15分間の命

 銀龍の空いた大きな口から、濃い紫色のヘドロのような液体が吐かれた。勿論、それは餌食と認識しているであろう、オレに向けられた攻撃であった。

 しかし、如何なる攻撃をも防ぐこの防御壁には無力だ。その生成された壁に濃い紫色の液体が塗らされた。

 この防御壁がある限り、攻撃を受ける事はない。


「ふんっ!!そんなの食らわねぇよ!!……っでもな、こっからどうすっかな?作戦考えないと死んじまうよ!」


 それもそのはずだ。この【断固たる決意】によって防御壁が生成されるのは15分間だけだ。時間が来れば、この防御壁は消えて無くなるのだ。その瞬間にでも≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の攻撃を受けようものなら、力尽きるのは目に見えている。


「クソッ!!コイツ今までのモンスターよりも固いし……このスキルが切れたら…どうすれば……」


 固さ……それは、つまりモンスターの体力だ。

 頭上に浮かぶモンスターの名前、そしてその上に表示されるHPバー。この≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫のHPバーは3本あるのだ。ここまで来る手前……【エスゴール氷山】でのあの2体のモンスターでも、HPバーは1本だけであった。

 

 それが3本ともなればだ……あの2体のモンスターよりも数倍強い事を示している。


「なんで…よりによってソロの時にこんな事に……あぁ、クソッ!!取り敢えず、ステ上げとくか?」


 目の前の銀龍はかぎ爪を立てて、この防御壁を破ろうと引っ掻き回す。雄叫びを上げながら。だが、その壁には1つの傷すらも入らない。


 それに乗じて……

「【覚醒(ホーリー・アクセル)】!!」


 スキル発動後、オレの身体は緋色のオーラに包まれた。このスキルの効果……強制的にステータスを上昇させる。そして、上昇した【AGI】を持ってして、15分後に解かれる防御壁……それ目掛けて襲い来るであろう、≪銀翼のシルバー・毒龍ベノムドラゴン≫の攻撃1打目を回避する事を考えての事だ。


「あんまり……悠長に考えてらんないな!?攻撃を回避したらすぐさま、【蓮斬(ディザスター・バースト)】を発動して……っでもきっとコイツは生きてる。……っクソッ!!」


 何度となくこの防御壁を壊さんと、かぎ爪で引っ掻き回す。とうとう苛立ちを覚えたのか、再度の雄叫びを放つ。それは今まで以上の太い雄叫び…オレの鼓膜を刺激するのだ。


 それに伴って、オレは手で耳を塞ぐ。ほんの少しの和らぎは得れたが、鼓膜を振動させる。


「あぁ、うるっせぇーー!!もうちょっとで【断固たる決意】が切れんのに!!」


 その次だ。鋭利な牙を出しながら大きく口を開けて、濃い紫色の液体を吐き散らす。が、まだ防御壁の効果はあるのだ。それがオレを守ってくれた。


 しかし、もう【断固たる決意】が切れる時間が迫る。


 そして……

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