第30話

「[四刹三唱]、空手流・[貫手ぬきて]!」


 ウェンディは片腕でガードしようとしたが、何かに気付いて[貫手]を避けた。


「危なかったぁ! 一体、何なの今の技は!?」


「今のは親指以外の指、四本を[四刹三唱]で三倍にした[貫手]という技」


「指の数によって様々な変化がする、意外と便利な技だ」


「へぇー、そんな便利な技があったんだね……」


 この世界で[貫手]を使っている人は俺以外にはいない。


 そもそも、魔法の世界だから武闘家はパンチや蹴りしか使わない。


 俺は爺さんの弟子だからマーシャル流だが、前の世界で格闘技が好きで、多少の武術の知識がある。


「戦いはまだ始まったばかりだ! まだまだこれからだぞ!」


 お互いが一気に間合いを詰めて、拳が衝突する。


 パンチや蹴りを出し合い、殆ど互角の状況が続いた。


 手始めは様子を見る為に少しだけ手を抜いていたが、少しスピードを速めるか。


「やるわね……そろそろ[刹]魔法を使うわよ! [四刹二唱]!」


「俺も[刹]魔法を使わせてもらうぞ! [四刹二唱]!」


 お互いに[四刹二唱]両腕と両脚を強化する。


 爺さんは腕を組み、俺とウェンディの組み手を瞬きをせずに観ている。


「私の実力はまだまだこんなものじゃないわよ!?」


「アニマル流・[獅子しし舞武]!」


 ウェンディの構えが獅子に似た構えに変化した。


 [獅子舞武]の黒いオーラと[刹]魔法の赤いオーラが入り混じる。


 俺が初めて見る。

 爺さんからは教わっていない技だ。


 ウェンディがライオンのように勢いよく突進してくる。


 な……なんて速さだ! [四刹二唱]のみの速さじゃない!


 ライオンの爪攻撃のように拳を振り下ろす。


 ガードするのは危険すぎる。避けるのが無難だろう。


 避けた瞬間に風圧が肌に感じ取れる。


「避けられちゃったか! 獅子じゃスピードが出ないから攻撃が当たんないや」


「ギアを上げていくよ! [四刹三唱]!アニマル流・[ひょう舞武]!」


「次はスピード重視の[豹]で来たか!」


「スピードだけじゃないよ!? 攻撃力もそれなりには出るよ!」


 少し、まずいな……俺もギアを上げるとするか。


「俺もギアを上げてやるぜ! [四刹四唱]!」


 お互いに様子を伺い、相手の動きを見る。


 先に動いたのはウェンディだった。

 ジャンプして回し蹴りを繰り出した。


 念の為、両腕でガードして反撃をしようとするが、[豹舞武]状態のウェンディはかなり素早い。


 反撃をする隙が無く距離を取られた。


 [四刹四唱]で強化したが、思っていた以上にウェンディの動きが速い。


 このままでは一方的に攻撃をされるだけだ。対策を考えなければ……。


 しかし、ウェンディは俺に対策を練る時間を与えず、一気に距離を詰めてくる。

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魔法の世界で魔法が使えなかったので武闘家で最強になる。 @tartar1024

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