どんな夢でも貴方となら:3
私は、阿澄 詩音は可愛いものが好きだ。
それは例えばぬいぐるみだったり動物だったり、可愛い洋服だったりオシャレなアクセサリーだったり。
見て癒されて、触れて心躍る…そんな可愛いものが、好きだ。
ずっと昔、まだ私が幼稚園に通っていた頃にある運命の出会いを果たした。それはテレビの画面の中で笑顔で歌い、キラキラと可愛い衣装に身を包んで踊るアイドルという存在。
一目見ただけで心奪われた。
こんなに可愛い子が、こんなに可愛い衣装を着て、こんなに可愛く歌って踊っている。私の中で可愛いの完成系がアイドルになった瞬間。
次の日から私はお父さんやお母さん、お姉ちゃんの前でアイドルごっこをしてビデオを撮ってもらったり、友達と一緒になってアイドルの振り付けを覚えたりした。
そんな時間が流れて中学生。
私は2回目の運命の出会いを経験する。
中学一年生、小学校とは大きく環境が変わり人間関係が複雑化していく第一段階。緊張しながらも恐る恐る足を踏み入れた初めての教室に、彼女は居た。
目を、奪われた。
可愛い、可愛い。
そう思うと同時にサァーっと心が冷えていった。
彼女を可愛いと思った気持ちが、今までアイドルに向けていた感情と異なっていることに気がついてしまったから。
女の子が女の子を好きなんてありえない。普通じゃない。これはきっとちょっとした勘違い。気のせいだ。
そう思うほど、彼女のことを目で追ってしまう。今までただ応援していただけのアイドルにすら胸が苦しくなるし、握手会なんて行けなくなってしまった。
でも、きっと気のせいなんだ。
そんな風に心に蓋をして自分の気持ちに目を逸らし、気が付かないふりをして、不意に感じる激しい動悸にも分からないふりをした。
でも、そんな抵抗は長く続かなかった。
ある日たまたまテレビで見かけた初めて聞くLGBTという言葉。その言葉が意味する中にある女性同性愛者というカテゴリー。
「あぁ……そっか、やっぱり、そうなんだ」
貴方はおかしくないんだよ。
そういう人もいるんだよ。
好きになった人が同性でも、変じゃないんだよ。
テレビから聞こえてくるその言葉に私の押さえ込んでいた感情は決壊した。
あぁ、好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ。
可愛いあの子が好きだ。友達としてじゃなくて、恋愛感情として好きだ。触れたい。抱きしめたい。
──やっと、救われた気がした。
私だけが気持ち悪い人間なんだと思っていた。
でも、違った。
世の中には私と同じように同性が好きな人も沢山いる。
じゃあ私は、
そして、その気づきが全ての終わりだった。
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