028 まさかのBL、俺はケツを守らねば

 ◆◇◆



 あれ、もう夜か?


 いつ寝たっけな……。


 部屋は真っ暗 ——


 夕飯時からの記憶が無い。確か、みんなでストゼロを浴びるように飲みまくっていたのは微かにだが覚えている。どうやら、酔っ払って眠ってしまっていたみたいだ。


 だけど、一応布団の上である。


 ちょっと離れた所では、充子とさくもが重なるように眠っている。


 ここで、俺はある異変に気が付いた。具体的に言えば、体が寒い。まるで服を着ていないみたいに……。股間もスースーする。あ……パンツが脱がされている。俺はつまり、全裸だ。


「ほ?」


 俺は意味不明な状況に、驚いて体を起こした。


「有江くん、やっと起きたんだね……」


 背後に、亜房先生が座っていた。


「え!? え!? 亜房先生!? 俺、何で裸なの!?」


「有江くん、念の為、静かにして……。充子ちゃんと、さくもちゃんは、夕飯の時に睡眠薬を混ぜて眠らせたんだ。多分、朝まで起きないよ……」


 普通に犯罪である。でも一体、どうしてこんなことを……。


「ボクはね、数年前まで、ずっと『受け』として生きていたんだ。男性からも、女性からも可愛いと言われ続けた……。でもね、ボクはそんな自分を変えたくて、保健室の先生として新たな人生を歩むことにしたんだ……。『総受けの亜房』から、『攻めの亜房』としてね……」


 亜房先生が『受け』だって? あんなにも大人の魅力で迫ってくる亜房先生が受けだなんて、俄かに信じ難いことだ。


「それにね、どうしても伝えないといけないことがあってね……。実はボク……女性じゃなくて、正真正銘の男なんだよ……」


「ほ……?」


「男性も女性も落とすには、このキャラを演じるのが一番都合が良かったんだ。騙すつもりはなかったんだけどね。有江くん、ごめんね……」


「でも、亜房先生! 俺、いくらなんでも信じられないぜ……!」


「じゃあ、君の目で確かめてみるんだ」


 亜房先生はそう言うと、浴衣を一気に脱ぎ捨てた。初めて露わになる亜房先生の綺麗な体。綺麗な体だけど、おっぱいは本当に無い。ずっと、亜房先生は究極の貧乳だと思っていた。


「下も見ないと、納得出来ないかい?」


 亜房先生は、ゆっくり立ち上がり、パンツまでをも脱ごうとする。


「あ、亜房先生! 大丈夫……! 俺、先生が男だって信じるよ!」


 俺は、亜房先生の下半身が卍解するのは阻止した。シルエットは細いし、色白だけど、やっぱりおっぱいが男性だ。貧乳を極めた俺が間違える訳がない。信じる他なかった。


「信じてくれてありがとう、有江くん……。でね、ボクからもう一つお願いがあるんだけど訊いてくれるかな?」


「な……何だよ? 言ってくれ……」


 俺は、ちょっと怖かったけど尋ねてみた。


「せっかく二人は眠っているんだ。ボクは、相手が男であろうと、『攻め』に回れることを証明してみせる……」


 亜房先生は、布団の上で正座していた俺を正面から押し倒した。

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