第29話 答え合わせ②

「答え合わせだ?どういうことだ?」


 俺以外のクラスメイトがいきなりの千歳の発言に困惑する中、松田が千歳に聞き返す。


「だから、今回の盗難事件?とか言われてるやつの答え合わせですよー」


 千歳のやつ、ここでやるつもりなのか!?


「な!?川澄!犯人が分かったのか?」

「せっかくですし、教室にでも移動しましょうかー、ここでは通行人の迷惑になってしまいますよー」


 しかしそれに待ったをかけたのが小山田だ。


「ちょっと待ってくれ。川澄さん、なんで君は俺たちのクラスの盗難事件を知っているんだ?」

「先輩から聞いたからですよー。そもそもおかしいと思わないんですかー?誰が犯人かも分かってないのに、クラスメイト全員で遊ぶって、正気の沙汰とは思えませんねー」


 言われてみればその通りだ。俺が犯人ではないと分かってもらったとは言え、俺以外の誰か、ここにいるクラスメイトの中に犯人はいるってことだ。それなのに、クラスメイト全員で和気藹々と遊びに行こうとしてるなんて、どうかしている。

 クラスメイトも、「確かに…」「犯人がこの中にいるんだよね…」と話し合っている。


「ってことで、僕がちゃちゃっと解決しようというわけです」

「だ、だけどよお!なんでお前が犯人を知っているんだよ!部外者じゃねえか!」


 そう声を上げたのは田中だ。それに続いて他のクラスメイトも賛同の声を上げる。


「はぁ…まったく。愚かですねぇ。まあいいです。田中、でしたっけ?あなたは姉からもらったキーホルダーを盗られたんですよねー?」

「な!?なんでそれを!」

「まあ細かいことはいいじゃないですかー。それで、どうします?僕の話し、聞いていきますよね?」

「ああ。確かに赤坂が犯人じゃないことが分かっても、犯人が誰かは全く分かってない。少しでも有益な情報が聞けるなら俺は聞いた方がいいと思う。少し話し合ってもいいか?」

「ええ、どうぞ」


 小山田達はクラスメイトと話し合っている。俺も加わった方がいいのか悩んでいると


「先輩」


 千歳が声をかけてきた。


「なんだ?てか、いきなり何しようとしてるんだよ」

「いやー、このまま遊びに行かせるのもどうかと思いましてー。それに、先輩達に何かされても嫌ですしー」

「じゃあやっぱり、この中に犯人は…」

「犯人…ですか…。まあ、そうですね」


 なんか千歳にしては歯切れが悪いな。そうおもっていると


「分かった。とにかく話しを聞こう」

「それじゃ教室にでも行きましょうー」


 とやけに素直に千歳は歩き出す。俺たちもそれに続き、すぐに教室に着いた。千歳は教室に入ると周囲を色々見て回っている。俺たちは自然と自分達の席に座った。


「ね、ねぇ赤坂君」

「吉崎さん?どうしたの?」

「この後、少し…いいかな?」

「分かった」


 吉崎さんが今さら俺に何のようだろう?そう考えていると、いつのまにか教壇に登った千歳が仕切り出した。


「さて、まず整理していきましょー。少し前からいきなりみなさんのものがなくなったんですよねー?」


 千歳の問いに答えたのはクラスの代表の小山田と周防さんだ。


「あ、ああ。ジャンルも問わず、何が目当てかもさっぱり分からん」

「財布、服、ペン、体操着、ノート…色々盗まれてますね」

「ふむふむ、それで、赤坂先輩が疑われたのは、加藤さんの体操着がなくなったから、でしたよね?」


 困惑していたクラスメイト達も徐々に復活したようで


「そうだな。それで先生にタレ込んだやつがいて赤坂が犯人ってなったんだったよな」

「あれ?そしたらタレ込んだやつが赤坂に罪をなすりつけるためにやった、ということかい?」

「おい麻生!それだ!」


 確かにそれなら筋は通る…と考えていると


「ちょっと待ってくれるかな?」


 と吉崎さんが立ち上がった。みんな何事かと吉崎さんを見ると


「タレ込みをしたのは私なの」


 と、みんなに向けて切り出した。


「な、なんで吉崎さんが…?」

「赤坂君、事前に相談するつもりだったんだけど、ごめんなさい!先生が赤坂君を犯人だって言ったときのみんなの反応から犯人を探そうと思ったの」


 なるほど…?


「今回盗まれたものに規則性がない以上、複数犯かクラス仲を割く、もしくは誰かを追い詰めるためにやってることかなって思って、そしたらいずれ誰かに濡れ衣を着せるだろうと思って…」

「それで想定外のことが起きたらその犯人は動揺する、そんなところですかねー?」


 そうか、自分のプランがバレてる、利用されてるとか思えば焦るもんな。


「ええ、それで今回狙われてるのは赤坂君だと思ったの。だから赤坂君を犯人に仕立て上げて、相手の出方を探ろうと…」

「いや待てよ。なんで狙いが赤坂なんだ?赤坂がなんかしたのか?」


 当然の疑問を松田が投げかけた。俺は何も恨みを買われることはしてないぞ?


「それは…」

「先輩が呪われてるからですか?2年前と同じ、とでも思ってるんですかねー?」

「なっ…なんで…」

「分からないとでも思ったんですかー?愚かですねぇ…」


 俺が呪われてる?どういうことだ???松田の方を見ても、松田も初耳なのか頭の上に疑問符を浮かべている。クラスメイト達も何言ってるんだといった所だろうか。


「俺が呪われてるってどういう…」

「それはあとで家で話しましょうかー。まあ、吉崎さんがどうしたかはどうでもいいんですよー。そもそも、この事件、盗難なんてほとんど起きてないんですから」


 …は?



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