世界の崩壊と死に際の約束

 唸るような、轟音が、耳を掠めていく。


 瞼を開けば、崩壊し、天に昇る建物の欠片が、空へと導かれて昇って行った……。


「エイジス、移管作業は、終わったよ……」


「ありがとう。私の話を最後まで、信じてくれて……。イヴァル、貴方も、もう行って……。私は……ほら……」


 そう言って、右腕を持ち上げれば、彼女の手は、掌の中頃まで分解でもしているかのような消え去りかたをしていた。


「エイジス、君はずっと、言っていたよね。これはだと………」


 命に繋がると言う鎖を、彼女は、これは呪の鎖だと……言った。


 本当の意味でのも、許されない、呪われた鎖…運命なのだと。



 彼女は、この世界に囚われている……と、そう言った。

 死して尚、彼岸に去ることもなく、延々とこの世界に囚われ続けている………。


 命に繋がるその鎖を、彼女の同胞を名乗る女性ひとは、運命の鎖だと、言った。


 世界に貢献し、役割を得るための、なのだと…。




「僕は、君を一人ここに遺して、新しい世界に行くよ……。だけど、僕は、君を忘れたりしない。君の……運命のろわれたの鎖を断ちきる方々を探してみるよ……」



 それでも、見つかるかどうかなんて分からない。

 手掛かりとなるこの世界アールスハインドは、もう時期無くなる………。



「もし、僕の生涯を掛けて見つからなくても、僕の知る全てを、一つの書に記すから………。

 もし、何時か生まれる次の君が、僕を思い出すことがあったら、僕達の秘密の部屋に探しにおいで……君が、運命のろいの鎖を断ちきる手助けに少しでもなれれば、うれしい……」




 世界の崩壊が、益々加速していく。


 大地がそこかしこでひび割れ、重力を失ったように、大地の欠片が空へと駆け昇る………。


「忘れないで……どんな時でも入り口は変わらないよ。『昼と夜の交わる時間、暁が空を焼く最後の瞬間、僕達の秘密の部屋への道は開かれる』忘れないで……これが入り口が、開くヒントだから……」




 もう、彼の声も良くは聞こえない。

 入り口………変わらない………秘密の部屋………。


 断片的に聞こえるそれを、反芻するだけの意識も保てない………。


「さよなら、エイジス………………」



 彼女に、意識がまだ有るのか分からないが、これが最期だから、声を掛けてこの場を去ることにした。





『さよなら……イヴァル……そして、ありがとう…』







 何物からも、閉ざされたその空間で、崩壊する世界と、エイジスと言う名の少女は、ひっそりと死の末路を辿った――――――

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