9.三年後・帰還・変化

「ありゃまあ」


 早朝、まだ湿った空気が辺りに漂う時刻。恒星が顔を見せるまで、もう少しある。そんな時間に、その男が、その場所の前に立った時、まず上げたのはそんな声だった。

 ぼさぼさに乱れた髪、顔の下半分に無精ひげを生やした男は、それでも子供の様な声で、更なる感想を口にする。


「……でかいなあ……」 


 思わず男は感心してしまう。そして背負っていた黒い大きなデニムのバックの中から、使い込まれた小型の写真機を取り出すと、少しばかり後ろに下がってから、シャッターを何回か切った。

 近くで眺めたら、首が痛くなりそうな太く高い柱。天井。感心半分、呆れ半分で男はもう一度その建物に近づいた。

 そして少しばかり、細部を見ようと足を進め…


「おい、そこで何をしている?」


 男は守衛に呼び止められた。守衛とは言え、身に付けているは、濃青の制服。開襟と斜めのベルトをつけたそれが、この星域の正規軍の服装だということは、誰が見ても一目瞭然である。男は果たしてそれに気付いてるのかいないのか、にこにこと笑みを浮かべ、写真機をバッグの中に入れながら、こう言った。


「あ、ちょうど良かった」


 守衛をしていた軍人は、どうやら血気はやる年頃らしい。この早朝などというとんでもない時間に、わざわざ写真機を持ってやってくるのはロクでもない奴だ、という認識でもあるのだろうか。やや苛立たしげに男に近づくと、写真機を出せ、と居丈高に命じた。


「別に出してもいいけど、ちゃんと返してね」


 男は素直に写真機を出す。その小型の写真機のカバーは、ひどく汚れたりすり切れたりしている。使い込まれたものであるのは一目で判る。


「それに、ちょっと取り次いで欲しいんだけど」

「何?」

「えーと」


 男はバッグのポケットから、二つに折り畳んだ封筒を取り出す。


「俺の友達が、この中に居るはずなんでさ」


 訝しげな顔をして、守衛の兵士は男から手紙を受け取る。切るものがなかったのか、その封は指で引きちぎったかの様にぎさぎさになっていた。

 そしてそこから取り出した卵色のカードを取り出した時…その守衛の兵士は慌てて顔を上げた。


「何? 俺そんなに格好いい?」


 いやそういう問題ではない。守衛の兵士は、慌てて衛所に飛び込み、その守る建物の内部への直通回線を開く。そうしながら、その一方で、そこにじっとして下さいよ、と手で合図を送る。ここでこの人物を追い返してしまったとしたら、自分の不手際になるのだから。

 一方の男は、何だかなあ、という顔でその様子を眺めていた。そしてもう一度、その目的である場所…その中でも建設中の、巨大な建物を見上げた。


「これって、でかすぎるよなあ」


 その声が聞こえたのかどうか、守衛はようやくつながった回線に頭を何度も何度も下げながら、またちら、と男の方を見た。


「……はい、確かに」


 頬に汗が滴る。背が汗で濡れているだろう。守衛の兵士は普段まず直接口をきく機会も無い相手に緊張していた。


「判りました、お通し致します…… 宣伝相閣下」


 そして、未だ暢気に口笛など吹きながら、面白そうに上を眺めている男の元に守衛は引き返す。


「知らぬこととは言え、失礼致しました。今起きられたということですが、到着までには、支度を整えるとのことで」

「うん」


 男はうなづく。そして高い金属の門を、ポケットに入っていない方の手で掴むと、にっこりと笑う。


「じゃあ俺、この中に入っていいのね」

「あ、ご案内を……」

「散歩させてよ。せっかくのいいお庭なんだし」

「しかし…」

「俺はライから帰ってきたんだから、お花を見たいの。いけない?」


 いけない、とこの所詮人の良い守衛には言えなかった。あの極寒の惑星から戻ってきたのなら。

 さっさと門の中に入っていく男の背中を見ながら、ため息まじりで守衛の兵士は、中を担当している同僚に回線を回した。


「宣伝相閣下のご友人がお見えなんだ… 花を見ていく、ということだったから、そっちへ案内を回してくれないか?」


 お友達? 誰だ?と同僚の驚く声が聞こえてくる。


「ケンネル新科学技術庁長官だ」


 ひっ、と回線の向こう側の声も、息を呑んだ。


 それにしても。

 その「新科学技術庁長官」ケンネル氏はその庭の豊かさに、正直驚いていた。

 陽の上る前なので、花の面は閉じていたが、それでもその鮮やかな色は充分判る。みっしりと立て込んで咲く、薄青の小さな花、少女のレースのリボンを思わす様な細かい白い花、首を高く上げて開こうとする、華やかな紅色の花。そして樹の枝いっぱいを飾る、山吹色の香りの高い花。

 さっぱり名前など彼には判らないのだが、それでもこの花々がとても綺麗で、手入れがきちんとされていることが判る。

 季節は春。

 まだ明け方の空気はやや頬に冷たいが、冬の惑星から帰ったばかりの身体には、大したものではない。ポケットから煙草を取り出すと一本くわえ、ふうっと大きく煙を吐き出す。そして苦笑いすると、つけたばかりの煙草を足元に落とし、ぐい、と足でつぶした。


「吸う様に、なったんだね、先輩」

「ちょっとね」


 そして一度足で踏みつぶした吸い殻を拾うと、ゴミ箱は何処? と訊ねた。こっちだよ、と後輩は答える。濃青の制服もきちんと着こなした姿は、三年前と同じだ。ただ、その上に付けられている階級章が違うだけだ。

 たった三年だというのに。


「ただいま。何とか風邪もひかずに帰りましたよ、テルミン宣伝相どの」

「お帰り、先輩」


 そして改めて、ケンネルは旧友に飛びついた。勢い余って、テルミンは背中から柔らかい芝生の上に転がってしまう。夜のうちにじっとりと溜まった露が、子供の様に転がり回る彼らの背中と言わず腕と言わず、びっしょりと濡らした。

 そして一通り転がり終わった時、べったりと腰を下ろしたまま、二人は顔を見合わせてあはははは、と笑い合った。遠くでテルミンの部下もそれを眺め、普段絶対に見られないその姿に唖然としている。


「何っか凄い格好になってるよ、先輩」

「そぉかあ? ま、確かに宙港から始発で来たからなあ。戻っていちいち服着替えていくのも面倒だったし。それよりまず、俺、お前に会いたかったし」

「本当? 嬉しいなあ。今そんなこと言ってくれるの、先輩だけだよ?」

「嘘つけ! 天下の宣伝相さまが何言ってるよ。あ、招待状ありがと。いやあここの守衛くんってお前と同じくらい真面目と違う?」

「ああやっぱり何か言われたな」

「いや、あんまりあの門の横に作っている建物が凄いでかいもんだったから、思わず写真を撮りたくなってさ。そしたら、まあ、凄い目でにらむこと!」

「写真撮ろうとしたのかあ? そりゃ当然だよ!」

「へえ」


 ケンネルは不思議そうに肩をすくめた。テルミンはその様子を見ると、付け加える様に、友人に向かって言った。


「今はね、先輩、そういう所になってしまったんだよ」

「みたいだね」

「だけどそれは必要なんだよ? それは」


 すっ、と言い立てようとするテルミンの前に、ケンネルは手を上げた。


「そういう話は、後でもできるよ。それよりテルミン、先輩はお腹空いてるんだけど」


 そしてにやり、と笑う。あ、とテルミンは背後の部下の存在を思い出した。


「ひゃ、びちゃびちゃ」

「着替えくらい貸すよ」


 くっくっく、と笑いながらテルミンも、せっかく整えた自分の服がびしょぬれであることに思わず笑った。こんなことは、久しぶりだった。転がり回るのも、友達に飛びつくのも、そして、心から笑い合うのも。



「そんでさ、その時、コーセンっていうウチの部下が言う訳よ。『隊長、ドリルの刃が折れました~』俺は俺で、何度かドリルの刃を飛ばしてしまって、どうしようもないのよ。でしょうもないから、次から皆に持たせたものが何だと思う?」


 片手に半熟の黄身が今にもとろけ出しそうな目玉焼きを刺したフォーク、もう片手にごまのペーストをつけた丸いパンを持ちながら、ケンネルは「昨日までの話」を順序もごちゃごちゃに話す。

 テルミンはそれを聞きながら、時々あいづちを打ちながら、どうにも珍しく笑顔が止まらない自分を感じていた。

 ケンネルが冬の惑星、ライに出向となったのは、三年前のことだった。

 当時、政界も軍部も騒然としていた。いや、それだけでない。このレーゲンボーゲン全体が、騒然としていた、と言っても間違いではない。


 三年前。共通歴827年の4月、まずそれまで18年という長い間、この星系をその手の中に置いていた首相・ゲオルギイが暗殺された。

 犯人は、その場で側近のヘラ・ヒドゥンとその選任SPであったテルミンの健闘で、その場で射殺。

 その模様は、ちょうどその場にインタビュー目的で追いかけていた中央放送局の女性スタッフ、ゾフィー・レベカの手元にたまたまあった放送用端末で撮され、大スクープとして、全ての放送を中断し、星系中に流された。

 ゾフィー・レベカはこの時の功績により、その後の政府関係の報道の中心スタッフに抜擢され、現在ではその筆頭に立っている。その急速な出世の裏には、彼女の監督する報道番組の価値を重くみたテルミン宣伝相の力が働いている、と噂する者も居るが、定かではない。

 そのテルミン「宣伝相」。

 彼は彼とて、一足飛びにその地位についた訳ではない。あくまで三年前までは、ただの選任SPであった彼が、それまで内閣には無かったその役職につくまでには、様々なドラマがあった。

 しかしその全てを記す訳にはいかないので、かいつまんで言うならば。

 全てはゲオルギイ首相の死から始まった。

 この時期、ゲオルギイ首相の内閣自体も、それまでにない危機を迎えていた。地位についた頃から信頼してきた閣僚が、ひどく短い期間に、次々と失脚していったのである。

 ゲオルギイ首相は、閣僚達があまりにも単純な誘惑に引っかかり、その身を滅ぼしたことを疑問に思い、悲しんだが、彼らが自分から手を出したことは事実だったので、それをかばうこともできなかった。

 そしてこの周囲の失脚は、首相の死によって、更に悪い事態を巻き起こした。すなわち、後継者の問題である。

 失脚した閣僚達は、首相に「もしもの何か」があった時の交代要員として、充分な能力を持っている、とされていた。

 首相自身も、彼らが居たので、安心していたのである。だがその背後に控える者が、一人もいなくなった。その折の暗殺である。

 残された閣僚は、困った。失脚した者達と違い、誰かの下でのみ能力を発揮するタイプであったし、また、それを実によくわきまえていた。もしくは、頭として責任を負うことを、極端に嫌うタイプであったと言ってもいい。

 理由はどうあれ、残された者達は、首相という地位につくことを全て拒んだのである。

 そこで彼らは、一人の人物に相談を持ちかけた。

 この星系に駐在している、帝都政府からの派遣員である。

 帝都政府の人間の言葉であるなら、自分達で決定することの責任を少しでも回避できる、と彼らは踏んだのである。

 そして派遣員は、一つの案を提出した。


「代理をひとまず立てなさい」


 だが彼らは、その人物が浮かばなかった。派遣員は、続けて言った。


「誰でもいいのです。つまりは首相という人物の栄光を映す人物だったら誰でも」


 そこで彼らは、一人の人物に白羽の矢を立てた。そういう人物は、その時点では、たった一人しかいなかった。

 首相の側近であった、ヘラ・ヒドゥンである。

 ヘラ・ヒドゥンは当初その地位を丁重に断った。自分には荷が重すぎる、と。確かにそれはどう見てももっともな答えだった。この人物は確かに有能だったが、若すぎた。

 しかしそれを周囲は無理に勧め、とうとうヘラ・ヒドゥンはその座についた。とりあえず「代理」として政務を執り行い、しばらく後に、正式な選挙を行い、首相を決定する、ということになった。

 このまだ若い青年を推した閣僚達は、それまでに自分の息の掛かった候補者を挙げるつもりだったのだ。

 しかし、一度「代理」の座についたこの青年は、閣僚達の想像を遥かに越えた、したたかな存在だった。

 彼らが気が付いた時には、遅かった。


「けどな本当に、こうなってるとは俺、思わなかったよ? だからお前のこの招待と、俺に付けられたこの地位も冗談じゃないかって思ったんだからな」


 ケンネル「科学技術庁長官」はそう言いながら、大きなカップいっぱいのコーヒーを口に含む。


「やっぱり美味いなあ…… はあ…… ごはんはやっぱりこっちが美味いよ。いいねえ…… コーヒーが冷めない食卓!」


 一口一口ごとに、ケンネルは感動した様な声を上げている。毎日の政務の疲れからか、いまいち朝に食欲は湧きにくいテルミンは、その様子に改めて感心する。


「そっちでは、どういうもの食べてたのさ、先輩」

「ああ? 別に不自由はしてなかったけどね。それなりにちゃんと食事は出たし」

「そう? だったらいいけどさ。何かずいぶん前と印象が違ったから、ちょっと俺も心配になったよ」

「そりゃあまあね。三年ってのは結構長いもんな。いつの間にかお前は宣伝相なんて役についてるし」


 ケンネルは何げなく言う。


「俺は宣伝相なんて閣僚の地位を、今まで聞いたことなかったんだけど」

「そりゃあそうさ」


 不意に聞こえたその声に、思わずケンネルは振り向く。

 テルミンはつと立ち上がると、食堂で控えていた警備の兵士に対し、下がる様に合図を送る。扉のあたりには二人の兵士が居た。一礼して、濃青の軍服を着込んだ兵士は扉を出て行く。


「この人が、テルミン、お前の友達だっていう?」

「そうです」


 ケンネルはカップを置いた。まだ中には1/3程残っている。


「へえ」


 そう言いながら、入ってきた人物は、空いていた椅子を引き出すと、当然の様に横座りに掛ける。


「初めまして・よろしく。ケンネル新科学技術庁長官」


 そして右の手を差し出す。比較的小柄その人の差し出した手はそうでも無い。

 ケンネルは一度手を差し出しかける。だがふと思い直して、一度その手をそばのナプキンで拭った。そして改めて手を出す。すると相手はにっこりと笑った。


「ずいぶんと焼けているね。雪焼けか」

「はじめまして。ヒドゥン総統」



 ああ、それでもちゃんと知ってはいるのだな、とテルミンは思った。


「ライにずっと居たなら、俺のことなんて知らないと思っていた。俺がすぐにヘラ・ヒドゥンだとよく判ったね?」


 くす、とそう言いながらヘラはケンネルの手をぐっと掴む。


「ライでも、多少のタイムラグはありますが、一応首府の電波は受け取ることはできますから。それにこいつの上司、と言えばあなたしかいないでしょう、総統」

「そして先輩にとっても、これからは唯一の、だよ」


 テルミンは付け加える。そうだね、とその言葉にケンネルはうなづいた。


「せっかく頂いた役目ですから、精一杯勤めさせていただきます。けど」

「けど?」


 ヘラは片方の肘をテーブルにつき、その上にあごを置くと、実に面白そうだ、と言うように、この初めて会う科学技術庁長官を眺めた。

 実際、このケンネルを見て、その役目がすぐに出てくる者はいないだろう。

 ぼさぼさの焦げ茶色の頭、のびかけのヒゲ、デニムのバッグというだけではない。その格好にしても、まだライから戻ってきた、ということをそのまま表している。春先にはかなり奇妙な格好だ。下に着ていたシャツにしても、アイロンかけとは無縁な、ひどくよれが生じ、所々に洗濯しても取れなかったのだろう染みがこびりついている。

 そして所々すり切れ、色あせたやはり厚手のデニムのズボンに、履いているのは、ブーツ。いやブーツというよりは、「長靴」と称した方がいいかもしれない。実用一点張りの真っ黒なそれは、どんな雪道でも平気で歩き回れそうな代物だった。

 しかしその場にそぐわないと言えば、この場所――― 旧首相官邸における、この「総統」の姿もそうだった。

 「総統」などといういかめしい称号からは想像のできない程、この「総統」はだらだらとした格好で、そばのオレンジをつまむ。

 アイロンを掛けていないという点ではケンネルといい勝負だろう、そのままベッドに入ってしまったのが丸判りな程なシャツは袖のボタンが止められることは無い。そして、やはり無造作に履いたズボンは、前のボタンが外れていることもある。―――テルミンには覚えのある格好だった。

 日課自体はずいぶんと朝型に切り替わったとは言え、ヘラの朝の時間をひどくゆったりした格好で過ごすくせは、テルミンが最初に会った時と、まるで変わらない。

 無論警備の兵士達も、最初はそれにずいぶんと面食らった。そして目のやり場に困った。何せこの「総統」の美貌ときたら、その気の無い純情な若い兵士を面食らわせるには充分過ぎる程だったのである。

 おそらく彼ら兵士は、繰り返される政府のプロパガンダ放送の中で言葉を投げかける彼らの総統の姿を知ってはいただろう。時にはアップになる、その映像から、その人物が、飛び抜けた美貌だということは知っていただろう。

 正直、このレーゲンボーゲン中の役者と歌い手が、最初にヘラが正式に「代理」として政府公報に出演し、声を高め、カメラのズームアップを受けた時、自分達の将来に恐怖したという。平気だったのは、「実力派」と称されている、美貌とは無縁の役者達だけだったらしい。

 そんな人物が、朝、ひどく気怠げな表情で、まだ乱れた髪で、シャツのボタンを二つ三つと外し、白い肌もあらわな姿でふらふらと食堂に出てくるとなれば、訓練を受けて配属されたエリートの兵士達も、どうしていいのか判らなくもなるだろう。―――かつてのテルミンがそうであった様に。


「けど?」


 ヘラは面白そうだ、という笑みを浮かべてケンネルをじっと見据える。だがこの男はそれには動じる様子は無い。それがまた面白いとでも言うのか、どうやらヘラの機嫌が極上のものになっていることにテルミンは気付いた。


「できるだけ、間違った方向には、協力しなくてもいい様になることを、祈りますね」

「先輩!」

「いい、テルミン。それは、どういう意味だ?」


 ヘラはさらに機嫌を良くして訊ねる。ケンネルは残ったコーヒーを飲み干し、続けた。


「科学には出来ることはたくさんあるけれど、万能じゃあないです。知れば知る程、知らなくては良かった、と思うことも多々あります。『長官』などという役目をいただいた以上、できるだけの協力はしたいと思いますが」


 ふうん、とヘラはうなづいた。


「面白い男だな、ケンネル長官は」

「それは、どうも」


 ケンネルはそう言われても、平然と軽く頭を下げるばかりだった。どうしたのだろう、とテルミンは思う。

 再会した瞬間には、さして考えなかった疑問が、テルミンの中には湧きかけていた。変わったんじゃないか? 

 何処がどう、という訳ではない。相手を見る自分の視線が変わったのかもしれない、とは彼も思う。この三年のうちに、自分と、周囲を読む目はひどく敏感になってしまった。


「ま、そう物騒なことは起こらない様に、俺もできるだけのことはするさ」


 物騒な方法で現在の地位を手に入れたこの美貌の総統はつぶやいた。


「俺もコーヒーが欲しい。テルミン、外で暇を持てあましてる奴らを呼んでやってくれ」


 はい、とテルミンは立ち上がった。


   *


「と言う訳で、俺はもう冷や冷やしたよ」

「あら、それが天下の宣伝相さまの言うことかしら?」


 くくく、とくすんだ色の作業着を上下に身に付け、長い栗色の髪を編んだ女性は楽しそうに笑った。しかし二人のその声は、決して大きくは無い。ケーブルや脚立と言った道具があちこちに置かれたスタジオの片隅、彼らは仕事中だったのだ。


「言うね君も」

「だって今、あなたにそう言えるのは他に誰が居るって言うの?」


 彼女は腰に手を当てて、軽く胸を張る。


「はいはい、君くらいなものです。レベカ監督」

「嫌なひとだわ。でもあなた、そういうひとだものね」


 ゾフィーは肩をすくめ、丸めた台本でぽん、と相手の腕を叩いた。


「仕事の話を、しましょ」


 OK、とテルミンは公務の顔になる。彼女もまた、テルミンの女友達、という役割から、政府直属の広報番組のディレクターとしての顔に変わった。

 ゾフィー・レベカはあの前首相暗殺の場面を撮り、報道させた功績から、一躍中央放送局内で飛び抜けた昇進を果たした。それだけではない。その時に首相と一緒に居て、暗殺者と銃撃戦を演じたのが、この宣伝相テルミンと、現在の総統ヘラだったことから、彼女は政府関係の報道を一手に取り仕切る様になってしまった。

 現在では、そんな彼女そのものに対し、ゴシップ記者が何かと無作法なカメラを向けてくることがある。すなわち、テルミン宣伝相と、特別な関係があるのではないか、という…

 ばっかじゃない、と彼女はそんな輩を一言で言い表し、笑い飛ばす。

 正直、別に独身のテルミンと独身のゾフィーがそんな特別な関係にあったとしても、別段騒ぐ程のことではないのだ。いっそ結婚したところで、おめでとうと言われ、一時期カメラに追い回され、飽きられれば静まる。その程度のことである。

 ただ、テルミン宣伝相という人物が、あまりにもそのゴシップ記者のカメラに捕まらないこと、そしてゾフィーのあまりにも急な出世、その二つが、周囲の目を引いてしまったのだ。

 そしてその実態は、と言えば。

 彼らは事実、ただの友人だったのだ。頬やおでこへの友人のキス以上の姿を見た者は、一人としていない。当然だ。本当にしたことが無いのだから。

 では他に恋人があるのか、と問えば。

 その件については当のテルミンが夕食を一緒にした時に聞いたことがあった。しかし夕食と言っても、仕事をしながらで、手にしていたのは、仕出しの黒パンのサンドだった。噛みごたえのあるその薄い、密度の高いやや酸味のあるパンを、ミルクと一緒に激しく噛みしめながら、最近恋人は居るの? というテルミンの問いに、居る訳ないでしょう、と彼女はあっさりと答えた。


「何で?」


とテルミンもまた実にあっさりと聞いた。


「だって面倒じゃないの」

「面倒?」

「こんなに仕事が面白いのに、いちいち相手の気持ち色々考えたりしなくちゃいけない関係作るなんて厄介で厄介で」

「気持ち考えない関係だっていいじゃないの」

「あなたは男だからそういうこと言えるのよ」


 彼女は元首相の暗殺事件以来、テルミンのことを階級や職名で呼んだことは無い。この先どんどん階級が上がってくのに、そのいちいちに呼び方を変えるのは面倒だ、というのが彼女の答えだった。


「女はね、関係すればその都度、いちいち子供ができるのできないのって考えなくちゃならないのよ。そりゃいちいち考えないひとだってもちろん居るけれど、少なくともあたしはそうなのよ」

「それは男だって同じじゃない」

「違うわよ。男は相手にどうすればいいか考えるだけだけど、女は自分の身体をどうすればいいのか、考えなくちゃならないのよ? そんなことに頭使うのは、面倒じゃない」

「そういうものかな」

「そういうものよ」


 そう言われてしまうと、テルミンは自分の日常を考えて、苦笑せざるを得ない。彼女にしてみれば、ひどくおおごとであるその行為が、自分にとっては、半ば眠りを手に入れるためのものになっているのだ。


「あなたはどうなの? テルミン」

「俺? 俺もいないよ」

「嘘ばかり」

「嘘じゃあないさ。恋人は、いないって」


 居るのはそういう相手じゃあない。

 それを考えるたびに、彼の胸の中は、やや締め付けられる様な気分になる。それは余りにも毎日毎日感じすぎて、もう彼の中では当然になっていた。

 ふうん、とゾフィーはうなづいた。自分の答えに彼女が納得したのかどうかは彼にも判らない。だが、自分の中の、言えない何かを彼女が気付いているだろうことは、テルミンも知っていた。


「別にいいけど。でも身体は大事にしてよね」

「それはお互い様さ」


 そしてこの日も、次の公開政見放送の予定について、彼女と話し合っていた。宣伝相の意向が大幅に左右するこの番組において、スタッフはあくまでゾフィーの手足に過ぎない。


「了解。ではその線でいきましょ」

「スタジアムの建設も着々と進んでいるし。その時の事も、段々に考えて行きたい」

「スタジアム、ね」


 くす、と彼女は笑う。


「何がおかしいの?」

「ううん、最近作られる建物、うちのスタッフ達が、皆うらやましがってたわ」

「羨ましい?」

「あれだけのセットを本気で作ることができたら、俺達は凄い画像が撮れるだろうなって」

「ふうん」


 テルミンは唇をきゅ、と上げた。


「だったら、いい映像を撮って欲しいな。その時には、必ず」


 もちろん、と彼女は笑った。


   *


「どうした?」


 ふと思いだし笑いをする彼に、相手は、不思議そうに問いかけた。


「何でもないよ」

「何でもないという割には意味深な笑いだな」


 テルミンは相手の顔の、鋭角的なラインを指でたどる。相手はその指を取ると、軽くその先を噛んだ。


「今日さ、言った奴が居たんだよ。今建ててる色んな建築物が映画のセットの様だって」


 ほう、と相手は感心したような声を立てた。


「それはそれは。ずいぶんといい目をしている友達だね。それは君の言っていた、今度ライから帰ってきたって言う科学技術庁の?」

「違うよ。ゾフィーさ。レベカ監督」

「ふうん。確かに彼女は直感が優れているね」


 確かに、とテルミンはぼんやりとした頭の中で思う。


「あれがセットだって、気付くということは」

「そりゃ、俺の友達だからね」


 話をするのが億劫な程、テルミンは毎晩毎晩疲れていた。しかしそれでも、彼はその相手の所を訪れるのは忘れなかった。それは殆ど日課と言ってもよかった。

 しかしそれでも彼も時々思う。こんな疲れ切って人形の様になっているだけの自分など抱いて、何が楽しいのだろう? と。

 そもそも何故自分だったのか、がテルミンには今でも判らないのだ。この相手…帝都政府からの派遣員である、スノウという名の男が。

 この男が現れなかったら、と時々彼は思う。現れなかったら…… 今頃はまだ、自分はただの佐官としてこの場所を首相官邸として、警備しているだろう。首相の愛人だったヘラはおそらく愛人のまま、憂鬱で退屈な日々を過ごしていただろうし、そもそも、ゲオルギイ首相があんな風に暗殺されることはなかったはずだった。

 彼はあの事件の後、訊ねた。


「どうやって、あんな奴を動かした?」

「別に。ただある種の人間が集まる場所に、現金輸送車が*日*時頃にあの道を行く、という情報を流しただけだよ」


 それだけの訳はない、と彼は思っていた。だがテルミンはそれ以上聞くのはやめた。この帝都政府から派遣された男は、自分には計り知れない、大きな裏のつながりを知っているのだろう。

 おそらく、自分が動かなくても、ゲオルギイ首相はいつかこの男の差し金によって消されていただろう、と彼は思う。おそらく間違ってはいないだろう。ただ自分が居たことで、それが早まったことは事実だが…


「眠ったのかい?」


 相手は彼の耳に、低い声を囁き入れる。眠ってない、と彼は半ば溶けかけた意識の中で、それでも答える。相手のくすくす、と含み笑いする声が聞こえる。それはそれで、悪くはない。悪くはないのだ。

 彼がヘラの元に警護の士官としてついた時からのつき合いだから、もうこの男との関係は、五年近く続いていた。

 ひどく不思議だ、とテルミンは思う。

 今では、この男が、自分を一つの駒として、何か別の大きな目的を達成するために動かしていることは判っている。判らない訳がない。何せ自分は、確かに見込みはあつたのかもしれないが、この男に会った時点では、ただの一介の士官に過ぎなかった。まだその時には少佐だったのだ。

 だが今では、その地位は、当時の上官よりも上位にあると言ってもいい。当時の上官、アンハルト大佐は、現在少将の地位にあるが、その赴任地は、この首府から遠く離れた南のフラーベンという地であった。もっともその人事について、テルミンが手を下したという訳ではないのだが。

 ぐっ、と持ち上げられる感覚で彼は眠りに入りかけていた頭を現実に引き戻される。


「まだ、駄目だよ」


 目の前の男は、優しげな声で、それでも容赦なく告げる。それを彼が望んでいるのを知っているのだ。彼は頭の芯がくらくらとするのを感じながら、スノウの手慣れた指の動きを感じ取っていた。



 翌朝、彼の唯一の上司が起き出す前に、テルミンは支度を済ませなくてはならないので、まだ外が明るくなる前に、男の部屋を抜け出す。彼らの部屋は、裏の通路でつながっている。

 テルミンもスノウも、その職務上の必要から、この総統官邸…代々の首相官邸に自室を持っていた。そしてその部屋は、その昔赴任していた何十代目かの首相が作らせた裏の通路でつながっていた。

 現在ではその存在が知られていないこの通路は、テルミンにとって、一人になることのできる唯一の空間でもあった。

 陽の差し込む高い窓のついた螺旋階段に座って、僅かな時間を過ごす時、彼は自分がひどく疲れていることに気付く。

 だが気付いても、止まる訳にはいかないのだ。

 そしていつもの様にベッドを抜け出そうとすると、着込んだシャツを後ろから掴まれる感触があった。彼は驚いて、振り向く。何、と彼は問いかけた。


「たまにはゆっくりして行けばいいのに」

「そういう訳にはいかないんだ」


 ふうん、とスノウの声が背後に聞こえたので、彼は立ち上がろうとした。しかしそれはできなかった。


「何? 離して欲しいんだけど」


 そう言って、テルミンが振り向いた時だった。彼は不意にその手を掴まれて、ベッドの上に押し付けられた。


「どうしたの」


 だがその答えはなかった。そして彼も、それ以上の言葉をつむぐことができなかった。強い力で、背を持ち上げられ、ひどく長い時間、彼は言葉を塞がれていた。

 何度も繰り返されるその合間に、呼吸をするためだけにある様なその合間に、相手の声が耳に飛び込んでくる。


「時々、私は自分の選択を間違えたんじゃないか、と思う」


 それはどういう意味だ、と彼は思った。だがテルミンはそれを口にすることはできなかった。

 その代わりに、彼は相手の胸を強く押し戻していた。合わせた相手の視線が、自分の中までえぐりとろうとするかの様に深い。首から背筋に、ぞくぞくとした感触が、起きては引いていく。


「……もう、行くから」


 ようやくの思いで、彼は相手の手から逃れ、それだけの言葉を唇に乗せる。


「ああ。今日も、気を付けて」


 それを聞いて、テルミンは苦笑する。一体自分が、この目の前の相手以外の何に対して気を付けろ、というのだろう?

 裏の通路を、手にした小さな灯りだけを頼りに、自室へと戻る。相手が自分の所へやってくることは無い。あくまで自分が向かうのだ。

 それが自分にとって、必要だった、ということもある。いや、それしかないのかもしれない。ないのだろう、と彼は思う。

 ただ、それが時々ひどく、苦しくなるのだ。朝の前の、この時間、何一つ音のしないこの道を歩いていると。


 音のしない―――?


 ふと、彼は足を止めた。ほんのわずかだが、耳に、何かがかすれたような音が飛び込んできたのだ。

 あの男が、何か用事があって動いたのだろうか。

 いや、それしか思い付かない。彼は手にした灯りのスイッチを切った。遠くに窓はあるのだが、朝前のこの時間には、そこから光りが入ることはない。テルミンは息を殺して、耳を澄ませた。


 ―――確かに、何か、居る!


 さぁっと、背に冷水をかけられた様な感覚が彼の上に起こる。

 だが正体をすぐに確かめよう、とするような愚は彼は起こさなかった。代わりに彼がしたのは、いつも以上に足音をひそめながら自室へと戻ることである。

 作りつけのクローゼットが、彼の私室の出入り口となっていた。そっとその扉を開け、何ごとも起こっていないことを確かめ、彼はほっとする。

 しかし。彼は改めて考える。何者かが、この官邸の裏通路を知っているということ。その可能性は確かにあったのだ。スノウがそれを知っていたように、この官邸に長く居る者だったら、何かしらこの存在を知っている可能性はある。彼はそれに気付き、思わず自分の肩を両手で抱いた。


 その日の公務の合間に、テルミンは、新しく建設される数々の建築物の視察に出向いた。

 官邸の増築。首府郊外に作られる巨大なスタジアム。美術館に公会堂。そしてステーション。

 これらの建設に関しては、前首相の時代から予定はあった。元々この首府の建築物は、首相官邸が象徴するように、代が替わるごとに、何かの機能を付け加えられたり減らされりしてきた。それに伴い、その作風もその時代時代のものがとりとめもなく付け加えられることとなり、都市全体として非常に散漫な印象となっていた。

 前首相ゲオルギイは自分の任期の間に、それを何とかしようと考えてはいたらしい。だが彼はそれを果たすことはできなかった。テルミンはそれを利用した。

 実際、政治を動かす段取りに関しては、テルミンはヘラに前首相の方法を踏襲することを勧めている。そこから変化させるにせよ、させないにせよ、最初はその方法が有効だった。

 だがその踏襲したはずの方法は、ヘラが「首相代理」からいつの間にか「総統」に変わった様に、いつの間にか、その内容を変えているのだ。

 ゲオルギイ首相は、全体的に穏やかな印象を持つ建築を好んだ。求めていた「安定」にふさわしい、穏やかで、長く続く何かを象徴するような。伝統的な色をそこにはほんの少し絡める。そうすることによって、その建築物自体に重みも加わるのだ。そして、その建物は、決して大きいものではなかったのだ。

 しかし、現在テルミンの目の前に広がる建物は、そうではなかった。


「スペールン!」


 テルミンはスーツ姿にヘルメットをかぶり、テントの下で図面とスタッフの顔を交互に見ながら、真剣に話をしている男の元へと近づく。それは彼同様、この役割のために新しい役割を与えられた男だった。


「やあ、テルミンじゃないか」


 まだ三十を少し過ぎたくらいのスペールン建設相は、顔を上げ、眼鏡を直しながら声を上げた。


「それでは引き続き頼む」


 は、とスペールンの周囲のスタッフは短く答えると、軽く頭を下げて、現場へと引き返して行った。


「来るなら来ると言ってくれれば良かったのに」

「ちょっと時間が空いたんだよ。どう?」

「いい調子だ。何せ、スタッフがいいからね」

「確かに」


 テルミンは建設中のスタジアムを見上げながら、大きくうなづく。白い、巨大なその建物は、この一人の奇才建築家の手により、着々とその姿を現しつつあった。


「うんやっぱり凄いよ。何か、見ているだけでぞくぞくする」

「天下の宣伝相さまにそう言ってもらえると嬉しいね。俺はまじで嬉しいよ。だいたい俺の様なタイプにちゃんと仕事をくれるだけでも滅多になかったというのに」

「いや、それは君の持っているものが、理解されにくいものだったからだよ」

「ふうん?」

「偉大な芸術というのは、いつも大衆には判りにくいものさ」

「大衆ねえ。俺は俺のこいつらは、実に判りやすいものだと思うけどなあ?」


 ナハト・スペールン建設相はそう言うと、腕組をし、ふう、と息をついた。その腕は、スーツを着ているというのに、しっかりと二の腕まで剥き出しになっていた。

 いかにも現場を結構な年数渡ってきました、と語っているようなそのがっしりとした体つきは、どうにもスーツには治まりきらないらしい。

 この人物を起用するようにヘラに進言したのは、無論テルミンだった。新たに作られるそれらの象徴的な建築物群の建設に際して、様々な建築家が候補に上がったのだが、このスペールンほど、インパクトの強いものを作る者はいなかったのだ。

 そして何より、このテルミンと歳も近いスペールンは、首府全体の改造、という点において、テルミンと非常に話が合ったのだ。ケンネルとは違う意味で、このスペールンは、彼の友人にも近い存在となっていた。


「工期は、予定通りに済みそうかい?」

「何ごとも無ければね。そのあたり、君の出番じゃあないのかい? テロ対策には、気を付けてほしいな」


 普通なら言いにくいことも、この男はテルミンに向かって臆せずに言う。これもまた、ありがたいことだった。スペールンは、この都市計画に全力を注いでいて、他の政治的な部分には興味は無い。それだけに、テルミンもその進言は取り入れやすいのである。

 権力は手に入ったとは言え、未だに彼とその唯一の上司の座を狙う者はあちこちに存在した。気を付けるに越したことはない。

 そして、テロ対策。

 辺境に以前から存在した反政府勢力が、ここしばらくのうちに、ひどく組織的になり、あちこちの辺境武装地帯で、政府軍が敗走する、という事態すら起きていた。

 その勢いが、各地の都市や、首府で地下活動を行う反政府組織の構成員に火をつける可能性はあった。

 気を付けるよ、とテルミンは大きくうなづいた。

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