第14話 体育大会 ③(優花編)

 3月に入り体育大会。私はバドミントンをやることになった。ののはもバドミントンだ。


「優花、バドミントンやるの?じゃあ私もー。頑張ろうね!」


 こんな感じだ。本当にいい子だと思う。


 そんなことより、私には気がかりなことがある。

 そう、ホワイトデーだ。

 バレンタインデーの時、恥ずかしくて頭がぐるぐるした挙句、あんなことになってから、私は幸せな日々を送ってきた。それは断言出来る。


 でも航平君は?

 私と付き合うの嫌だったりするのかな?特に最近は航平君に元気がないのだ。

 もしかしたら私と同じ悩みかもしれない。それなら私としては嬉しい。でも


 もし航平君に嫌われていたら?

 そう思うと航平君に関わりにくくなる。その結果最近ぎこちなかなってる気がする。


 やっぱり、あれがいけなかったのかな…

 私は少し前を思い出してため息をついた。




 そう。それは体育で航平君が大活躍した日の夜だった。

 航平君の思わぬカッコいい姿を見れて上機嫌のまま家に帰る。


「あ!お姉ちゃんお帰り!」

「ただいま真依〜」


 真依は私の妹だ。


「あれ?お姉ちゃん?なんかいいことあった?もしかして…」

「なによ。別になんにもないわよ」

「ふーん。彼氏出来たのはなんとなく気づいてたけど、他になんかあるかと思ったけど気のせいかー」


 よかった誤魔化せて…って待って!?


「ちょっと真依!?お姉ちゃんに彼氏が出来たこと知ってたの!?」

「あ、やっぱり?いつからっ?」


 …カマをかけられたみたいだ…自ら墓穴を掘ることになるなんて…掘った墓穴が目の前にあるなら入りたい…


「バレンタインデーからよ」

「んー?バレンタインデーからねぇ…んで、いつまで?」

「ホワイトデーまで…って、なんでそのことも!?」

「だってお姉ちゃん、私の部屋にあった小説急に借りて読んでたじゃん。その中に似たようなあったからもしかして〜と思ったけど、マジ?」


 …なんでバレてるの〜!?恥ずかしすぎる…


「それでそれで!なーに悩んでるのさぁ。話してみなよぉ」


 …ここまで知られていては隠す理由もないので、私は妹に全てを話すことにした。


「…ってことは、お姉ちゃんは告白したくても恥ずかしくて出来なくて、本に書いてあったまっわりくどいやり方で告白して、ホワイトデーが近くなってきたから、ぐいぐい推していったけど、嫌がられてる気がする、と」

「…そうよ。向こうが私のこと好きかも分かんないし…」

「お姉ちゃん、男はエロに目がないんだよ?エッチなことすればイチコロじゃない?」

「なっ…!エッチなことなんて…出来るわけないでしょ!?」

「えー、じゃあキスはしたの?」


 …いつから妹はこんな子に育ってしまったんだろう。何がいけなかったのだろうか?


「その反応を見る限りしてないのね。まあお姉ちゃん奥手だし仕方ないか。胸押し付けたり、腕組んだりはしたの?」

「そ、それは…した…けど…」

「反応が芳しくなかったと?」

「うん」

「それは、我慢してる証拠だよ!思わず押し倒したくなる…ような衝動と戦ってるんだよ!意識してるってことだから!」


 そ、そういうことなのかな…


「じゃ、じゃあ続けた方がいいってこと?」

「うーん、そのまま続けるのもアリだし、あえてやめることでモヤモヤさせるのもいいんじゃない?ただし避けすぎない範囲で」

「じゃあ一回やめちゃった私はしばらく適度な距離でいればいいってこと?」

「そうだね。たまーに抱きついてあげたりすればいいんじゃない?」


 妹が親身になってアドバイスしてくれたことだ。しっかり実践してしてみよう。


「そういえば、真依は彼氏いるの?」

「え?私?いるよ」


 真依にも彼氏が…なんだろうこの気持ちは…真依も大きくなったなぁ…


「そんな孫を見るおばあちゃんの目で見ないで」

「ごめんごめん」


 これがおばあちゃんの気持ちか…って私はまだ16歳!




 妹にアドバイスをもらった翌日。航平君と帰れるかと思ったが、体育大会の練習と委員会の都合で今日も一緒に帰れそうにない。

 結局1人で帰ることになり、普通に歩いていると1人で帰ってる航平君らしい姿を見かけた。


(航平君!久しぶりに一緒に帰りたいな…)


 しかし航平君はコンビニに入ってしまったので慌てて追いかけると、航平君の姿がどこにもない。とりあえず買いたかった飲み物を買う。航平君の分も買った後、ふと外を見るとジャージ姿の航平君がコンビニを出て歩いて行くのが見えた。


(なんでジャージに?運動するのかな?それとも誰かと会う約束を?)


 そう思いながら私もコンビニを出ようとしたその時、私の知らない女子が航平君に抱きついたのだ。


(嘘…)


 私は目の前が真っ暗になるのを感じながら、真っ青な顔をして陰からその密会を見る今年出来なかった。




 思わず飲み物を落としたのも気がつかない程動揺していたのだろう。足下に私が買った飲み物がある。私が気づいたときには航平君とその女子が笑顔で別れていたところだった。


(これって…浮気?嘘…だよね?航平君…)


 私は真っ暗な帰り道を肩を落としながら帰るしかなかった。航平君に話しかける勇気は私にはなかった。

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