ロシアちゃんは可愛い。

アルバト@珠城 真

いや本当に可愛いんですよ。

 ロシアちゃんは可愛い。


 両親の仕事の都合で海外から日本にやってきて、なんと我が高校に転入してきた純正ロシア生まれの美少女ことロシアちゃんは滅茶苦茶可愛い。

 何が可愛いって、なんかもう日本人とは容姿端麗の次元が違うのだ。


 太陽光を吸い込みキラキラと輝く純銀のセミロング、まるで祖国の雪を示すような白い肌とその小顔に輝く深い青の瞳。

 その顔つきは神様が美しくこしらえた人形のような、黄金比率とはこの事だと言わんばかりに整っている。もはや北のダ・ヴィンチの異名を与えたい。

 スラリと伸びて均整の整った手足は同年代と思えないほどに成熟しており、その胸部装甲と言ったら美が内側から膨らんでいると言っても過言ではないほどに女性らしい弧を描いている。

 

 そんなクール系美人としか言い様のない容姿を持つ彼女ではあるが、外見に反してハツラツとしていてパッと咲くような年相応の笑みを振りまくのだからもうたまらない。

 彼女の一挙一動は美を火薬に愛嬌という弾頭を秒間100発の感覚で縦横無尽に撃ち込んで回る凄まじさだ。あれにハートを撃ち抜かれない男子は絶対にホモだと断言できる。だから高柳くんは俺の半径2mに近づかないで欲しい。


 しかも日本語もペラペラという才女っぷりはもはや意思疎通可能な戦略兵器といった具合であり、生徒間でABC兵器に分類されるべきでは無かろうかと真剣に議論がされるほどだ。

 最終的には賛成派の女子生徒共和国と反対派たるノンケ男子及びグレートレズビアン連邦の対立が深まり骨肉の争いを引き起こす羽目になったがその話は一旦おいておく。危うく規制されかけたほどの可愛さという事だけ覚えていて欲しい。


「ネー、タケルぅー。まだやるんですかー?」


 縦セタにパンツスタイルの私服ロシアちゃんが俺の肩を掴んで揺さぶってくるが、今ちょっとロシアちゃんの可愛さを伝えるのに忙しいからもうちょっと待って欲しい。

 ところでその私服どちゃくそ可愛いね、マジ最高、ほんま好き、やばい。後で写真取らせて。


 そうだ、ロシアちゃんと言えば写真についても触れなければならない。

 我が高校には学校の美少女・イケメンを写したブロマイド写真の流通市場が存在する。当然、非公認である。

 紳士・淑女秘密保持協定によって本人たちには巧妙に隠され風紀委員によって運営されているこの界隈にも、勿論ロシアちゃんのブロマイド写真が多数流されている。


 そしてロシアちゃんの写真は俺が盗撮を防ぎまくっていることから非常に希少度が高く、その価値は今やM○Gにおけるブラッ○・ロー○スもかくやというレベル。

 前回、市場にロシアちゃんの写真が現れた際には多目的ホールを丸々1つ貸し切った高額オークションが開催されたほどだと言えばそのレベルがわかるだろう。

 流石の俺でも市場に流れてしまった写真は回収することが出来ない……それにロシアちゃんの写真を欲しがる気持ちは同じ人類としてドチャクソ理解できてしまうので強奪に走ることも出来ない。

 すまないロシアちゃん、無力な俺を許してくれ……許してくれ……!


「別に内容に問題がなければちょっと写真を取られるくらいは気にしませんよー? まぁ、盗撮は嫌ですしそれを防いでくれるタケルには感謝カンゲキ雨嵐! ですけど」

「めっちゃ可愛い、好き。」

「もう、またいきなり……。タケルに褒められるのはとっても、とっても嬉しいですけど。ちょっと恥ずかしいです」


 照れ隠しか、ロシアちゃんは俺の肩を軽くペチンと叩いた。思わず可愛さに自ら肩を外した。それくらいの衝撃があった。


 後の言葉の声量が段々と小さなって頬に朱を刺すロシアちゃんはきっと地上に舞い降りた最後のヴィーナスに違いない。もう可愛いという言葉さえも陳腐になるほどに可愛い。溢れ出る感情が表現しきれない俺は、美しいという言葉を持たない未開の部族に精神が移り変わってしまいそうになる。


 ロシア、チャン、クソカワイイ。


 危ない、何とか文明に帰還できるほどの語彙は残されていたようだ。

 プロポーズの際には給料三ヶ月どころか三年分くらいの物をプレゼントしようと心に硬く誓う。


「俺、三ヶ月で三年間分の給料もらえるように頑張るよ」

「タケルは偶に言うことがわからなくなりますけど、タケルの楽しそうな姿は見ていて面白くて……ワタシ好きです。フフっ」


 笑顔に目が焼かれぎゃあああああああああぁぁぁぁああああ!!!!

 誰か、誰か高柳呼べ! ここに高柳を連れてきてくれ!!

 ロシアちゃんの周りの空気が清浄すぎて淡水魚もかくやの瞳を宿している俺には、この空間は浄すぎて今にも死んでしまいかねない! 高柳のホモっけで中和しないと理性が死んでロシアちゃんに飛びかかってしまう!! 誰か、誰かー!!


 そんな俺の内心とは裏腹に、我が家のソファに座ってピタリと肩を合わせてくるロシアちゃん。

 距離を開けようとする俺を逃さないとばかりに腕を絡めてくるわ、楽しげに俺の頬をその細い指先でツンツンついてくるわとやりたい放題。


「これがロシア式ですから!」


 俺の制止の言葉に笑顔でそう返した彼女に、俺は今日も今日とて理性との一大バトルを繰り広げるのだった。

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