第4話

【第4章~実験開始~】

2019年2月中旬、世間の皆さま方はバレンタイン商法にまんまと踊らされている時期だろう。


まあ、男子校出身の私にはそんなもの知ったことではないのだが、非リア充の私にはクリスマス・イブやバレンタインと言った時期には一種の劣等感を感じる。


年末に大学時代の友人Aの誘いで東京・丸の内で開催される街コンに参加するために、私は考えをめぐらせていた。


街コンや婚活市場に現れる女性はほぼ経済力のある高スペックな男子を求めていると考えられるため、非正規社員の自分が他の参加者と比べて見劣りしないための方法を考えていた。


そこで、私はブランド物の服が格安で入手できるリサイクルショップに行った。


店員さんに「高スペック男子に見える服を探しているんですが、ありませんか?」なんて、まさか聞けない。


そこで、私は「パーティー向けのジャケットはありませんか?」と聞いた。


髪の毛を派手に染め、ピアスの穴だらけの女性店員だった。中学や高校時代に幅をきかせていたであろう風貌だ。


彼女は意外も愛想良く対応してくれて、私にちょうどいいサイズのジャケットを持ってきてくれた。


正直、なかなか物は良かった。値札を見たら500円と書かれていたので、騙されてないか若干不安になった。


だが、500円には見えなかった。これで、高スペック男子になりすまして街コンや婚活パーティーに参加して彼女ができるなら、儲けものだ。


そんな思考をめぐらした挙げ句、500円のジャケットを購入してしまった。



街コン当日は、このジャケットを着用して、水玉模様のネクタイをして参加した。


職業は大手商社「高井物産」のエネルギー事業部に勤務する正社員ってことにした。たしかに高井物産に勤務しているのは事実だが、実際は契約社員。完全に虚偽の設定だ。


友人Aからは、私の身なりがとても非正規社員には見えないと言われたので、私は自信満々になり、高スペック男子を気取って、街コンの会場に向かった。


会場は丸の内にある、インド料理屋で、すでに参加者が集まっていた。


ところが気になった点がいくつかあった。


モデルのように美人な人がちらほらいたのだ。男性の参加者はほとんどが冴えない感じだったので、そのコントラストに私は違和感を感じたのだ。


「これはサクラが混ざってるな」と私は直感で感じた。


実際にサクラとみられる女性に話してみると、全くやる気を感じることができなかった。


私はその場で連絡先を交換し、街コンが終わった後に友人Aとその時感じた違和感話した。


友人Aは「あれはサクラだな」と言った。


そこで、私は「俺が何か送ろうか?」と言った。


結局、私が「◯◯さんはサクラじゃないですよね?」と連絡してみた。


内心、返事は期待していなかったが、数十分後に「私はサクラじゃないですよ」と返ってきた。


そりゃサクラが自分はサクラですなんて言わないよな。


いくら高スペック男子になりすましても、相手がサクラだったり、やる気のない女性ばかりだと話にならなかった。


そもそも、今回の街コンは女性の料金設定が安すぎた。テキトーに参加した人もいるのだろう。


完全に失敗だった。そこで、私たちは秋葉原の居酒屋で作戦会議をし、次回参加する街コンや婚活パーティーについて話合った。


その結果、高スペック男子しか参加できない街コンや婚活パーティーに参加し、女性の料金設定がそこそこ高いところがいいという結論に至った。


この作戦が成功する。次回以降、その話を詳細に記すので、ご期待を。

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