第8話
エレンからのお願いの内容はこうだった。
エレンの家系は、表面上では貴族だが裏では奴隷売買をしているらしい。
そして、エレンの友達が父親の奴隷商に捕縛されてしまった。
エレンは父親に捕縛したのは友達だと伝えたが、話は聞いてもらえず他国の貴族に売ろうとしている。
それをどうにかして阻止をしたいけどエレン一人では難しいので俺に助けてほしいとのことだ。
しかし、エレンに協力して友達を助けたとしたら、その後にエレンは父親に何かされないか?
「協力はする。だが、エレンはどうなるんだ? 今まで通りに一緒に暮らすのは無理だと思うぞ」
「わかっています。初めてできた友達を見捨てることなんてわたしにはできません!」
「それに、お父様は間違っています。同じ人間を奴隷にするなんて、わたしには考えられません!」
俺はこの世界に来てからは友達ができたことはない。だが、俺がエレンの立場なら俺でも同じように助けると思う。
「わかった。友達は助けるがエレンは本当に覚悟はできているな?」
「はい……わたしは絶対に友達を見捨てることはできない」
エレンは泣きながら助けたいという気持ちを表した。
「エレンの覚悟はわかった。絶対に友達を助ける、だから泣かないでくれ」
エレンが泣き止むまで、五分程かかった。
泣き止んだ後、どんな作戦で友達を救出するかを相談した。
明後日に友達を乗せた馬車が国から出るらしいので、明日か明後日のどちらかでエレンの父親を襲撃する。
といっても、最初にエレンが直談判してそれでも話を聞いてもらえなかったら襲撃する。
娘の話を聞かない奴だ。多分、また話は聞いてもらえないだろう。
「友達の事を考えるなら、早めに助けてあげた方がいいよな?」
「そうですね……わたしも早めに助けてあげたいです」
「それじゃあ、明日に作戦決行だ!」
エレンは深々と頭を下げる。
「テリーさん……まだ出会ったばかりのわたしのお願いを承諾してくれてありがとうございました」
「友達を助けることができたら俺からもエレンにお願いがある」
「わたしに出来ることならなんでもします」
俺は少し恥ずかしかったが言った。
「お……俺と友達からになってくれ!」
エレンは急に笑いだして言った。
「勿論ですよ! わたしからもお願いします」
あれ?
思っていたよりもあっさり承諾してくれた。
俺の初めての友達ができるチャンスなんだ。絶対にエレンの友達を助ける!
話が終わるとエレンは明日の為に、いつも通りに家へと帰った。
明日はエレンが父親に直談判している最中に俺が街へと入り、直談判の結果次第で作戦を開始する。
とにかく明日の準備をして、今日は早めに寝るとしよう。
そういや、捨てられてから初めての街だ。会った人間は爺さんとエレンだけだし、少し楽しみだ。
エレンの父親は恐らく話を聞かないだろう。貴族の奴等は金の為ならなんでもするクソ野郎だ。
エレンに危害を及ぼすようなら、父親だからといっても容赦はしない。
しかし、まだ8歳の俺だけど大人の魔法使いや剣士を相手にして勝てるかな?
対人戦は爺さんとしただけで魔法使いとはしたことがない。それも、爺さんは手加減をしていたし。
少し不安になってきた……。
だが、子供だからって舐められないように最初から全力で戦おう。
そして朝になり、作戦通り街へと向かった。
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