さよならの恋文

雨世界

1 君に会えて、本当によかった。

 さよならの恋文


 プロローグ


 君に会えて、本当によかった。


 本編


 ……君にちゃんと、ありがとうって言えるかな?


 満開の桜が咲いている。

 そんな風景を一人で私は見ている。

 その向こう側にいる、君のことを思いながら。ただ、じっと桜を見ている。


「どうしたの?」と君が言う。

「桜、見てたの。綺麗だなって、思ってさ」にっこりと笑って私は言う。


 誰かと誰かが出会う。

 それは偶然じゃないと、君は言う。


 必要があるから、出会うんだって、君は私にそういった。その人との出会いが必要になったときに、誰かと誰かは出会うんだって、君は私にそう言ってた。


 そうやって誰かと出会って、新しい私になるんだって、新しい私に変わるんだって、君は私に笑いながらそう言ってた。


 そんな君は、すごく輝いていた。


 きっと君は、君の中にある輝くなにかを信じているんだと思う。


 私が忘れてしまったものを。


 私がなくしてしまったなにかを。


 ……私が、もう信じることができなくなったことを、君は今も信じている。(そんな君のことがとても羨ましかった)


 私はもう、(あのころのように)君と毎日のように会うことはなくなってしまったのだけど、今も私はそんな君の言葉と、君の笑顔と、あの日の桜のことを、ときどき思い出す。(そして、ときどき、君のことを思い出して、一人で泣いてしまうのだ)


 君の言葉は嘘ではないと私は思う。


 だって私は君と出会って、新しい自分になることができたのだから。


 私はたくさん君に救われたんだと思う。


 あの日、あのときにも、君の笑顔に救われていたんだと思った。(あのときは気がつけなかったけど、今ならそうだとはっきりわかる。君の気持ち。君の心。君の願い。君が私に求めていたこと。そんなことが、はっきりと理解できる。……たぶん、きっと、今の私なら理解できる)


 私は今日、久しぶりに君と再会する。


 そのときに、私は君に、ありがとう、って言おうと思う。


 あの日に言えなかったありがとうを。


 君にきちんと伝えようと思っている。


 そんな私のことを、君は今、どう思っていますか? 


 愛してくれていますか?


 ……もし、愛してくれているのなら、それはとても嬉しいことです。(きっとまた私は泣いちゃうと思います)


 君に会うときが今からすっごく楽しみです。


 だって君に、また、一年がたって、成長した私を、新しくなった私を見てもらえるのですから。(……でも、ときどきは、昔の情けない私のことも思い出してくださいね。あの子は、とても寂しがりやだから。忘れられてしまったら、すごく悲しむと思うんだ)


 では、最後になりますが、ハッピーバースデー。


 お誕生日、おめでとう!!


 今年もよろしくね!


 いなくなった、私の親友。


 君に会えて、本当によかった。


 ……君の一番の親友より、たくさんの愛を込めて。(この手紙はわかっていると思いますが、私から君へのラブレターですよ。……あの日に渡せなかった、ずっと机の引き出しの中にしまってあった、古ぼけた恋の手紙です。ようやく君に渡せました。本当に、嬉しいです)


 PS


 今年も桜の花が咲いたね。すっごく綺麗だね。(なので、桜の花びらを一枚、手紙の中に同封します。私の君への思いと一緒に……)


 さよならの恋文 終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さよならの恋文 雨世界 @amesekai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ