪い笑みを浮かべました。


「座りなさい」


上司はそういい、ソファを叩きます。怒ったようにソファを叩きます。


「……嫌」


どうしてでしょうか? 答えは簡単。上司は自分の太ももを叩いていたのです。


変態。新入社員になんてことをするのでしょうか? この上司。


まさか、これがセクハラというものなのでしょうか。


私は焦ります。


「あ・り・る。す・わ・れ。」


なんてことでしょうか? 私にあらがうすべはあるのでしょうか?


せっかく手に入れた職場、やりたくないけど……


私は私は悩みます。頭を抱えて悩みます。


「ありるちゃーん? おーい?」


「……」


私が動かないでいると上司は怒ったようにこう言います。


「なめんなよ? 新入社員のメスがきが」


上司は叱ります。責めるように叱ります。


「あなたの仕事、無くなるかもね」


それは困る。


私は覚悟を決めます。嫌嫌ながらも仕方なく、上司のもとへ向かいます。


「さすがだねー。ビッチだねー」


上司はっここぞとばかりに私を言葉でなぶります。


上司は私の体をいやらしい目で撫でまわします。


私は止まります。上司の前で止まります。


「は・や・く。す・わ・れ」


上司はまくしたてます。 勝ち誇ったようにまくしたてます。


私は私は諦めます。あきらめたようにつぶやきます。


「……わかりました」


そう言った私は背を上司に向けて、ゆっくりと腰を落とそうとします。


このくらい、なんてことない。


今は、耐えなきゃ。


と、その時


ピカッ


私は光に包まれます。明るい光に包まれます。


私は光に目をくらませます。


私はそのまま気を失います。


-TURN END-


「ここは?」


わたしは周りをきょろきょろ見回します。


目の前に倒れている人がいました。誰でしょう? 


「いててて、なんだよ」


そこには、上司がいました。わたしは上司と目が合います。


「ん? なんなんだ、ここは?」


それ、私も思いました。わたしは周りを再び見渡します。不思議そうに見渡します。


これには私もさすがに驚きました。


なんと、それはそれは、見渡す限りの草。大草原が広がっていたのです。


「どういうことだ?」


上司は私に問いかけます。


「わかりません……」


と私。だってホントに知らないんです。


その時、空から声が聞こえてきました。


「「「あなた方は、異世界へといざなわれました。


  北川 アリルさん、攻撃力 88888 HP 18782


  パッシブスキル オートアタック


変態 奴隷さん、 攻撃力 1 HP 93939393     


パッシブスキル 奴隷            」」」


攻撃力? RPGとかできいたことはありますが……


「攻撃力? 何ばかなこといってんだ! ふざけるな」


そう言い、上司は私に突進してきます。


キャ


私はあざといアイドルのような声を上げちゃいました。


それもそのはず、こんな巨体にぶつかられては骨が折れるかもしれません。


私は歯を食いしばって覚悟します。


と、次の瞬間わたしは目を疑います。


上司がどっかに飛んでいきます。はるか彼方に飛んでいきます。


「え?」


私は状況を理解しようとします。そして、我に返ります。


そうです、わたしは小指で上司をはじき返しました。


「「「パッシブスキル

  

  オートアタック:意識すると、相手に対して最適の攻撃を仕掛けます


  奴隷:相手の言うことに、逆らうことができません         」」」


空から再び説明を受けます。


私は頑張って理解します。一生懸命考えます。


まだよくわかりません。でも、もしかして……


「わたしって、強かったりする?」


ハッ


私は上司の姿を探します。


見つけました。


結構向こうに倒れているおじさんがいます。もちろん私の上司です。


間違えありません


「わたし、上司より強いんだぁ」


私は上司の近くへ向かいます。


上司は気を失っているようでした。


「上司ー」


「起きてくださーい」


ムクッ


唐突に上司は起き上がります。


わぉ、この人以外とタフなのかな?


いいえ、違います。


奴隷:相手の言うことに、逆らうことができません 


私は、空から聞こえてきた声を思い出します。


私はすべてを理解します。


多分この世界は、現実世界とは異なる空間で、この世界では私は上司よりも強い。


私は思い出します。現実世界でのことを思い出します。


上司はおびえたように私を見つめます。


なるほど、小説とかで読んだことがあります。


異世界転生ってやつですか。


ってことは、私はこの世界で上司にやりたい放題。


立場が逆だったらって考えると、ぞっとしますけど。私はラッキーです。


私は思い出します。現実世界での出来事を思い出します。


「じょ~う~し~さ~ん」


私は歌うように語りかけます。


「ひぃぃ」


上司もどうやら、今の状況を理解したようです。さすがはゲーム会社のクリエイターさん。物分かりがよくてよろしい。


「おすわり!」


ワン


……とは叫びませんでしたが、私の目の前で上司はお座りして見せます。


最高。私の中で何かがはじけます。


「変態さん、現実世界で私にやったこと? 忘れたとは言わせませんからね」


「アウ?」


上司はイヌのように答えます。キモ。


こうして、私と変態さん(犬?)の冒険が幕を開けました。


……いや、開けませんけどね。


「ふざけないでください。私に謝ってください」


「その、どうもすいませんでした!」


上司は申し訳なさそうに謝ります。頭を垂れて謝ります。


「はぁ、もういいですよ。楽にしてください」


そう言うと、上司はバタンと倒れます。


パァァァァ。


私は光に包まれます。冷たい光に包まれます。


-TURN END-


気づけばそこは、現実世界でした。


私は振り返ります。


上司はソファで眠ってました。死んだように眠ってました。


危ないとこでした。中年男性の上にお座りだなんて、お嫁に行けなくなるところでした。


私はいたずらっぽい笑みを浮かべて、上司の靴を蹴飛ばします。


そのまま、お家へ帰ります。


END


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最後まで読んでいただきありがとうございます。


どうだったでしょうか? レビュー等かいてくださると、作者さんは喜びます。

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変態上司と奴隷上司 まいてい @mizukisan321

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