第5話 冒険者になるために

ガサゴソと草むらが揺れる。

ティアが降りてきた瞬間、その殺意は姿を現わす。


「!」


「昨日の仕返しだゴラァ!」


現れたのは昨日回し蹴りで吹っ飛ばした男だった。斧で武装し、服装は頑丈そうな皮鎧を着ていた。

それにつられて魔物、後ろから山賊らしき人物らが次々と現れる。


敵の数はせいぜい十人ちょいか。魔物は一体何だ?


「あれはバスターウルフという、狼の魔物だよ!にぃに!」


やけに詳しいな。MPが150もあるだけに賢いのだろうか?


「よし、俺が獣の相手をする。山賊の連中を相手できるか?」


「もちろん!にぃにの頼みなら了解だよー!昨日、あたしを襲った仕返しをしなきゃね!」


頼もしい返事が返ってきたと同時にバスターウルフ5体は一斉に俺に襲い掛かり、ティアは腕を竜の剛腕へ具現化させて山賊たちに突撃していった。


範囲魔法ぐらいならもう覚えてる。まずは初級並みの範囲魔法で始末するか。


(【魂砕ソウルクラッシュ】)


無詠唱で放った魔法の属性は闇。相手を即死させる魔法だとか。


たちまちバスターウルフたちがどさりと倒れ、HPがあっという間に0になる。

強いなこの魔法。まぁ、ゾンビみたいな奴には効かないらしいが。


呆気なくこちらは終わったが、ティアの方はどうだ?

後ろを振り向き、様子を見る。


「おりゃー!!超重ヘビー竜爪ドラゴンクロ―!!」


「グワーッ」


ティアの剛爪が山賊たちを血祭りにあげてる……心配は無用だったか。

一回の攻撃で地面が抉れる……威力はかなり高いようだ。


それに爪に引っ搔かれた山賊は胴体の上半身と下半身がさよならしてる……。

切れ味もすごいな。


ピロン♪


「ん?」


いきなり習得の音が鳴る。急いでウインドウを開くと、そこにお知らせの文字が並べられていた。


『ティアが新しい特技を覚えました。確認しますか?』


新しい特技?どんな技だ?

ウインドウを動かし、確認する。


ティア

特技

ブレス系

・凍える吹雪 ・黒炎の息吹

・ポイズンブレス ・麻痺毒ブレス

物理技 NEW!

超重突撃竜ヘビィアサルトドラグーン NEW


何かカッコいい技を覚えたぞ?威力も強そうだが……。

戦ってるうちに覚えるシステムか?随分と優しいシステムだな。


そうしているうちにもティアが残り二人の山賊に技を放った。


「行くよー!【超重突撃竜ヘビィアサルトドラグーン】!!」


ものすごい速度で移動し、剛爪による一閃が走った。

残り二人の山賊の頭と体が見事に切断され、地面に落ちる。


「すげぇ……」


口で言ってしまうほどの威力と殺傷性。恐ろしい子だ、ティア。


「成敗完了!相手にもならないね!」


脅威がいなくなったのを確認したのか、具現化していた剛腕は消え、華奢な幼女の腕に戻る。


そして俺に走り寄り、抱き着いてきた。


「勝ったよ!にぃに!」


「ああ、大勝利だな」


ピロン♪


再び音が鳴る。このウインドウはティアにも見えてるんだろうか?

試しに見えるかと言ってみると。


「ううん。見えないよ?」


どうやら俺にしか見えないらしい。

いや、転生者か転移者にしか見えないものなのか?

謎だな。


取りあえずウインドウを見て、何が変わったか確認する。


「変わったのはティアのステータスか」


ティア・キリシマ

LV2→5

HP300→450 MP150→168

愛情度:100→120

新しく取得した特技

超重突撃竜ヘビィアサルトドラグーン NEW

魔法

光学迷彩ステルス NEW


レベルが上がって先ほど得た技も含め、新しく魔法も取得してる…。

光学迷彩って、透明になれるのか。


「取りあえず、厄介事は去ったな。街に向かおう」


一応、倒したバスターウルフの死骸をストレージに入れ込んでな。


バスターウルフの死骸を掴み、ストレージの中に放り込んでいく。

売れなくても何らかの素材に使えるだろう。


「そういえば、倒した魔物は売れるのか?」


この世界に転生して間もないから、この世界を少ししか理解してないんだよな。大丈夫か?


「うん。売れるよ」


売れるんだ……まぁ、いくらで売れるのかは期待しないでおこう。

後は山賊達が持っていた斧や剣を持っていこう。あいつらにはもう必要のないものだ。


「よし、行くぞ」


「はーい!」


引き続き街に行くべく歩み始める。多くのルールは妹から学びそうだ。

こんな兄だが、慣れれば少しだけでも楽にさせたいな。



数分、進んだ先に大きな防壁らしき壁が見えた。

どうやら街に着いたようだ。


街の名は「ディヴァン」という。


門を通ろうとすると、通っている最中の禿頭の男性に話しかけられる。


「おう、お前ら。見ねぇ面だな」


「すいません。旅人なもので、君は?」


「オレはズール。この街の冒険者をしている。アンタは?」


自分から名を言うとは、それに冒険者か……。


「俺はレンジ。横にいるのは妹のティアだ」


「ふ、兄妹連れの旅か?にしては剣やら斧を持ってるが?」


「冒険者になるついでに敵を倒したから売ろうと思ってな」


ズールは「そりゃあすげぇな」と言って、軽く笑う。


「冒険者になると言ってたな。お前ら二人、職業は何だ?」


「テイマーだ」


武闘家グラップラー


その言葉にズールの表情は気まずい顔になった。

不味い事を言ったか?


「おいおい……お嬢ちゃんの武闘家グラップラーならわかるが、テイマーは厳しいかもしれないぞ……」


おっと…厳しいのか?

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