30日目 「リリ、がんばる!」


 「何を呆けているのかしら?」


 ルキアがそう言うとリリがポカンとした顔で問いかける。


 「始めるって何を?? 魔法学校に通わせてくれるんじゃないの?」


 数秒ルキアが黙ったと思うと、


 「リリ、確かに魔法を学んでいいとは言ったけれども魔法学校に行くかどうかは別の話よ?」


 そういうとリリは少し混乱しているようだ。


 「え、じゃあどうすれば......」


 リリがそういうと、


 「私が教えるわ」


 ルキアはそうきっぱりと答えた。


 「第一その実力で学校に通おうなんて思っているのなら考えが甘いわ。学校に通う子達は元々魔法の才があったり、親戚とかから魔法をすでに教わっている人ばかりなの。今のリリじゃ入学はおろか門前払いでしょうね」


 ルキアにそう言われてリリは肩を落とした。


 「でも安心なさい。こう見えて私は元王宮魔導士なんですからね」


  みよは少し残念そうにしているリリを見て恐る恐るルキアに提言する。


 「あの......もしリリの魔法がもっと上手くなれば学校に通わせる事も考えてあげてくれませんか」


 そういうとルキアは


 「.....どうかしらね、リリの努力次第ってところかしら、でも少なくとももっと自分の魔法を理解して、コントロールできるようになるまではダメね」


 それを聞くとリリの顔がパーっと明るくなる。


 「じ、じゃあ魔法が上手くなったら学校行ってもいいの?!」


 リリがそう尋ねるとルキアはやれやれという様子で、


 「はいはい、わかったわ。ちゃんと上手くなったらね。でも我が娘と言えど私は容赦しないわよ? 着いてこれるかしら?」


 リリは元気よく頷いた。


 「それじゃあさっきも言ったけど今から特訓を始めるわよ。準備はいいわよね?」


 「はい!」


 リリがそう言うとルキアはリリを引き連れて特訓を始めようとしていた。ルキアはふと気がついたように向き直りみよ達にも声をかける。


 「今日はもう遅くなってしまったからよかったら泊まっていくと良いわ。リリと私は日が落ちる頃には戻るから部屋は好きに使ってちょうだい」


 「じゃあお言葉に甘えて泊まっていっちゃう?」


 みよがマリーにそう語りかけると、


 「そうね! それがいいと思うわ!」


 と答えた。


 「泊まる場所には困っていたからちょうど良かったわね」


 とシエルも快諾してくれた。


 「大きなお屋敷にお泊まり、楽しみなのです!」


 みいもルンルンしている。


 「それじゃあ行こっか」


 とみよが言うとマリーはみよの手を握ってご満悦のようだ。


 屋敷に入る前に少し振り返ると、リリもそれに気づいたようでみよ達の方に向かって大きく手を振っている。すると、何やらルキアがリリに注意したようだったが、リリは絶えず笑っていた。


 ガチャリ、と大きな扉を開くと二度目なはずなのになんだか新鮮な景色が広がっていた。初めに入った時は緊張していて周りを見る余裕はなかったがやはり相当広いお屋敷みたいだ。


 「えっと、自由に使っていいって言われたけど全然わかんないや」


 そうみよが困っていると、みいが広い場所でテンションが上がったのか軽快に走り出していってしまった。


 「さっそく探検ね! みよも早くいきましょ!」


 マリーはそう言いながら微笑むと、みよの手を引きながらまだ見ぬ屋敷の奥へと向かった。


 



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