赤い髪の少女

 長く炎のように赤い髪、体にフィットしたスーツ。


 美しく大きな胸にくびれたウエスト、鍛え上げられたキュッと引き締まったヒップ。赤い髪の少女は深い呼吸を吐き出した後、大きく目を見開いた。その瞳は燃えるような紅の色であった。


「ぬうううう!」右手を握りしめるとその拳は炎に包まれた。「どりゃ!」少女は勢いよく駆け出して拳を黒い女に向けて放った。 炎が勢いを増して襲いかかる。

 黒い女は、側転の要領で身をかわした。拳の先にあった校舎の一部が大きな音を立て破壊された。


「なんという馬鹿力なのだ!」破壊された校舎を見て静香が驚きの声を上げた。

 もう少し攻撃が横にずれていたら彼女も負傷を負っていたかもしれない。振動で拘束されていた金具の固定が緩み静香は力を込めて、右腕、左腕、右足、左足の順番で拘束具を吹き飛ばした。


 黒い女が赤い少女に手裏剣を投げつける。赤い少女は、その攻撃を容易く避けた。 その動きは早すぎて常人には見えないであろう。


「たぁ!」静香が日本刀をその手に掴み、黒い女に切りかかった。


 黒い女は、その刃を数センチ手前で見切りかわす。 攻撃は繰り返されるが、静香の攻撃が当たることは無かった。


「畜生!」静香は苦虫をすり潰したような声を上げる。


「貴方の動きには無駄が多いわ。 所詮、実戦を知らない田舎剣術いなかけんじゅつ」黒い女が笑みを浮かべる。


「黒ノくろのえ! 言いやがったな!」静香は黒い女の名を呼ぶ。


 どうやら二人は旧知の仲のようである。静香は執拗に黒ノ柄という女に切りかかった。

 黒ノ柄は掌で静香の腹部を攻撃する。静香は顔を歪めながら、後ろへ三歩ほどたじろいだ。彼女と入れ替わるように、赤い少女が現れ黒ノ柄に拳を向ける。避けきれずに黒ノ柄は弾け飛んだ。


「とても、その馬鹿力は相手に出来そうにないわ」そう言うと、黒ノ柄は以前と同じように煙幕を投げつけた。

 激しい輝きの後、辺りに煙が立ち込める。


 少女達の視力が戻った時には、黒ノ柄という少女の姿は消えていた。


「くそ!取り逃がした!」静香が悔しそうにフェンスを叩いた。


「「不動、不動君は何処に消えたの・・・・・・・まさか、さっきの女が?!」」赤い少女が動揺した声で叫ぶ。


「「あ、あの・・・・・・・俺は、ここにいます」」赤い少女が自分の問いかけに答える。


「「えっ!」」赤い少女は口を両手で押さえた。

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