死神ちゃんはポンコツ可愛い

「ぴい!」


 いやいや何それ、すっごい勢いで離れてったけど。

 つーか身体能力高いなおい。

 ワンステップで3m位離れたけど。


「コワイコワイコワイシコウヨメナイノコワイ……」


 で、今度はうずくまって何やらブツブツ言ってる。

 もしやこれは……


「お前さてはコミュ障だな?」

「こここコミュ障ちゃうわ!」


 顔面蒼白な上に涙目で言われても全然説得力無いぞ。

 オレが一歩近づこうとすると……


「近寄らないで下さい!!

 それ以上近づいたらこの魂粛清アプリで跡形も無く消し去ります!」


 いや待って、何それちょー怖いんですけど!

 お願いだからプルプル震えてる指先をタブレットから遠ざけて下さい。

 間違いで押されたらかなわん。

 つーかそんなに怖がる位なら何で一気に強度下げたし。

 この子結構ポンコツか? 可愛いのに勿体無い……


「あ〜じゃあ、もう少しなんたらの強度上げて良いから! せめて会話出来る程度に」

「はひゅ、ふぁい……」


 何とかお互い擦り合わせの結果、微妙な調整を行い普通に会話出来る程度になった。

 今現在の状態は、オレの思考ダダ漏れって訳では無く、強い感情を発した時のみ読み取れる位だそうだ。

 それ以外の思考はフワッとした感じで。

 具体的には平静の時は青っぽい、怒ってる時は赤っぽいみたいに色が見えるんだとか。

 オーラか何かか?


「大変お見苦しい所をお見せしました」


 やや頬を赤らめながら努めて冷静に話し始めた。

 うん、事務口調で話せる位には回復したね。


「では説明して宜しいですね?

 と言うかしますよ、もう待ったは無しですよ!」


 流石にここは大人しく聞こう、ここで茶化しても本当に話し進まないし。


「先ず貴方には、全うするはずだった前世の寿命を別の世界に転生という形で消化して頂きます。

 そこで寿命をきちんと消化した後、改めてここへお連れしますのでご安心ください」


 ん? 別の世界?


「元いた所に戻される訳じゃ無いんだね」

「元の世界がお望みでしたらそれでも構いませんが元の身体に戻る事は出来ませんよ?

 何せお亡くなりになってますから」


 そりゃそうだ、死んだ人間が蘇ったら大騒ぎだろうし、オレの身体って今どうなってるの?

 もう火葬されちゃった?

 どっちにしろ元の世界には何の未練も無いし戻る気も無いけど。


「えーとじゃあ、どんな世界に転生するか選べるって事で良いのかな?」

「そうなります。完全に要望通りは難しいですが、ある程度の希望はお伺いできます」


 なる程、どうせなら前世とは全く違う世界が良いな〜そっちの方が面白そうだし。

 あ、そうだ!


「因みにオレの残り寿命ってどの位なの?」


 転生したらすぐ寿命でした。とかだったりしたら真面目に考えるのもバカバカしいしね。


「52年ですね、生活環境によっては多少前後しますが……」


 うお! オレが死んだのが37歳で更に52年も寿命が残ってるって……89まで生きる予定だったのか。

 あのしょーもない人生で89って、思った以上に長寿な方だな〜

 それこそ次の日には過労死してたかも知れない環境だったし。


「最終的には誰に看取られることもなく一人寂しく孤独s「そう言うの聞きたく無いんでやめて下さい!」


 何か前世の最終段階まで聞かされそうになったけど、流石に聞くに耐えないんでやめてもらった。

 ってか決まってたのかよそのダークな未来……


「まああくまで可能性の未来ですけどね。

 では早速ですが転生する世界と転生ボーナスを決めましょう!」


 ん!? 今何かボーナスとか言った?

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