第14話園芸部

 放課後。今日も選択の時がやってきた。

すでにみかさんは部活へ行っており、麗子さんの姿も見えない。

この選択は私1人で決めなきゃいけないんだ。

そういえばみかさん・・・今回の勝負について園芸部のみなさんにどう説明してるのかな?

よく考えたら私達、園芸部の方々を差し置いて、勝手に勝負なんて決めたけど・・・そんなことしたら、普通怒るよね?

そう考えたら1人で部活に行っているみかさんが心配になり、私は急いで荷物をまとめて温室へと向かった。

みかさんのお話では、園芸部は主に温室で活動してるから、この時間に行けばすぐ会えるはずだ。

そして、私は温室に来た。すると話し声が聞こえた。

「みか、あなた何勝手なことしてるの!?麗華さまと勝負なんて私達が勝てるはずないじゃない!」

「そうよ。どうして黙って決めたの。あなたはいつもそうよね、自分勝手だわ!」

園芸部の方々がみかさんを取り囲んで責めていた。

「す、すみませんみなさん」

みかさんがそう言いながら頭を下げる。

「みかさん!?」

私は慌てて助けに入ろうとした。

「待って雅子、大丈夫だから」

しかしそれをみかさんに止められ、私は少し離れた場所で動けなくなる。

み、みかさんどうして?この件は私に原因があるんだから、みかさんが怒られる必要ないのに!?

「聞いてくださいお姉さま方。確かに私はみなさんの了解もなく、勝手に生徒会との勝負を決めてしまいました。それに関しましては謝罪の言葉しかありません。本当に申し訳ありませんでした。で、ですがもしこの勝負に負けても、園芸部には何のペナルティもありません。皆さんに迷惑をおかけしないと約束します。」

「・・・・・・」

部員の方々が黙り込む。

「だからお願いします!桜花祭までの間でいいので、私にみなさんの力をお貸しください!」

そう言って深々とお辞儀をするみかさんに対して、部員たちの反応は冷ややかなものだった。

何故か誰一人口を開こうとせず、表情すら変えないまま冷たくみかさんを見下ろしている。

本当に・・・誰も喋らない。誰一人動いたりしない。

まるで時間が止まったような息の詰まる光景に、私は異様なものを感じて息を飲んだ。

な、なにこれ?何か変だ。本当にこれは桜花祭のことで怒ってるの?

だったら私も責めればいいのに、どうして同じ罪を犯した私には目もくれず、みかさんだけを取り囲んでるの!?

普通じゃない。明らかにみんなみかさんだけに怒ってる。ど、どうしてこんなことに・・・

「お、お願いしますみなさん、どうか協力してください!」

「嫌よ。だって麗華さんに逆らって学園を敵に回すなんて、馬鹿のすることじゃない」

「それに優秀なみかなら、準備なんて一人で出来るでしょう?」

「そうよ。私達、下手に手伝って、去年のお姉さま方みたいに恥をかかされるのは嫌ですもの。あなたのお手伝いなんてお断りだわ」

部員のみなさんが口々に言う。

「あ、あの時のことはお姉さま方が・・・」

「だからって他にやり方があったでしょう!それを先生方の前で露骨にーー」

「まあまあ、みんなそのぐらいにしなさいよ。いつまでも昔の話をしてても仕方ないでしょ?」

部長さんが割って入った。

「で、でもこの子は・・・」

「確かに今回の件は、勝手に勝負を決めたみかちゃんが悪いかもしれない。でも、桜花祭は園芸部が手伝うのが定番なんだから、そこまで頑なに拒否することないじゃない。今年もみんなで一緒に頑張ろうよ、ね?」

「お願いします。お姉さま方・・・」

みかさんが再び深く頭を下げる。

しかし。

「む、無理よ。とにかく私達はもう、みかのわがままに付き合う気はないわ!勝負でも何でも勝手にして」

「雅子、あなたもちょっと園芸に詳しいからって、あまり調子に乗らないことね」

「そ、そんな!私はーー」

私が話し終える前に、みかさんを囲んでいたお姉さま方は、早足で温室を去っていった。

それと同時に残りの部員たちも姿を消していく。

残されたのは、私とみかさん、それに部長の3人だけだった。

私達は重苦しい空気の中、お互いに話しかけることができず、しばらく押し黙ったままで時間だけが過ぎていった。

そんな中、最初に沈黙を破ったのはみかさんだった。

「な、なんかごめんね。せっかく園芸部の手伝いに来てくれたのに」

「そ、そんなこと!どうでもいいです!それよりみかさん、大丈夫でしたか!?もしかして園芸部の人達にいじめられてるんじゃ・・・」

「ち、違うわよ。そんなんじゃないから。ただちょっと事情があって・・・私、みんなから嫌われてるのよ」

「嫌われてるって・・・」

「でも大丈夫よ。お姉さま方も言ったように、私は園芸に関しては優秀だから。桜花祭くらい一人で準備できるわ。だからもうこの話は終わりましょう。さっそく作業手伝ってよ」

笑顔で大丈夫だと話すみかさんだけど、私はその言葉を信じることはできなかった。

だって部員のみんなに断られたとき、みかさん不安そうな顔をしてたじゃない。

もし部長を入れても、園芸部はたったの2人ーー。そんな人数で茶話会が開けるの!?

その後、私はみかさんの指示に従って園芸部のお手伝いしたけど、ずっと部員たちのことが頭から離れなかった。

本当に何があったんだろう。口では大丈夫と言ってるけど、私には強がってるようにしか見えない。

心配だよ、みかさん・・・

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