005. (☆☆☆☆☆) 99.00%

「ガチャ、爆死……?」


 ガチャ爆死(物理)ってこと?


 ???


 この非常時にふざけてるのかな???


「ふざけてなんかないわ……いえ、ある意味、ふざけてはいるのかもね。これを見て」


 女子高生の人の示すガチャメニュー。

 僕はゲロを避けて大回りし、彼女の横からそれを覗いた。


「排出割合? これが一体……なっ!?」


 僕の見つめる中、彼女がガチャメニューの隅にある、小さなリンクを開いた先。

 そこにはレア度毎のガチャ排出割合が一覧で書かれていた。


 そのまま割合が、こうだ。


--------------------------------

■ガチャ排出割合

 LegendRare(★★★★★) 0.01%

 EpicRare (★★★★☆) 0.05%

 SuperRare (★★★☆☆) 0.10%

 Rare   (★★☆☆☆) 0.30%

 Normal  (★☆☆☆☆) 0.54%

 Hell   (☆☆☆☆☆) 99.00%

--------------------------------


「何だこの糞ガチャ!! 運営なめてんじゃねーぞ!! いやそもそもヘルって何!?」


 マジで……この! えっ!? これで本当なら宝石300個取るんか!!? え、マジで言ってる?

 あと、さっき絡んできたヤンキーっぽい人が「SSR引いてやるぜ!」みたいなこと言ってたけど、そもそもSSRとかいうランク無いですね。悲しい。


「私は隣にいた友達の……うっ、ガチャ結果を、見てたわ」


 女子高生の人は話しながら嫌な光景を思い出したのか、また気分が悪そうにしている。

 おじいさんもいつのまにか近くに寄って来ていたけれど、話がわかっていないのか、開きっぱなしだった自分のガチャメニューを眺めていた。大きなリュックを背負って、両手に金属の登山杖トレッキングポールも持ってるし、まぁ登山客の人だろう。


「その、ガチャ結果がどうしたのさ」

「……あの子が引いたのもヘル。その内容は……」

「おお、1回無料! この四角いのを押せばええのか」

「えっ、あっ、待っておじいさん!!」


 僕達が話し込んでいる隙に、おじいさんは自分のガチャを回していた。

 このおじいさんどうも耳が遠いっぽいし、さっき皆が一斉に回した時に乗り遅れてたのかな。


『ピロリッ、ガチャッ、スタートッ!!』

「おほー、何か動きおった!」

「ああっ、そんな……ッ!」


 始まるガチャ演出、はしゃぐおじいさん、そして、蒼白になって後ずさる女の子。

 僕は嫌な予感を覚えながら、おじいさんの隣でガチャ演出を眺めていた。


 紫色の靄がかかった、黒い扉。


 扉が開き、中から赤黒いカードが飛び出す。


 レア度☆☆☆☆☆:ヘル


 カードの内容は……、


「爆、死?」


 ドパンッ、という音がして、隣に立っていたおじいさんの頭が弾け飛んだ。


 顔にかかる生温かい液体。


 ゆっくりと倒れる、首の無い死体。


 草の上に重い物が落ちる音。


「……うっ……おげぇぇぇぇぇぇ………ッ」


 何も出ない嘔吐を繰り返す声だけが、静かな草原に響き渡った。

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