第4話

 俺と爺さんの修行が始まった。


 俺は捨てられてから生きる為のことしかしていなかったので、目標ができて気合が入る。


 最初は[武闘家]にとって一番大切な体作りから始まった。筋トレや体幹を朝から夜遅くまでひたすらする。


 爺さんは身体は凄く鍛えられていて、まるで年寄りには見えなかった。


 体作りを初めて三ヶ月程が経つと、俺の身体は少しずつ変化していった。


「爺さん、体作りはいつまでやるんだ?」


「極限までじゃ! [武闘家]は身体が全てじゃからな」


 確かにそうだ。身体がなっていないと技を繰り出しても威力は出ない。


 日が経つ毎に修行はハードになっていき、身体がついてこない日もあった。だがサボることなく、爺さんに言われたことは全てやった。


 体作りを初めて1年が過ぎた頃、地球でいう空手の型の様なものを始める。


 一つの型を三時間かけてして、すぐに筋トレと体幹を三時間する。これを何度も繰り返す。

 

 ここまで修行をしても爺さんと組み手をしても手も足も出なかった。それでも爺さんは手を抜いていると言った。


 俺は実感した。これだけ修行しても勝てないなら俺はまだまだ強くなれると。


 修行が終わり、爺さんが寝た後も俺はひたすら修行をした。睡眠時間は三時間程だ。


 修行を初めてから二年が経った。


 じーさんと組み手をすると、ようやく五分まで辿り着いた。だが本気をだすとまだ負けてしまう。


 二年が経ってから[刹]の魔法の修行を始める。[刹]の魔法は身体の全てを強化する属性で、[武闘家]にとってなくてはならない魔法だ。


「でも、俺には魔力は一切ないんだが使えるのか?」


「魔法といっても[刹]の魔法は魔力を必要とせんのじゃ」


「じゃが、身体を鍛えていないと[刹]の魔法に身体が耐えられないのじゃ」


 なるほど、だから体作りを一年間もしたんだな。


「だけど[刹]の魔法は魔力を必要としないのなら、どうやって使うんだ?」


「魔法と一緒でイメージをするのじゃ」


「例えば[炎]の魔法なら火を頭に浮かべてイメージするのじゃ。すると魔力の量によって効果は変化する」


「[刹]の魔法もイメージと効果は魔法と一緒じゃが、どこの筋力を強化するのかを頭の中でイメージするのじゃ」


 つまり[武闘家]にとって、自身の筋力が魔力になるということだな。


 ということは産まれてから、魔力の量は変化しないが、身体は無限に鍛えられるから[刹]魔法がどこまでも強くなれるんじゃないか?


「わしが[刹]の魔法を使うからよく見ておくんじゃ」


 爺さんは身体全身の力を抜いてゆっくりと息を吸う。


 すると爺さんの身体の周りから赤色のオーラの様なものが見える。


「はあぁぁぁ!」


 爺さんは一気にに力を入れた。

 爺さんの身体の周りのオーラの様なものが広範囲に広がっていた。


「ふぅ……これが[刹]の魔法、[一刹三唱いっせつさんしょう]という魔法じゃ」


「一刹三唱は、一箇所の筋力を三倍にするのじゃ」


「じゃが、自身の筋力によって限界がある」


 すると爺さんは俺の手を軽く握ってきた。


「いってぇぇぇ、は……離してくれ!」


 爺さんは笑いながら手を離して言った。


「わしの今の身体の筋力ではこれが限界じゃな、若い頃は[五刹六唱]まで使えたのじゃがなぁ」


 口には出さなかったが、三倍だけでも充分だろうと思った。


 俺は魔法自体を見たのは初めてだったので少々、興奮をしてしまった。

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