第3話 グルド

▪〈アースガルド・オンライン〉獣帝国帝都ジエンフォールノーヴィスヴェン=グレラード


 爽やかなそよ風が頬を撫で、草木が揺れる。サラサラと言う草同士がかすれる音で俺は目が覚めた。


「ここは…」


 森の中心に聳え立つ大樹。そして、そのふもとの平原にある巨大な街。異世界に転生したようなファンタジーの景色に胸が躍る。

 立ち上がろうと地面に手を付けるともふっとした感覚があった。見てみると銀色の狼の尻尾があった。


「うわっ!……って、そういえば獣人だったな」


 近くに水たまりがあった為、その水面に自分の顔を映す。

 髪は銀色で狼の耳が生えており、瞳はブルーハワイの様な明るい青。鋭い犬歯が生えている。

 腰の後ろにはポーチ型のアイテムストレージ。そして、左側には鉄製の片手剣が鞘に納まっていた。


ガタガタガタ……


 背後から音が聞こえ、後ろを振り向く。

 すると、こちらに向かって来ていた馬車が止まり、中から茶髪でごつい体系の人が下りて来た。


「おいあんちゃん、どうしたんだ?こんな場所に」

「ええと…、この街に来たばかりで驚いちゃって……」

「まぁ俺も最初は驚いたがな。ユグドラシルを見たら誰でもそうなるさ」


 彼の言葉の中に気になる単語があったので尋ねてみる。


「ユグドラシルって?」

「あんちゃんユグドラシルをしらねぇのか?ユグドラシルはあのでっかい木の名前だよ。世界樹ってよばれる時もあるらしいぞ。そうだ、町の中まで乗せてってやるよ」


 その顔からありえないような言葉が発せられ、俺は驚愕にみまわれる。


「安心しな。金はいらねぇよ。俺はグルド。グルド=ジェネルだ」

「俺はヴェン=クルシフォンって言います。乗せていただきありがとうございます」


 馬車に乗り、俺とグルドさんは獣帝国の帝都内へと向かった。


「ここは帝都なんですよね。なぜ人間のグルドさんがここに?」

「俺は帝都ジエンフォールの中で鍛冶屋をしてんだ。あまり分からないだろうが、これでも名が知れてるんだぜ」

「へー」


「「……」」


「いやもっと関心持てよ!?」


 一瞬の静寂を突き抜けるようなツッコミが炸裂した。

 暫くして帝都の入り口に到着した。馬車から降り、お礼を言う。


「ありがとうございました!」

「おう!気が向いたら家の店に来てくれよ!安くしてやるからな」


 住所を書いた紙を渡し、グルドさんは行ってしまった。


「良い人だな」


 さて、俺も頑張るか。

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蒼き獣人の聖譚曲《オラトリオ》〜最強の獣人はいずれ《戦士王》と呼ばれる様です〜 きじとら @Noa_Werewolf

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