春分桜始開の頃から始める創作生活

美木間

第164話 包んでくるんで葉っぱごはん

 春の野遊びでは、やわらかく青若い摘み草を楽しみおひたしにして味わいました。

 晩春から初夏へ移ろう頃、今度は、草木の葉で包むくるむ楽しみが訪れます。

 包む、くるむ葉のベスト3といえば、ほおの葉、ふきの葉、ささの葉でしょうか。


 包みもの、くるみものとしてすぐに思い浮かぶ葉もの、ぱっと思い浮かぶのは、ふきの葉です。

 大ぶりで、やわらかくて、バンダナのように広げて、中心にごはんを広げて、梅干や佃煮を埋めて、そのままきゅっと茶巾のように葉をまとめて、きゅっと稲わらで結べば、その辺にひょいっと置いておいても、土もつかずにおいておけます。

 食べる時も、葉ごと持てば、指にごはんつぶがつかずにいただけます。最も、葉っぱには多少つくので、ふきの葉の香りをかぎながら、ごはん粒をつまんでいただくことにはなりますが。


 折り紙に切り込みを入れて組み合わせて作るハートがあります。

 それを応用して、ラッピングにするというのを野辺遊び食の本で見かけました。

 折り紙のように扱うには、厚みがあったり固い葉ではいけません。

 すぐにぱりんっ、と割れて、折りたたむことも包むこともできないからです。

 ハート折りには、笹の葉を使います。

 ほかほかの蒸しパンを入れると、笹の香りが移って、ほんわかおやつが出来上がり、です。

 

 さて、久しぶりに奥越ものを更新しました。

 山里の葉っぱごはんの話です。

 昔話に出てくるようなひょうきん者が、ちらっと登場します。

 怖くも怪しくもありませんが、トリックスター的な人物というのは、フィクションでもノンフィクションでも、物語の展開に欠かせませんね。


『奥越奇譚拾遺』

「はっぱみそ」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884526082/episodes/16816452219884337942


 作中に、「まま」という葉っぱごはんが出てきます。秋田県由利本荘市の郷土料理です。ほおのきの葉を使うので、ほおの葉ままとも言うそうです。「まま」は「まんま」でごはんのことです。「ままかり」という岡山の郷土料理もありますね。

 ごはんにきなこをまぶして食べるというのが、初めて聞いた時は、どうなんだろうかと思ったのですが、きなこのおはぎが美味しいというのを思い出して、それにほおのきの葉の香りが移ったのを山の空気と一緒に口に入れたら、さぞや味わい深いものになるだろうと思い至りました。


 長野北信地区の郷土料理に、笹の葉っぱをお皿に見立てて、すし飯と山菜などの具材をのっけた笹寿司があります。戦国武将の上杉謙信が戦場に携帯して食べたということから、飯山では謙信寿司とも言うそうです。以前長野の知人にごちそうになったのですが、山菜、くるみ、錦糸卵、紅しょうの組み合わせがさっぱりしていて、とても美味しかったです。ついつい手が伸びてしまいました。


 穴馬は笹も沢山生えているので、そうした笹の葉っぱごはんはあるかと思っていたのですが、父の記憶では、笹だんごはあってもごはんは包まなかったそうです。

 葉っぱものでは、ふきの葉とほおの葉をよく利用していたとのこと。とくにふきの葉は、山の中で布や紙の代わりに重宝したとのことです。



 では、皆さま、今日はこの辺で。








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