第3話 初めての出会い。

ドキドキはしない朝がやってきた。


もう、普通に爆睡してた。

制服を着ていざ、という所でふと思い出した。


「そういえば、この世界では魔法が使える…はず。初日は魔法を使ってイタズラするはずだけど…、そういえば俺魔法って使えるかな?」


一人でドアの前で悩んでいると、ノックオンが聞こえた。

扉を開けると同じくらいの背の高さの、可愛い男の子?が立っていた。

いやマジで、これは…男の娘だ。


「おっはよー!あっくん!」


天使だけど朝からこのキラキラは…キツい。


「どうしたのたっくん。」


この子もこのゲームの中の悪役の1人、御堂 拓 (みどう たく)。一応、新の幼馴染、そして、後の裏切り者。


正直俺はあまり好きではなかった。

というか、俺はこのキャピキャピ感は元から好きなジャンルではない。


「あっくーん?ふわふわしてるよー?大丈夫?」


「大丈夫大丈夫。」


「そぉー?あ、そうだよ!今日転校生が来るんだって!どんな子かなー?可愛い子かな?かっこいいこ」


「そりゃぁかっこかわ…うぉっほゴッホ!!ラッセン!」


「あっくん何その咳。」


「そんな目で見ないでくれないかな?たっくん。」


セーフ。危うく言いそうになった…。

主人公は見た目はとてもカッコよくでも中身はとても可愛い男の子なのである。


つまり、イケメンで男女共にキャーキャー言われてそうな外見にもかかわらず、中身はとても天然でかわいいんです。

ただ、周りからのイメージをとても気にして生きてきた主人公は素の自分を皆に知られるのを避けるため、わざと嫌われるような行動を取ったり、周りと一線引こうとする。


「あっくん…、早くしないと遅刻するよ?」


おっと、今回は時間が無いので、主人公についての説明はここまでとさせてもらおう。

というか直接見てもらえばわかる。


「たっくんあと5分待って〜。」


「いーち、さんびゃくぅ〜。はい5分たったよ。もう先に行くから。」


「待って待って!すぐ行きますぅ!!」


俺はパンをくわえてたっくんを追いかけた。

ちなみにオートロックの玄関はカードキーではなく指紋認証の為セキュリティはバッチリである。


よく聞くカードキーなんてもう時代遅れさ。


さて、噂の主人公に会いに行こう。

と思って寮を出た瞬間。上から何かが降ってきた。


ゴチんっ!

といい音が響き少し先に居たたっくんがびっくりしてこちらを振り返った。


俺は頭を擦りながら降ってきたものを確認する。


「あ、すまない。大丈夫か?」


手をさしのべられその手を掴んでようやく気づく。

この展開は…。


「俺は今日からここに通うことになった宇野安 杏(うのやす きょう)だ。適当に門を飛び越えたら屋根の上に登ってしまったようで。降りたらちょうど君にぶつかってしまったみたいだ。本当にすまない。」


「はぁぁあああんっ!!生の杏様やんけぇ!!クソかっこええわぁ…。」


つい言葉に出てしまう。だって最推しなんだもん。


「えっと、君?どこか打ったか?病院に行くか?」


「大丈夫大丈夫。この子、頑丈だから。それより君転校生でしょ?早く行かないと遅刻するよ?」


たっくんが駆け寄って俺を1発平手打ちをして杏様にそう言うと、杏様は急いで去っていった。


去り際にとても気になっていたようでずっとチラチラと振り返っていた。

オレは杏様に小さく手を振って姿が見えなくなると同時に静かに悟った。


「あ、遅刻だ。」


鐘の音が響いた。


周りを見るとたっくんの姿は既になかった。

どこにも。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る