自己紹介:3
「藤野 祈織というわ」
あっ…
水のように澄んでいて、鈴のように凛とした声が教室に響いた。
私よりも前の席に居るせいで後ろ姿だけでは判別がつかず気が付かなかったが、その凛とした印象的な声はあの時から私の耳にしっかりと刻み込まれている。
そう、掲示板の前で遭遇したあの美人さんだ。
最前列に居る彼女は教室後方に向かって振り返り、自己紹介を始める。なんだかキョロキョロと教室を見回しているが、誰か探してるのかな?
それと、どうやら美人さんの名前は藤野 祈織と言うらしい。
「好きな物は…可愛いものかしら。抽象的で申し訳ないのだけれど、そうね…愛でたくなる、守りたくなる様なものが好きね。今年度の抱負は…愛する人に愛されるよう頑張る事かしら。今は恋人は居ないのだけれども…絶対に手に入れてみせるわ。勝つのは私だもの。以上よ」
ほ、ほへぇ〜…
ゆかりんや天使様に続いて美人さんも恋人を作るのが抱負なんだ。しかも自分の勝利を疑わないその姿勢が、堂々と言ってみせる態度がまたかっこいい。
にしても天使様や美人さんに好かれる男の人ってどれだけハイスペックなんだろう?やっぱり頭が良くて、運動神経抜群、優しくて、高身長、からのイケメン。やっぱりこんな感じなのかな?
……ハッ!
勝手な妄想だけど、天使様と美人さんは実は同じ男の人を狙ってたり!?
もしそうなら、これはSADOKAWA文庫で伝説的売上を誇るラブコメライトノベル『やれやれ…なんで僕なんかがモテるんだ?』の三角関係にそっくりじゃない!?
その我が
すごい…これが天上人を取り巻く環境。恐ろしい…ラブコメヒロインの生きる世界。
……私もいつか、誰かのヒロインになれるかな…
そうやって、元地味子ちゃんとして培った私の妄想力が止まることを知らずに燃え上がる。
「──さん?──きさん、三日月さん!」
「は、はいっ!」
「次は三日月さんの番だから、自己紹介お願いしてもいい?」
「え…あ、はい。み、三日月 春乃です!」
色々と妄想や考え事が捗り、気がつけば私の番が回ってきていたらしい。ゆかりんに大きな声で呼ばれてやっと気がついた。
クスクスと笑う声が聞こえる…恥ずかしすぎる。
「ふふ、本当に可愛らしいわ」
「ハルちゃんは相変わらずのようですね」
…うぅ、恥ずかしい。一瞬で私はあがってしまい、周りの音がどんどん遠くに感じられた。そのせいで何か言われていたとしても聞こえないのは、不幸中の幸いかもしれない。
───────────────────────
プロローグから自己紹介:3のここまでが導入部分というか、物語の始まりとなる部分に当たります。
次話からはやっと話が進み始め、主人公の春乃が何故かヒロイン達に……と、なる予定です。
登場したキャラクター達で名前がある子達は今の所全員が内容に関わる予定なので、拙い文章で恐縮ですが、暖かい目で見守りつつ更新を待って頂けたら幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます