第6話 こじらせ騎士は傭兵を雇った!



 ヘタレの背は高い。

 ガタイの良い騎士連中の中でも頭一つ高く、同じぐらいの身長はといえば熊男団長や仲間の巌男あたりがせいぜいだ。同じく仲間のヒョロ男はチョイ身長が足りない。まぁ、そやつでも一般から見れば長身なのであろうが。


 そんなノッポ集団であるから、王都の人込みの中でもよく目立つ。その中で最も街の人々に声をかけられているのはヒョロ男だ。ムサい騎士共の中では珍しい優男で、髪も常に整えているから熟女から小娘まで様々なレディに声をかけられている。ヘタレもよく見れば無駄に整った顔立ちをしているのであるが、こやつの場合、ヒョロ男と違って髪も髭もボサボサであるからな……我輩的には獅子のたてがみのようで好ましいであるが、人間のレディにはさほど好意的に映るまい。ヘタレよ、おぬしはもう少し身だしなみをキチンとするべきであるぞ!


「リック! 今日はなんだって騎士様達が街中にいっぱいいるんだい?」

「任務ッスよ。詳しいことは秘密ッス」

「おう! リック! 今日は酒場に来るのか?」

「仕事終わったら行きたいッスねぇ!」

「リック~。最近つれないじゃん? そろそろアタシ達ン所に遊びに来ない~?」

「いいッスね~。仕事が無けりゃ是非行きたいッスよ~。面白い話とかあるッスかね~?」

「さぁ~? お代次第かしらぁ?」


 なにやら秋波めいたものを受けつつ楽し気に話しているヒョロ男を、ヘタレと巌男は注意もせずに放置している。仕事中に良いのであるかなー?

 うん? なにやらキラッと光るものをやり取りしおったな? 賄賂であるかなー?


「じゃあ、また休みの日にねぇ~?」

「またッス~!」


 笑顔で別れた魅惑のバディが人込みに消え、ニコニコ笑顔のヒョロ男がゴミのようなものを巌男に渡した。……む? ヘタレが微妙に位置取りをしておるな? 仲間の動きを隠しているであるか? 何の遊びであるかな?


「……団長に報告しに行かねばならんな」


 巌男がボソリと呟き、三人は揃って道を引き返しはじめた。おんや~?

 途中で何人か三人一組で動く騎士を見かけたが、それぞれ地元民らしき人間や旅人らしい人間と世間話に興じておる。なかには薄汚れた子供二人に何か言い含めている者もいた。なかなか平和的な見回りであるな。


「お? 早かったじゃねーか。どした?」


 ヘタレの頭上で人間観察をしていたら熊男の声が聞こえた。

 ほぉん? 騎士団の宿舎にいるのかと思っていたら、熊男も外に出て来ていたのであるか。まぁ、ねぐらに近い故、報告を受けに出て来ていたのであろうな。周りに他の騎士もおることだし。


「ちょっと気になる情報が」


 巌男がそう言って手に持っていたゴミのようなものを熊男に渡す。どうやら細かく折りたたんだボロい布切れのようだ。おお、文字が……いや、うん? 文字? が、書かれておるな? 随分と汚い文字であるが……


「……チッ! あの馬鹿騎士共の馬鹿親共が」

「団長……何があったんですか?」

「王宮の舞踏会にあわせて、第一騎士団の馬鹿親連中が来る手筈になっていたらしい。第二騎士団の親連中とは派閥が違うからな。発言力を強めようと狙っていたようだ」

「あー……だから『人狩り』がわざわざ領地から出て来てたのか」

「王都に着いてすぐに娼館で羽を伸ばすたぁ、ご領主様方の護衛騎士はイイご身分だぜ」

「まぁ、その分情報が巡りやすいんだけどな」

「俺等もあやかりてぇよな。な、リック」

「まったくッスよ」


 小声で話し合う熊男とその周辺の騎士達に、ヒョロ男が苦笑している。


「リック。今回は何処だ?」

「白鳩っスね。ただ、白魚や若鹿の所にも来てるんじゃないッスかね?」

「あー、非番連中に声かけるとすっか……」

「俺! 俺が行きます!」

「俺も!」

「おめぇらは明日も仕事だろうが!」


 なにやら騎士共が目の色を変えて立候補しはじめたが、熊男に却下されてすさまじいブーイングをしはじめた。……何であるかなー?


「いいか、おめぇら。馬鹿親連中が来る手筈になってたってことは、第一の暴走がより激化する可能性が高いってこった。すでに犠牲者が一人出てるんだ、報復すべし! っつーて同じ派閥の親連中が手勢を率いて暴れる可能性も出て来た。……クソ、ただでさえ人手がいる時期に手間増やしやがって……!」

「領地から連れて来た手勢で騒ぎ起こされたらたまんないッスね~」

「貴族等の護衛は第一と第二が担当だからな。連中が睨み合って抑えあえばいいんだが……隙間からこぼれた馬鹿が騒動を起こす可能性がある。傭兵組合にも一応は声をかけておいたが……さらに忠告しておくべきだな。――ガゼル」


 熊男の声に、巌男が頷いた。熊男は自分の嵌めていた腕輪を一つ巌男に渡す。


「俺の代理の証だ。組合長に今手に入れた情報を流せ。リットとアンゼルムも……いや、アンゼルムはまぁ護衛として連れて行くことにしておいて……リット、交渉が発生したら頼むぞ」


 ……ヘタレ、速攻で戦力外通知をくらっておる……

 まぁ、交渉だのなんだのという脳みそを使う仕事が出来るヘタレでは無いからな。適材適所というやつであるな。

 しかし、傭兵組合とは何であろうか? 別の世界では傭兵は団単位で活動する戦争屋であったのだが、この世界では違うのであろうか?

 まぁ、ヘタレにくっついていれば実物を目に出来るようだし、我輩の美しい目でそやつらを見てやろうではないか。ふすん。





 ※ ※ ※





 傭兵組合とやらは、王都を囲う一番外側の壁の出入り口付近にあった。城を囲う城壁を一重目、その次の壁を二重目、とした時、三番目の壁である。人間の都市国家はよく分からぬであるが、あれかな? 城郭都市というやつであるかなー?


「おぅ、ガゼルじゃねーか。騎士様が三人も来るとは珍しい」


 建物に入ってすぐ奥のカウンターから声がかけられた。巌男と同じぐらいムキムキの筋肉男が軽く手をあげている。巌男との違いは、その身なりぐらいであろう。筋肉男はくたびれた厚手の布服に革の鎧を着こんでおり、見回せば周囲の連中も同じような身なりだった。金属甲冑を着たヘタレ達が異様に浮いている。


「長はいるか? うちの団長から言伝があるんだが」


 巌男が腕輪を見せながら言うと、筋肉男は太い眉を跳ね上げた。


「……案内しよう。おう! てめぇら、後は頼んだぜ」

「へい!」


 乱暴にカウンターの奥に声をかけ、返事を背に巌男達を引き連れて右脇の扉の中に入る。廊下を挟んでさらに奥の部屋に入ると階段があった。長とやらはこの上にいるらしい。

 ……それにしても、おかしな造りの家屋であるな? あの間に挟んだ部屋に何の意味があるのであろうか? 通って来た部屋の近くに潜んでいた人間達の存在も謎である。まぁ、我輩としては、この屋敷中に漂う怨念を食べさせてもらったから他のことはどうでも良いであるが。

 そうして案内された二階の奥部屋には、一際デカイ大男がいた。


「おう。おめぇらか。わざわざ手練れを送ってきたってことは、厄介事だな?」


 断定で問う大男に、巌男は頷く。

 部屋には大男以外にも三人の男がいた。一人は屈強そうな男だが、あとの二人はヒョロ男より細いうえに小柄だ。フードつきの外套で分かりにくいが、老爺と子供だろう。何故か我輩を見つめて口をパカーンと開けている。惚れたであるかな~?


「王宮で舞踏会が開かれるのは知っているな?」


 単刀直入に言った巌男の声に、大男は頷いた。

 巌男はそれを確認して告げる。


「それにかこつけて、第一騎士団に所属する連中の親や親族が大勢来ているらしい。目的は勢力増強だ」

「……例年以上に馬車が多いと思ったら、そういうことか……」


 大男は唸り、ガシガシと頭を掻いた。


「派閥争いの激化は免れねぇな……いや、待てよ? 確か貧民街でお偉いさんが討たれたって噂があったな? 嘘か本当かサトゥルノ侯爵とか?」

「――これ以上は機密事項にあたる」

「おーっけー。契約すっか」


 大男の声に、屈強そうな男が素早く羊皮紙っぽいものを大男の前に置いた。


「依頼主は誰にする?」

「うちの団長だと金の支払いが大変だな」

「ぶははは! あいつの財布を空にしてやんよ! ……まぁ、ツケでもかまわねーぜ? どうせ支払いは陛下だろ」

「そうしてくれると助かるな」


 ほぉん? 機密事項を喋る前に契約をするのであるか。雇用契約であるかな?

 我輩が知る別の世界の傭兵同様、依頼主の情報は漏らさない、という掟があるのであろうか。

 それとも我輩がよく知る類の契約であろうか? 守らないと死ぬ的な?


「うーっし。ベルクライス第四騎士団長殿が依頼主だ。ひっひ。ケツの毛まで毟ってやるぜ!」

「契約はここにいる四人な」

「しけたこと言うんじゃねーよ」

「本来なら先の言伝だけで要件は終わりだ」

「さいで。んじゃまぁ、俺と爺さんと坊主とレアンドロな。坊主以外は一日金貨一枚。坊主は銀貨五百枚だな」


 この世界の傭兵は日当であるらしい。一日金貨一枚というのがどれほどの額なのか分からぬが、我輩が知っていた別の世界での価値を考えればかなりの一流どころであろう。まぁ、我輩のようなエライ悪魔相手では、こやつらであっても掠り傷も負わせられぬがな!


「さーって、これで晴れてそちらは依頼主様だ。んで、俺等傭兵に何を望む?」

「ここ最近王都に来た手練れの情報が知りたい」

「下手人探しか。……舞踏会じゃなく武闘会だってんなら手練れが集まりすぎて把握も難しいが、今の時期だからな……俺が知っているところだと三人だ。ゲルニディ公爵の護衛として『双剣』のトビア。オリアーリ子爵の護衛として『剛腕』のヴァスコ。クンツェンドルフ伯爵令嬢の『剣鬼』ベルタ嬢」

「なんだって?」

「うお喋った!?」


 即座に反応したヘタレに、大男が驚いたように身をのけぞらせた。まぁ、こやつは縦に長い置物みたいなものだったから、当然の反応と言えば当然の反応であろう。

 ――というか、ベルタ嬢がなんと? 


「えーっと、雰囲気代わってるがそのボサ髪ノッポはジーケルトだよな? おめぇら、確か半年ぐれぇ前に辺境伯の所の騒動片づけてきたんだろ? その時に会わなかったか?」

「…………」

「あ、ああ、会ったが。……いや待て、あの華奢なご令嬢が?」

「うぇぇ……立派なおっぱい様なだけじゃなかったんスね――ぅひぃ!?」


 デフォルトの無言男に戻ってしまったヘタレの代わりに、巌男が確認をとろうと声をあげ、余計なことを言ったヒョロ男がヘタレの殺人眼をくらって声をひきつらせた。……ヘタレよ……


「騎士様達にゃ噂はいってねーか? 辺境伯の秘蔵っ子だよ。あそこの領地は昔っから戦続きだろ? 人間相手の戦もあるうえに魔物相手の戦いもあるから、どうしても戦いを生業にする連中が集まりやすいし、領主一家も領民も手練れが多いんだよ。うちのお得意様でもあるからな」

「ああ……それで情報が」

「まぁ、嫁入り前の娘さんのことだから、あんまし他所で言いふらすような真似はできなくてな。珍しく今回の舞踏会に出るみてぇだが……あのお姫さんは領地で婿とって家を継ぐんだと思ってたんだが、なんでまた王都の舞踏会になんぞ出る気になったんかね?」

「――と、言うと?」

「武闘会ならともかく、舞踏会で出会う優男なんぞクンツェンドルフ伯の後継にゃなれねーだろ? あそこは国の要所だからな。血筋だけの下手な馬鹿貴族の血なんぞ入れれも出来んだろ。まぁ、よっぽど金持ってて領地にとって旨味のある家の次男あたりなら考えるかもしれねぇが……いや、ねーな。伯爵が問答無用でぶった切るだろーな」

「伯爵は武人だからな」

「あのお姫さんもわりとぶっ飛んだ武人なんだがなー? ……いや、さすがに年頃になって変わったかもしれねぇが」


 首を傾げながら言う大男の言葉が正しいなら、あの小柄でおっぱいなご令嬢は相当な猛者ということになる。人間は見かけによらないであるなー?


「うう……可憐なご令嬢だと思ったのに……!」

「あの令嬢に手を出すとか、領地の騎士を叩きのめしてからじゃねーと無理だと思うぜ? 最難関は伯爵なのか本人なのか……」

「お前にそこまで言われるのは凄いな」

「俺も令嬢がちっちぇー頃に何度か手合わせさせられたからなぁ……ところで、ジーケルトはどうしたんだ?」


 見れば、ヘタレがフルフルと震えていた。どうしたヘタレ。まさか恋しいベルタ嬢が猛者だと知って夢破れたとか!?


「……手合わせ……」


 ブレない馬鹿であるなヘタレ!!

 そう言えばおぬしは剣を交えれば分かり合えると断言するような脳筋であったな! だからといって恋する令嬢との手合わせを夢見るのはどうかと思うであるぞ!


「……いや、まぁ、おめぇとお姫さんの手合わせならかなり見ごたえがありそうなんだが……伯爵家と下手に事を構えることになるかもしれねーからやめたほうが良くねーか?」

「あー。でも、あのご令嬢って、確か昨日、うちに美味しいサンドイッチ作って来てくれたんスよ。前の遠征でお世話になった礼だと言って」

「ほぉーっ!? あのお姫さんが!? へぇえええ、まさかご本人がか!?」

「ああ。確かその時にアンゼルムが手練れに襲われて昏倒させられたが」

「ジーケルトが!? マジか!?」

「団長に背中どつかれるまで息が止まっていたらしい。相当な手練れだ」

「……侯爵が討たれたことといい、きな臭いな……」


 大男が深刻そうに言うが、その犯人はどちらも我輩である。我輩、きな臭くは無いである。


「――で、最初に戻るんだが、討たれた侯爵がサトゥルノ侯爵ってのは、事実か?」

「事実だ」


 声をひそめた大男に巌男は頷く。大男は頭を抱えた。


「かーッ! 下手したら全面戦争じゃねーか! それでおめぇらが町中を見回ってたのか! ……第一騎士団の連中はどうしてる?」

「第一と第二は舞踏会に集まって来る貴族達の護衛だな。街に放つわけにはいかないと、陛下がうちの第三の連中に街を任せたんだ」

「陛下の判断に心からの感謝を。おめぇらが巡回してくれてんなら、暴走したとしても早めに発見出来るだろうしな」

「俺としては、第一の連中が動けない自分達のかわりに傭兵を雇う可能性が高いとみている。今この街にいる傭兵団の数は分かるか?」

「傭兵の仕事が多いのは辺境だからなぁ……商人との契約も多いから、王都にいる傭兵団もけっこういるが……。まず、王都に拠点を構えてる『ヴィボルノヴァ』『ガラノフ』は、主要な連中が護衛任務で出ているから、残っているのは少数だ。南に遠征していた『クロムシキナ』と『マスタフォフ』はついこの前に帰って来たばかりのはずだが、金を積まれれば依頼を受けるだろう。『スィスエフ』は今頃辺境でドンパチやってるはずだぜ」

「お前達『アガフォノス』を含めて、動けるの大御所は三部隊か……」

「今挙げたのは有名所だけだ。少人数の傭兵団ならもっといるぜ? 辺境ほどじゃねーが、ここいらにも魔物は出るし、街から街への護衛任務はちょくちょく頼まれるからな。それに、留守番連中だって、王都内での人探し程度なら小遣い稼ぎに引き受ける可能性は高い。傭兵なんてのは皆、金に汚ねーんだからよ」


 ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる大男に、巌男は苦笑した。


「問題は、汚い金を積み上げる依頼人側だと思うがな」

「まーな! 俺等だって好んで汚れ仕事をしたいわけじゃねぇ。だが、依頼を受ければ綺麗ごとなんざ言ってられねぇ。依頼第一だ。んで、どうする? 組合としては、傭兵達が誰の依頼を受けようが、受けた連中の責任であってこっちがとやかく言うこたぁねぇ。流石の騎士団様も、組合に所属してる全傭兵団を雇うことは出来ねーだろ?」

「無理だな。『アガフォノス』としてはどうだ?」

「今のところ、うちは四人しか雇われてねーからなぁ。他の連中に声がかかったらそっちは別働で動くかもしれねーぜ?」

「勇猛で知られる『アガフォノス』が無辜の民を害するとは思えないが?」

「相手が無辜の民かどうかは分かんねーな。コソコソする余所者相手に武力行使する可能性は否定できねーわな?」

「ほぅ……? そうなると、巡回してるうちの団員と揉める可能性が高いな?」

「おめーらが出て来るまでトロトロしてるほどうちの団員はノロマじゃねーぜ? まぁ、それは他の傭兵団にも言えることだ。おめーらは強いが、真正直に戦うタイプだろ? 表ばかり見てる間に、裏で酷い目にあう連中が出る可能性は否定できねぇよな? 俺等だったら、そっちをカバーできる。手を組むのが一番だと思うぜ?」

「そのためにも雇え、と?」

「そういうこった。俺等も金を稼がないといけねぇからな。仕事が無い時に誘われれば、俺等だって金払いのいい依頼主につく。ここにいる四人が雇われたからって、他の団員に仕事を受けるなとは言えねぇ。団員にだって生活があるからな?――んぉ?」


 ヘタレが大男の前の机に置いた布袋が、ゴジャッ、と音をたてた。勢い、全員の視線がそこへ向かう。片手サイズの布袋だったが、中を覗いた大男が顔を綻ばせた。

 

「金貨じゃねーか!」

「アンゼルム!」

「ちょ!? なにやってんスか!?」

「手付金」


 ボソリと呟いたヘタレに、大男がバシバシ膝を叩いて大笑いする。


「はっはー! あのジーケルトが俺等を雇うのを支持してくれてるぞ! どうするよ!? 俺としちゃあ、これだけで優先権をおめぇらの団長にしていいと思うぜ!」

「……持ち帰って検討する」

「おう! 返事は出来るだけ早くしてくれよ!」


 ゲラゲラ笑いながら手を振る大男に、巌男達は軽く挨拶して部屋を出た。老爺と子供が未だに我輩に注目しているのが照れるであるが、我輩、男に興味は無いので去るである。さらばである!




  ※ ※ ※




 話を持ち帰られた熊男は、ヘタレを呆れ顔で見やってからため息をついた。


「なんで契約なんつー話になってんだよ。まぁ、手段としちゃ間違ってねーけどよ……」


 ぼやきながらも色々手続きをしていたから、雇う方向で動くのであろう。

 あの屋敷も傭兵連中も、騎士団の時と同様に怨念塗れだったから我輩としてはいいオヤツであった。次に会った時にオヤツが復活していることを祈ろう。

 なお、ヘタレ達が傭兵組合に行っている間にベルタ嬢の使いが来てまたサンドイッチを差し入れしてくれたらしい。もちろん、不在の間にサンドイッチは欠食騎士共の胃袋に消えていた。ヘタレが不憫すぎて我輩涙が出そうである。

 明日は食べられると良いであるなー?




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