告白しようとしたらキスされたけど振られました。

山吹ゆずき

告白

 ついに……来てしまった。

 この時が……来てしまった。


 さわやかな風が吹いて彼女の柔らかい髪を揺らす。ふわっとスカートがなびく。そのきれいな足に目が行ってしまい慌てて目をそらす。


「それで橋本君、話ってなあに」


 きれいな形をした唇からまたきれいな音が一粒一粒発せられる。彼女は真剣な顔をして俺を見つめる。


 ――落ち着け、俺! 平常心だ……ッ。


 いくら美少女に見つめられたからってこんなにドキドキしていたら告白なんてできねーじゃねーか!


 でも、俺は言うって決めたんだ。

 応援してくれたあいつに笑顔で報告できるように。

 こぶしを握り締めて心を落ち着かせる。


 ――よし、今ならいえる。


 意を決して口を開く。


「あ、あのな、天宮。俺は……――ッ」


 一瞬、何が起きているのか分からなかった。

 俺の頭は混乱した。


 ――え? なに、今何が起こってるんだ!?


 彼女の整った顔が、すぐ近くにあった。

 その陶器のような肌をした手で俺の顔を包み込み……俺は、美少女にキスされていた。


 たぶん、そんなに長い時間ではなかったと思う。

 彼女は俺から離れた。彼女の顔はほんのり赤くなっていた。


 ――もしかして……?

 俺は期待してしまう。俺が好きな美少女はもしかして俺のことが好きなんじゃ………――


 彼女はぺこりと頭を下げた。


「ごめんなさい!」


「え?」


 勢いよく顔を上げる。


「でも勘違いしないで。私告白されそうになったらキスするって決めてるだけだから」


 きっと今俺の顔は更にブサイクになっているだろう。


「これで満足した、よね? あ、あとこのことは内緒でお願いね」


 彼女は完ぺきなウィンクを見せ立ち去った。


 ――つ、つまりこれは、どういうことだ!?


 回転速度の遅い頭をフル回転させ、考えること、13秒。


「俺、振られた、のか?」


 さわやかな風が俺のごわごわした髪に鳥の糞を運んできた。

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告白しようとしたらキスされたけど振られました。 山吹ゆずき @Sakura-momizi

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