第22話 無自覚から自覚へ

 沢渡の突然の告白の後、どうしたらいいのかわからないままいつも降りてる駅に着く。

 呆然としながら歩き出し、少し落ち着いてから沢渡に聞いた。


「さ、沢渡……。 さっきのは一体?」

「頑張って言ったのに。また……言わせるの?」

「あ、いや……すまない。ちょっとビックリしてな……」


 そんな事を言いながら俺の袖を掴むと、沢渡は真っ赤になった顔で俺を上目遣いで見上げてくる。

 そして目と目が合った瞬間、自分の顔が一気に熱くなるのがわかった。

 告白をされたっていう実感が今になって頭を駆け巡る。一体いつから? 俺のどこを? さっぱりわからない。


「ごめんね? ホントはさっき言うつもりは無かったの。でも、あんなふうにくっついちゃったらもうドキドキするのとまらなくなったの。そしたら我慢出来なくなっちゃって……」

「そ、そうか……。いや、まさかそんな風には想ってくれてるたなんて想像もしてなくてさ……」

「ふふっ、きっとそうだと思ってた。八代君鈍感なんだもん。あのね? 昨日八代君が話してたラブレターの事覚えてる? 実はあれ、私が友達に頼んで渡してもらったんだぁ。試合で見かけた八代君に一目惚れして、それからずっと片想いしてたの。高校入った時に八代君を見付けた時はホントに泣きそうな程嬉しかったな。それから段々話すようになってもっと好きになっていったの。だけど中々勇気が出なくていたら、一宮さんが八代君の前に現れたでしょ? だからこのままじゃダメだと思って……」


 驚いた。もしかしたら告白よりもびっくりしたかもしれない。ラブレターの話もそうだけど、そんな前から俺の事を想ってくれていたってことにだ。


「あれ、沢渡からだったのか……。気付かなくて悪いことしたな……。そうか、その頃から……か。でも、一宮が何の関係があるんだ? そこだけわからないだけど?」

「ん~ん、謝らなくてもいいよ? 私も気付かれないようにしてたのもあるし……。一宮さんの事は……それはナイショ♪」


 凄いな。ホントに気づかなかった。

 そしてナイショなのか。まぁ、それはいい。問題はこの沢渡からの告白の返事だ。


「そうか。それで返事なんだけど……放課後まで待ってもらってもいいか? 少し頭を整理したくてさ」

「うん、大丈夫だよ。急がなくてもいいよ?」


 そういう訳にもいかないだろ……。


 それから一日中、頭の中はその事ばっかりになった。昨日の戦闘のせいで機体を使った訓練が延期になったのはホントに助かった。

 この状態で乗ってたら加減が出来なかったかもしれない。

 何をしていても視界のどこかに沢渡がいる。

 いや、違うな。探して視界の中に入れてしまう俺がいる。

 昼休み中なんかは、相槌くらいしか打つ事が出来なかった。


 ホント……どうすりゃいいんだ……。

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