「荷物持ち」のリーフ

 オリバーがリーフに求めた役割。それは「荷物持ち」だった。

 冒険者ならば当然数多くの荷物を持って行動する必要がある。しかし、常に魔物に襲われる危険がある冒険者が荷物を持ちながら戦うのは難しい。最近では、「アイテムBOX」という一つの鞄に大量の物を収納出来る物が開発されているが、まだまだ新米の冒険者には手が出せない代物だ。それは、若手の注目株ナンバーワンと言われるオリバーも同様である。

 そんな冒険者達にうってつけとされているのが「荷物持ち」を生業にしている者達である。彼らは、荷物を持って行動出来ない冒険者に代わって荷物を持って行動する文字通りの役割をしている。まさに、新米冒険者達にとって大変重宝出来る存在に見える。

 しかし、実態はほとんど真逆だった。「荷物持ち」は新米冒険者達にそれこそ高値で自分達と契約を結ばせ、利益を得ようとするのだ。一応、彼らのほとんどが冒険者適正職業ではない者達なので、彼らが狙われたら1番危険なので、それぐらいの危険手当は当然とも言えるのだが、正直彼らに頼むぐらいなら頑張って自分達で荷物を管理しながらお金を貯めて「アイテムBOX」を購入すればいいと思えるぐらいである。なので、当初オリバーもその点で色々苦心していた。


 が、そんな時にオリバーは冒険者適正職業「黒魔道士」に選ばれて、必死にアピール活動するリーフに出会った。普通なら「黒魔道士」に選ばれた時点で冒険者の道を諦めるのが普通なのに、彼女は何故か冒険者稼業を必死で続けようとする姿に疑問に感じたオリバーはリーフの事を調べた。

 そして、オリバーはリーフが孤児であり、孤児院でどういう扱いを受けていたのか知った。それを知ったオリバーは……使える思った。孤児として不当に働かされ、普通の相場の賃金を知らない彼女なら、普通の冒険者パーティーや「荷物持ち」に与えられる格安の賃金でも、それが相場だと言えば納得してくれる。おまけに、もうほとんど行く宛がない彼女は自分を頼る他ない。故に、自分の為に必死に働く駒となってくれるはずだ。そう考えたオリバーはリーフを自分のパーティーに入れたのである。


 こうして、リーフはオリバーの思惑通り「黒魔道士」としてではなく、「荷物持ち」としてオリバーのパーティーで働く事になった。

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