第21話 テリアで見つけちゃった



 おさらいだけど南の街テリアでやることは販路開拓と専門職人という人材の募集。


 酒場で得た情報は、ここはギルド制、つまり職人協会があって、しかも子弟制。そんなに簡単には連れていけないだろうということ。でも大工さんは……鍛冶屋さんは……もう必須なんだよね!!


 大工さんを回ること数件、一応ね、発見しました。でもギルドを抜けて他の街に行くのは難しいとのこと。うーん、協会に直談判しよっか。


「ギルドから抜けたい、ねえ。抜けるなら違約金2000ユロルほど支払ってもらおうか」

「たっかー!ルーデルでもないこんな街でそんなにするんですか!?」

「はっきり言ってギルドから抜けるなんてのが違法みたいなもんだ。諦めな」

「ぐぬぬ」


 ちょっと無理があります。良い人材だったと思うのですが。夜逃げ……するわけにもいきませんし。


 ギルド制っていうのは、地球においては中世から近世にかけて存在した職業組合。販売などを独占しているわけで、ここを抜けるのはその街で死ぬことと同義ですね。

 アキラメロンですわ……しっぽしょんぼりーぬ。


 これだけで帰ってもしょうがない。この街の周辺の事とか利いたり、鍛冶屋さん(多分これもギルド制だと思うけど)を探したりしなければ!!

 宿代から酒場代まで、結構高くついたんだもん!! 元は取りたいよ!!


 聞き込みをするとだね、ここは私みたいな人間よりのケモってちょっと不遇なんだとか。ほう、人種差別ってやっぱ普通にあるんだね。地球でも残ってるしね。


 鍛冶屋協会や直接店舗にいってもスカスカのスカ。この街、国じゃあ引き抜きは難しいかな……


 なんてしょんぼりしながら鍛冶屋通りを歩いていると、一軒の寂れた鍛冶屋を発見。とりあえず聞いてみるかなあ。



「ごめんくださーい」


「うちはもう廃業してるわよ」


 現れたのは人間よりの犬亜人の女性。私並みに小さい、かわいい。童顔。胸はなさそう。いいしっぽをしているな。


「お手」


「わん」


 私が差し出した手に右手をぽんっ。

 ……沈黙の時間が流れる。


「何やらせるのよ」


「お座り」


「わんわん」


 しゅっと座ってこちらに笑顔を見せっ。

 ……沈黙の時間が流れる。


「うん、二人ともしっぽブンブンなのは間違いないですね。かわいいーたのしいー」


「悔しいけどそれは認める。それで、うちに来ても何もできないわよ」


「ここ、鍛冶屋さんですよね? もうお仕事していないんですか? あ、わたくしサクラと申します」


「私はカジコよ。もうここじゃ鍛冶屋をしても面白くなくてね。人間よりじゃ不遇なのよ。だから店を閉めてどこかに行こうと思っているの」


「なんですと」


 驚愕してピタッと止まる私。しっぽもぴーん。


「だからここでやるのはもう終わり。さあ、帰って帰って」


「あのっ。うちの開拓地に来ませんか?」


 カジは首を振りながら。


「テリア付近の開拓地じゃ面白いことはできないわ」


「いえ、完全に独立した開拓地です。あ、でも炉とかなにもな……」


 あ、ヘマ言いました。迎え入れる準備がないとか駄目じゃないですか。


「え、炉から設計していいの?」


「え、あ、はい。本当ご自由に。本当何もないですから、本当」


「もしかして炭焼き小屋も無い?」


「……恥ずかしながら」


「じゃあ炭焼き職人のスミコにも仕事が……あの子ここじゃあ需要無くてやさぐれているのよ……」


「えっ、来る?」


「えっ、行く」



 やったあああああああああああああああああああああ!!!!





 鍛冶屋さん他それ周りの人たちを仲間にすることができました!!


 ちなみにカジコさんもスミコさんにも3-4名の弟子がいるとか。みんな亜人さんなのかなーぐふふぐへへ。



 しかも。


「私たち身長体格がほとんど変わらないからお洋服使いまわせるんですねー。でもちょっと胸周りがきついかな」


「絶対に許さない」


「アッハイ。じゃあ移住する準備して早速開拓地に向かいましょう。準備にどれくらいかかりますか?」


「あと2日くらいね、一応、弟子もいるからね」


「じゃあその間に私もいろんなところ巡ってきますね」


 ウエストマークのトップスにスリムなレギンス、羽織り物はトレンチコートという【お洒落】をしました。お洒落♪ お洒落♪

 前世から考えても何年ぶりのお洒落なんだろう。とにかくばんざいばんざーい、しっぽぽよよーんぽーん!


「これでオッケーですかね」


「メイク道具あるけど」


「していきますぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 最高にハイってやつの状態で街へ繰り出しました。行うのはもちろんウインドウショッピング、お金ないもん。私のお金でもないしね。


 何んとなく恥ずかしくて行けなかった街の中心部にもGOGO!!

 うーん、こういうの良いなあ。プチプラショップとかないかな。いや、買わないけど。でも仕立て屋で一着仕立てておきたいよねー。ルーデルで第2壁とか行くときはやっぱり視線が気になる……


 適当に散策しつつ、やるものはやります。それはもちろん岩塩の相場探り!! こっちのほうが気楽に来れるし舟でテリアルブまでは運べる(予定)なので、塩の供給どうなってるかなーなんて思っちゃったり。


 しおやーさおだけーしおやーさおだけー、しおはいらんかねー。しおやー。


 そんなことしていたら塩屋を発見!! 突入だー!!


「んー、ルーデルよりは低いですねえ……」

「あったりめーよ、物価が違う。あそこは何でも揃う売れる代わりに物価がとても高いのさ。それにお前さんは得体のしれない開拓地の人間、そう簡単にいい値段が出るわきゃあねえだろ」

「むむむ。正論でしかないです。なんか塩が足りなくて困っている地域ってないんですかー」

「王都テリヤキは人が多いから常に需要が高いが……ここよりももっと遠いな」

「ぐえー、運ぶ手段に欠けます」

「まーあれだ、ここら辺は独立している種族の都市国家みたいなもんが結構あるから、自分で探すしかねえな」


 というわけで体よく追い出されました。くそー!


 とぼとぼ帰る途中、地球ではもうなくなった(名称上は)はずの市場を発見しましたよ。



 奴隷市場です。きつねの好奇心が行けって言ってる……悔しいけど行っちゃう、ビクンビクン

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る