父のエコロジー

 父がする唯一の料理は、余り物炒めだ。


 日々、母が料理の際に生産する、椎茸の軸だとか、ナスビのヘタの周辺だとかの野菜くずを、こまめに集めては冷凍しておく。


 そして、ある程度溜まったらベーコンと共に炒めるのだ。


 食卓に登るわけではない。


 父がビールを飲む際のつまみだ。


 その時以外に、父がビールを飲むことはない。


 母との約束だそうだ。


 だから父は、母が野菜を切っていると近づいていき、


「そこ、その辺、もうちょっと大きめに切ってくれないか」


 などと注文をつけては追い返されている。


 そんな二人のやり取りを見ていると、私はなんだか幸せな気分になるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る