第27話 宝石少女の力



「嘘探知魔法には抜け穴がありますよ」


 わたしが発言するとクラスメイトたちが一斉にこっちを見た。


「抜け穴?」

「そうですよ。嘘探知魔法の原理はその人が体内から発する魔力の振動で読み取ってます。つまり話す人が嘘を本当だと思い込んでいたり、嘘をついた人を別の人が魔力で覆っていれば嘘探知魔法は機能しないんですよ」


 わたしが言うとみんな納得したような顔をした。


「どうして俺たちにそんな王の信頼を無くすようなことを教える? フェノンさんは王城の関係者側じゃないのか?」

「別にわたしはそんな話聞いてないですし、勇者様たちについても最近知ったばかりです。そもそもわたしは王家が嫌いです」


 嘘探知魔法を持っているクラスメイトに他のクラスメイトたちが目を向けるとそのクラスメイトは首を横に振った。

 けど、1人だけ納得いってないような素振りを見せる生徒がいた。


「風紀委員長でしたっけ? まだわたしの話が信用できませんか?」

「当たり前でしょ! 魔王を倒して私たちは元の世界に帰るんだからッ!!」

「そっか、じゃあ勝負しよ?」


 するとクラスメイトたちは一斉に首を傾げた。


「わたしはあなたたちに帰って欲しいです。わたしの肩身が狭くて、先生も何もしないで丸投げするので、ストレスが溜まります。わたしが勝ったら言った通りに従ってください。負けたらどんなことでも1つだけ叶えてあげます」

「嘘は許さないからな」

「別に契約の魔法を使っても構いませんよ」

「そうさせてもらう」


 すると何か魔法でロックされたような感じがした。恐らくこれが契約魔法なのだろう。

 それからわたしはクラスメイトたちを連れて練習場に移動した。


「勝敗条件はどうします?」

「降参か戦闘不能でいいでしょ。ほら、始めるわよ」


 風紀委員長は手に槍を持っていた。恐らく異世界転移特典のチートスキルとかあるだろうからそれには気をつけて行動しなければならない。


「そうですか。あっ、審判お願いします」

「え? あっ、じゃあ、開始で……」


 美紀ちゃんに審判を任せて、美紀ちゃんの合図で試合開始した。それと同時に凄まじい速度で近寄ってくる風紀委員長。

 そして槍をわたしに向けて伸ばしてくる。


「はあっ!!」


 風紀委員長の槍は魔力の壁に弾かれた。少し驚いた様子を見せるが、それでも連続で突いてくる。すると、魔力の壁は破壊された。

 その頃わたしは透明化で風紀委員長の視界から外れていた。


「どこにいる……そこか!」

「っ!?」


 透明化してるのにまさか見つかるとは思わず、距離を取った。恐らく音で判断してるのだろう。理屈さえわかれば余裕である。


「そこだ!!」


 全く関係ない場所に槍を出した風紀委員長。もちろんその隙を見逃さない。


「えい!」


 わたしは武器なんて持ってないので、素手で腹パン。一応ぶっ飛ばすぐらいの力はあるので、そのままぶっ飛ばした。


「ガハ"ッ!? いまのは……?」


 実は魔力の壁を適当な場所に叩きつけて、音を出したあと、等速直線運動で近づいて音もなく腹パンしただけ。まさか等速直線運動で迫ってくるとは誰も思うまい。


「あいつ、あの委員長と渡りあってやがる……」

「そこかよ!? どうみてもアイツ足が動いてないだろ!?」


 バレてた。観客には余裕でバレてた。

 けどなんであの二人は漫才なんてしてんの?


「あまいぞ!!」

「きゃっ!?」


 槍に魔力の壁ごと吹っ飛ばされた。攻撃手段が殴るしかないとさすがに何も出来ない。RPGゲームの感覚だと間違えなく雑魚キャラ扱い。

 その時、わたしは最も下劣な手段が思いついてしまった。

 ……魔力の壁で潰してみる?


 試しに魔力の壁で挟んでみた。


「これぐらい! なんの!」


 あっさりと破壊されてしまった。破壊された魔力は吸魔石に吸収されるので、宝石になることはない。


「委員長! 首に下げてるペンダント!」

「っ!?」


 マズい! 今これを破壊されるわけには……!


「はあっ!!」

「きゃっ!?」


 風紀委員長は魔力の壁を貫いてわたしの吸魔石を破壊した。

 今のわたしは丁度散魔期なので、当然のごとく魔力が溢れ出した。


「随分面倒なことをやってくれましたね……もう手加減はしませんよ」

「なにそれ……?」


 わたしの周りにはたくさんの宝石が浮いている。この宝石はわたしの魔力から出来ている。なら逆に宝石を魔力に変換できるんじゃないかと考えた。

 そしてこれが、長い時間を掛けて作ったわたしの遠距離攻撃法。


「『幸福宝石手絡魔力砲撃フェリナスバースト』!!」

「うそでしょ!?」


 わたしの周りを浮いていた全ての宝石が一斉に魔力光線を発射した。風紀委員長は必死にかわしてるけど、次から次へと新しい宝石が生成され、風紀委員長を襲う。やがて魔力光線が風紀委員長の肩を貫いた。


 ちなみにこの宝石から放たれた魔力はそのまま魔法みたいな感じで大気中にある魔素へと変化するので、再利用はできない。


 そして、風紀委員長は魔力光線を手に受けて槍を手放してしまった。もちろんわたしはその隙を見逃さない。わたしは魔力光線を上手く使って槍をこちらの方に飛ばして、わたしの手中に収めた。

 わたしは槍を持って風紀委員長に近づき、槍を首元に突きつけた。


「わたしの勝ちだね」

「……そうね。私の負けよ」


 わたしは風紀委員長に槍を返した。


「凄い強かったね。でも『古代種殺し』はわたしの何百倍も強いから諦めてね」

「そんなに強いの……?」

「そうだね。フルボッコだよ。それにわたしも今の試合は全力出してないし」

「え?」


 風紀委員長が抜けた声を出した。

 身体強化使えばもっと早く終わったけど、集中力をかなり使うから疲れるんだよね。だから使わなかった。


 ちなみにこの会話は風紀委員長にしか聞こえてない。わたしは風紀委員長の手を引いて、保健室に案内しようとしたけど、治癒魔法使いがいたらしく、秒速で傷が治った。


 わたしは教室に戻ろうとするとが突然練習場に入ってきた。


「フェノンっ!? 大丈夫ッ!? ケガとかしてないッ!?」

「おかあさまッ!?」


 お母様はわたしを抱きしめてあっちこっちを触ってケガしてないかを確めている。

 そしてその後ろではクラスメイトたちが手元にある1枚の写真とお母様を何度も交互に見ている。


「おい、『古代種殺し』ってまさかフェノンさんの……」

「「「「お母様ッ!?」」」」


 そして、わたしは勝負に勝ったにも関わらず、いろいろなことを全て説明する嵌めになったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る