第3章 夜の仕事と不動産

031 夜の仕事、俺はもちろん風俗は未体験

『おはよう、りんごくん。24時間あなたを監視しているからね? 今日も愛してるよ』


 毎朝恒例の充子からのLINEだ。俺の部屋には、監視カメラがセットされた。普通に考えたら重い女だが、事情が事情だから仕方ない。


「ふぁ〜、眠い……。おはよう、りんご……。喉が渇いたわね。ストゼロでも開けよ」


 充子と付き合って1ヶ月以上は経過した。とある問題を除けば、至って健全なカップルとして日々を過ごしている。


 その問題とは、さくもの存在だ ——


 さくもが、まだアパートを借りるお金が貯まっていない為、俺とのルームシェアが未だに続いてしまっているのだ。意外にも充子は、部屋に監視カメラを付けることを条件にルームシェアを許可した。


 本当はそれでも不安だから、充子自身がさくもを管理したいらしいのだが、生憎実家暮らしの充子には、さくもを家に招くには負担があるようだ。


 ただ、このルームシェアも間も無く終わりを迎えそうである。


 さくもがバイト代をしっかり稼ぎ、アパートを借りれる目処が付いたのだ。


「ぷはぁ〜! やっぱり朝一のストゼロは最高だな! この朝からアルコールを摂取する罪悪感も癖になるぜ!」


 さくもは、早速恒例のストゼロタイムだ。


「珍しいな、さくも」


「お、何がや?」


「バイトが休みって」


「店のオーナーからな、働き過ぎだからたまには休めって言われてな!」


「そうなんだ」


 さくもは、夜中の3時ぐらいにバイトに出掛ける。だから平日は、夜9時前には就寝する。これがまた、充子がギリギリさくもとのルームシェアを許可してくれた理由でもある。一夜の過ちを犯すリスクがちょっとでも減るからとのことだ。


 ほぼ毎日、さくもはアルバイトだ。


 ただ仕事の内容は何故か教えてくれない。ヒントは、以前温泉に行った際の発言。


 バイトで指先のトレーニングをしている ——


 テクニシャン目指している ——


 お客さんに上手いと言われる ——


 それに加えて、夜の仕事であり、僅か2ヶ月でお金が十分貯まる程の高収入。


 間違いない、さくもは体を売っているんだ!


 俺は薄々勘付いていた。


「生活安定したら、他のアルバイトだって世の中には沢山あるんだから、ちゃんと考えろよ?」


「でも、結構あたし重宝されているんだぜ!? リピーター増えたってオーナーが言ってたしな! ハッハッハ!」


 ちょっと、さくものことが心配である。


「あ! それより今日、不動産屋さん行くからさ、放課後ついて来てくれねぇか!? もちろん、充子ちゃんも一緒にな! それならギリギリセーフだろ!?」


 まあいいか。さくもの家が見つかるとなれば、充子だって喜んでついて来てくれるだろう。この生活にも、早いところ区切りをつけよう。


 虫かごの中のノアは、今日もニョロニョロマイペースに生きていた。

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